作品タイトル不明
EP 9
女神融合! 閻魔両断と『真紅の鬼神』
「終わりだ。地獄の塵となるがよい」
地獄の絶対的支配者・閻魔大王の巨大な足が、完全に沈黙した機神ラビークを踏み潰そうと振り下ろされた。
コックピットの中で、龍魔呂が悔しさに唇を噛み切る。
ポポロ村の仲間たちも、そして全宇宙の配信視聴者たちも、あまりの絶望に言葉を失い、死の瞬間から目を逸らそうとした。
——その、刹那。
ピシャァァァァァァァァァァンッ!!!!
地獄の赤黒い空を、一筋の『黄金の 雷(いかずち) 』が切り裂いた。
それは、閻魔の放つ禍々しい瘴気を一瞬で浄化し、ラビークを踏み潰そうとしていた巨大な足を、強烈な衝撃波と共に弾き飛ばした。
「ぬぅぅおぉぉぉッ!?」
閻魔大王が、その有り得ない力に巨体をよろめかせる。
「な、何奴ッ!? この力……た、 帝釈天(たいしゃくてん) だと!? 神界の最高位が、何故この地獄に……!!」
黄金の雷光が収束し、ラビークの前に降り立ったのは、透き通るような純白の神衣を纏った一人の女神だった。
「……たつまろは、やらせないよ」
かつて無力な兎の人形として炎に焼かれ、ただ一人の男のために神へと昇華した少女——【雷帝神ユイ】。
彼女の瞳には、地獄の王に対する恐れなど微塵もない。あるのは、愛する者を守り抜くという狂おしいほどの決意だけだった。
「ユイ……!」
コックピットのモニター越しに、龍魔呂が目を見開く。
「愚かな! いかに神界の頂に立つ雷帝とて、ここは我が領域(地獄)! 生と死のシステムそのものである我に、傷をつけることなど——」
「システムなら、僕の【神の権能】で上書きする!」
ユイの体が眩い黄金の光の粒子へと分解され、中破した純白の機神・ラビークの装甲へと吸い込まれていった。
(——たつまろ。僕の全てを、君にあげる)
(——あぁ。……一緒に、地獄をぶっ壊そうぜ、ユイ)
ウゥォォォォォォォォンッ!!!
ユイの神気と、龍魔呂の赤黒い闘気が、超硬度合金【ヒイロガネ】の中で完全に融合した。
潰れていた装甲が瞬時に再生し、ラビークの【純白の機体】が、黄金の雷を纏って完全復活を遂げる。
「な……ッ!? 機械の巨像が、神と融合しただと!?」
閻魔が驚愕に目を見開く。
【神界セレスティア —— & 宇宙管理センター(生配信中)】
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』
『女神融合キタァァァァァ!!』
『熱すぎる! 脳汁で溺れるぅぅぅ!』
ゴッドチューブのコメント欄が、処理落ち寸前の猛スピードで滝のように流れる。
そして、PV(同時接続者数)カウンターが、ついにGOD組織創設以来の最高記録である【同接10億人】を突破した!!
「き、キタァァァァッ! PVノルマ達成だぁぁぁ!」
神界の管理職である世界神リーダー・オリンが歓喜のあまり気絶し、宇宙神ユニーバもマカロンをこぼしながらモニターに齧り付く。
「地獄の理がなんだ。……俺たちの 愛(ちから) で、概念ごと斬り裂く!!」
コックピット内で、龍魔呂が極限まで腰を落とし、見えない刀を青眼に構えた。
それに連動し、純白の機神が背部の次元コンテナから超巨大な大剣を引き抜く。
ユイの黄金の雷と、龍魔呂の赤黒い闘気が刀身に収束し、天を衝くほどの『巨大な光刃』が形成された。
「おのれェェッ! 冥界の全魔力をもって、貴様らを塵に——」
閻魔大王が極大の破壊球を生み出そうとした、その瞬間。
ズゴォォォォォォォォッ!!
全スラスターが火を噴き、空間そのものを歪めるほどの超高速ブーストダッシュ。
純白の軌跡を残し、ラビークは閻魔大王の懐へと完璧に潜り込んだ。
「——【無量大数獄炎刀……鬼神将獄炎斬り!!】」
スゥ……ッ。
音も、光も、時間すらも停止したかのような、完璧なすれ違いざまの一閃。
あまりの速さと、概念すらも断ち切る鋭さに、斬られた閻魔大王は数秒間、自分が斬られたことにすら気づかず立ち尽くしていた。
カチャッ。
龍魔呂が、コックピット内で静かに刀を鞘に納める(残心)。
その直後。
閻魔大王の天を突くほどの巨体に、巨大な十字の斬撃痕が浮かび上がった。
「ば、かな……。地獄の理たる、この我が……一介の生者と、神の愛ごときに……」
ズバァァァァァァァァァァァンッ!!!!
閻魔大王の巨体が、完全に一刀両断された。
全てを原子レベルで吹き飛ばす大爆発と共に、冥界の絶対的支配者の体から、凄まじい量の【赤黒い返り血(高濃度の魔力)】が、まるでスコールのように噴き出し、賽の河原へと降り注いだ。
ザァァァァァァ……ッ。
血の雨が降る中、そこに立ち尽くしていたのは『純白のラビーク』だった。
だが、その真っ白なヒイロガネの装甲は、閻魔の返り血を全身に浴び、みるみるうちにドス黒い赤色へと染まり上がっていく。
黄金の雷を纏いながら、敵の血を浴びて赤く染まったその姿。
それは「純白の兎」が、生と死の理すらも超えた無敵の存在——【真紅の鬼神】へと生まれ変わった瞬間であった。
「……フッ。愛ごとき、だと?」
龍魔呂が咥えタバコに火を点けながら、小さく笑う。
「その『愛ごとき』が、てめぇら神や悪魔には一生理解できねぇ、最強の力なんだよ」
地獄の中心で、真紅に染まった鋼鉄の巨神が、圧倒的な威圧感を放ちながら静かに立ち尽くしていた。