作品タイトル不明
EP 6
【奥義】超電光流星脚(スーパー・ライトニング・メテオ・ストライク)
バチッ……バチバチバチッ!!!
キャルルの足元から、青白いプラズマが噴出した。
靴底の『電竜石』がフル稼働し、鉄芯入りの安全靴が雷光を帯びて唸りを上げる。
「見ていてください、龍魔呂さん……!」
キャルルは夜空を見上げた。
そこには、ちょうど雲間から顔を出した満月が輝いていた。
条件は揃った。
「私のこの脚は……愛する人のために駆ける脚! 貴方なんかに『貧弱』なんて言わせませんッ!!」
ドォォォォォンッ!!!
爆発音が轟いた。
キャルルが地面を蹴った瞬間、その場にクレーターができ、彼女の姿はピンク色の雷となって消え失せた。
『なッ!? 消えただと!?』
ジェネラル・リザードが狼狽える。
違う。消えたのではない。
速すぎるのだ。
キィィィィィィン……!!!
大気を切り裂く高周波音。
キャルルは周囲の木々を三角跳びで蹴り上がり、一瞬で遥か上空へと到達していた。
(――トップスピード、マッハ1突破!)
空中で身体を捻る。
重力、遠心力、加速力、電撃、そして乙女の怒りの闘気。
全てを右足の一点に凝縮させる。
「くらいなさいッ!!!」
キャルルは満月を背に、天地を逆転させた。
急降下。
それはもはや蹴りではない。
天空から降り注ぐ、破滅の雷撃。
「月影流奥義――」
大気が摩擦熱で焼け焦げる。
ジェネラル・リザードが空を見上げ、絶望に顔を歪めた。
『ば、バカな……! なんだその魔力はぁぁぁッ!?』
迫りくるのは、ピンクと蒼の光を纏った流星。
防御? 回避?
無駄だ。音速を超えた質量弾を前に、生物の反応速度など無に等しい。
「『超電光流星脚(スーパー・ライトニング・メテオ・ストライク)』ッッ!!!!」
ズガァァァァァァァァァァァンッ!!!!
雷鳴と共に、鉄芯入りの 踵(かかと) がジェネラルの脳天に突き刺さった。
最強を誇ったミスリルアーマーが、まるで濡れた紙のように粉砕される。
『ガアァァァァァァッ――!?』
断末魔すら掻き消された。
激しい閃光が湿地帯を昼間のように照らし出し、凄まじい衝撃波が森の木々をなぎ倒す。
バリバリバリバリッ!!
ドッゴォォォォォンッ!!
数秒後。
土煙と放電が収まった跡地には、巨大なクレーターが穿たれていた。
その中心で、ジェネラル・リザードだったもの(黒焦げ)が、地面に埋まりピクリとも動かなくなっていた。
「…………」
クレーターの縁に、キャルルがスタッと着地した。
安全靴から煙が燻っている。
『ひ、ヒィィッ!?』
『ジェネラルが……一撃で!?』
『逃げろぉぉ! 雷神だ! 雷神のウサギだぁぁ!』
残ったリザードマンたちは、恐怖に駆られて蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。
「ふぅ……」
キャルルは乱れた前髪をかき上げ、安全靴の汚れをハンカチで拭った。
そして、勝者のポーズを決める。
「ふふん! これが月影流です! ……あ、そうだ!」
キャルルはハッとして、慌てて館の方角(龍魔呂がいるであろう場所)へ向かって叫んだ。
「龍魔呂さーーーん! 見てくれましたかーー!? 私、やりましたよーーっ!!」
大きく手を振るキャルル。
その姿は、先程までの雷神の如き強さはどこへやら、ただの「褒められたい乙女」に戻っていた。
静寂を取り戻したカイト農場に、彼女の明るい声だけがこだました。
これが、キャルルが「最強の番犬(番兎)」として名を轟かせた、記念すべき初陣であった。