軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 4

【暴落】魔王軍の悲劇(株価真っ逆さま)

その頃、世界の最果てにそびえ立つ、禍々しき『魔王城』。

普段なら邪悪な笑い声と魔物たちの咆哮が響き渡るその場所は今、まるで「倒産前夜のブラック企業」のような、お通夜の空気に包まれていた。

「……誰か、今の状況を説明しろ」

円卓の最奥。

漆黒の鎧を纏い、玉座に深く腰掛けた魔王が、低くドスのある声で幹部たちを睨みつけた。

しかし、魔王軍が誇る『四天王』たちは、誰一人として魔王と目を合わせようとしない。

彼らの視線は、円卓の中央に浮かび上がっている魔導スクリーン――『魔王領・ 総合株価指数(ダーク・ダウ) 』の暴落チャートに釘付けになっていた。

「も、申し上げます……魔王様」

財務担当のオーク将軍が、滝のような冷や汗を流しながら立ち上がった。手には大量の羊皮紙(決算書)が握られている。

「ク、クラッシュしました……! 我が魔王軍が発行している通貨『ダーク・ゴールド』が、謎の機関投資家による大規模な空売り(ショート)攻撃を受け、価値がストップ安……いや、真っ逆さまに大暴落しております!!」

「機関……投資家? 空売り? 何を言っているのだ貴様は」

経済の概念を全く知らない魔王が、苛立たしげに玉座の肘掛けを叩く。

「要するにですね……我が軍の資金が、文字通り『紙くず』になったということです! 資金繰りが完全にショートしました!」

オーク将軍が悲鳴のように叫んだ。

「馬鹿なああああ!?」

魔王が立ち上がり、マントを翻した。

「勇者どもは、まだはじまりの村を出たばかりと報告を受けたぞ!? 奴らのレベルは1だ! 農民と、飲んだくれと、貧乏神と、料理人と、武道家というフザけたパーティー構成だぞ!? どんな超位魔法を使えば、居ながらにして我が軍にダメージを与えられるのだ!」

「それが……魔法による物理的な被害は一切報告されておりません! ただただ、数字(お金)だけが消えていくのです!」

防衛担当のダークエルフが涙目で報告する。

「現在、深刻な魔力不足(資金不足)により、防衛用ゴーレムの維持費が払えず、全機システムダウン(稼働停止)しております!」

「な、なんだと……!」

「さらに、給料の未払いと急激なインフレにより、末端のゴブリンやスケルトン兵士たちが『ストライキ』を決行! 現在、魔王城の正門前で『賃上げ要求』のデモ行進が行われています!」

『マオウハ・ブラック! キュウリョウ・ハラエ!』

『タダバタラキ・ハ・モウ・イヤダ!』

窓の外から、プラカードを持った魔物たちのシュプレヒコールが微かに聞こえてきた。

完全な内部崩壊である。

「おのれ……! 勇者め、なんという卑劣な手を使うのだ!」

魔王はギリッと牙を噛み鳴らした。

彼が想定していた勇者との戦いは、こうではなかった。

聖剣を掲げ、光の魔法を放ち、己の圧倒的な闇の力とぶつかり合う。そういう熱いバトルを期待していたのだ。

それが蓋を開けてみれば、剣を交えるどころか顔も合わせないうちに、「株価の暴落」と「労働争議」で城が落とされようとしている。

「ええい! こうなったら、城の地下に眠る『ミスリル鉱脈』と『黄金』を掘り出し、市場に流して通貨の信用を回復させるのだ!」

魔王が苦肉の策を命じる。

「は、はいっ! 直ちに採掘部隊を地下へ……!」

財務オークが敬礼しようとした、その時だった。

ズゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!

突如、魔王城全体が激しい地震に見舞われた。

円卓の上のグラスが倒れ、シャンデリアが大きく揺れる。

「な、なんだ!? 今度は何事だ!!」

魔王が玉座にしがみつく。

「ま、魔王様! 大変です!!」

見張りのガーゴイルが、部屋に転がり込んできた。

「地下の鉱脈が……我が軍の最後の希望である黄金とミスリルが……!! 謎の『植物の根っこ』に絡め取られ、根こそぎ地上へと強奪されていますぅぅ!!」

「はぁぁぁ!?」

魔王の悲鳴が、ストライキのシュプレヒコールにかき消された。

勇者(農民と飲んだくれとチートエルフ)の凶悪な侵攻は、まだ始まったばかりである。