軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「採用」

ヴィヴァーレの元影騎士隊とテラコーヤの元暗部達が領民入りを希望している旨を、戦場に居るハイスーク領主に伝えたところ、当人達から直接話を聞きたいとの事だったので、街づくり好きな迷宮核は適当に個室ダンジョンを作って面接会場に設定すると、両者を転移陣で移動させた。

「いきなり領主本人と面談するとか……」

「彼の領主殿はそういうお方だ」

ハイスーク領主と二、三言話し合った元影騎士隊と元暗部は、ハイスーク領に再就職という形で、晴れて領民に迎えられた。

「確認するが、元影騎士隊のお前達は、まだヴィヴァーレ国側と連絡は取れるのだな?」

「は、はい。一応、定期連絡は続けてましたので」

「そうか。では早速ひと働きしてもらおう」

元影騎士隊第六、第八部隊は、テラコーヤ王国の人工ダンジョン技術を探るべくハイスーク領に派遣されて来た立場だったが、 本国(ヴィヴァーレ) がイレギュラーダンジョンの存在を認めず、報告を一蹴された事で本国を見限ってからは、当たり障りのない範囲の情報だけ報告していた。

「具体的には、街の景観とか、冒険者の傾向とか、装備の良し悪しとか、食糧事情の様子とか」

一見すると『人工ダンジョンが隠された領地の詳細な資料』を送っているように感じるが、実際はただ観光で見たままの感想を述べているだけである。

ヴィヴァーレ軍部の参謀達が、報告内容からあれこれ考察しては、新しい調査指示を返してきたりしていたものの、前提が間違っているのでほぼ意味は無い。

「ふむ、ならば最後に奉公してやると良い。全部教えてやれ」

「ぜ、全部ですか」

ハイスーク領主のお墨付きの下、元影騎士隊からの調査報告が定期連絡ルートでヴィヴァーレに届けられた。

曰く――

イレギュラーダンジョンは人類に対して友好的な意思を持ち、人間との共存を望んでいる。特に、街づくりを趣味にしているらしい。

ハイスークの領主とは話し合いによる協力関係を築いており、テラコーヤ王国の制御下には無い。

イレギュラーダンジョンの異界化領域内に入った生物は、全てその動向を把握されている。

影騎士隊の第四、第五部隊は破壊工作の帰りに異界化領域内で悪質な盗みを働こうとした為、 その場で(イレギュラー) 粛清された(ダンジョンに喰われた) 。

これにより、影騎士隊第四、第五部隊が持っていたヴィヴァーレ国に関する機密情報が、幾つか流出している。

イレギュラーダンジョンは今も拡大と成長を続けており、そのうちヴィヴァーレ国内のダンジョンも吸収しに行くつもりらしい。

――というような内容だった。

「なんだこの戯れ言はっ! 以前より酷くなっているではないか!」

軍部からの報告を受けたヴィヴァーレの王は激怒すると、ハイスークに潜入させている影騎士隊の第六、第八部隊を直ちに呼び戻すよう命令を下した。

「まったく、使えん奴らだ」

テラコーヤとの国境地帯で小競り合いを演じさせている光明騎士団が、思いのほか成果を上げられていない状況も気に掛かる。

「あの地域に辺境伯のような守り手が居るような報告は、受けていないはずなのだがな」

「その事ですが、光明騎士団と対峙するテラコーヤ軍に奇妙な点が見られます」

国境地帯での小競り合いでテラコーヤ側に圧力を掛けるどころか、押されている戦況を訝しむヴィヴァーレの王に、宰相が報告書を片手に補足する。

「なんでも、ハイスークの軍旗を掲げた騎士が揃っているのだとか」

「騎士だと? 騎兵なら分かるが、国境警備の雑兵ではないのか? それにハイスークの軍旗?」

影騎士隊を送り出した辺境、ハイスーク領が、テラコーヤ王国のどの辺りにあるのかは把握している。故に、王も違和感を覚えた。

「確かに奇妙な話だな。武威に秀でているから国境防衛を任されたにしても、距離があり過ぎる」

「しかも、最初の交戦時から相手はハイスークの騎士だったそうです」

「それは、ちとおかしいのではないか?」

「はい。私もそう思い、記録を調べ直しましたし、再報告をさせて調書も取り直しました」

結果、間違いなく今も国境地帯でやりあっている相手は、ハイスーク領の騎士団である事が判明した。

「そうすると、今まで否定していた一つの可能性が浮かび上がります」

「なんだ? それは」

「イレギュラーダンジョンです」

最初にテラコーヤ王国に潜らせていた諜報員と、ハイスークを探らせている影騎士隊の報告にもあった『イレギュラーダンジョン』が、欺瞞情報ではなく事実だった可能性。

「……あり得るのか? そんな事が」

「これまでの様々な情報を見直して精査した結果、全ての辻褄が合ってしまうのです」

行商人や冒険者達の間で交わされていた眉唾物の噂も含めて、テラコーヤ王国で出回っているハイスーク領やダンジョンに関する情報が、イレギュラーダンジョンの実在を示している。

「俄かには信じがたい話だが……もし本当にそのようなダンジョンがあるのなら――」

「はい、少々対応を考えなければなりません」

ヴィヴァーレの王と宰相は、ハイスーク領とイレギュラーダンジョンに関していま一度、多方面から情報を集めて分析していく方針で意見を一致させた。

※ ※

王都カンソンの暴走したダンジョンは(取り込んで)沈静化し、情勢も落ち着きを取り戻した。

ヴィヴァーレ王国との国境地帯で起きていた小競り合いは、ヴィヴァーレ側が退く形で睨み合いに入り、こちらも一段落しそうな様相を呈している。

そんな社会情勢をまるっと無視して、己の趣味に邁進しているつもりの街づくり好きな迷宮核は、インフラ整備の仕上げとして移動手段の充実に着手する。

「よし、列車を走らせよう」

『レッシャ?』

『なんだそれは?』

『――』

街づくり好きな迷宮核が分かりやすいイメージと共に列車の概要を伝えると、魔核達はいずれも微妙な反応を返した。

『イマイチ有用性を感じないな』

『転移陣で良いのではないか?』

『――』

旅の醍醐味やロマンを語っても、まだ人間達の情緒を理解しきれていない魔核達には響かないであろう事を分かっていた街づくり好きな迷宮核は、気にせず制作に取り掛かる。

「線路というか、専用路は領域化街道の脇に作れば良いから、結構楽なんだよな」

力を入れるのは、車両の仕様と運行システムだ。

「列車の運用は王都の魔核に任せたいんだけど、あとどのくらいで起きそう?」

『現状で半分というところだな。あと二十日も掛からないだろう』

街づくり好きな迷宮核が先日、西の森の魔核に摂り込ませた、王都の人工ダンジョンを司っていた魔核の様子を訊ねると、西の森の魔核からそんな答えが返ってきた。

人工ダンジョンの魔核として、専用の魔道装置で人間が制御できるように加工された改造魔核。元は他所の大陸で攻略されたダンジョンから抜き取られた魔核らしい。

自律した意思を感じなかった王都の魔核だが、西の森の魔核に摂り込まれてその魔素が浸透した事で、本来の姿に戻り始めていた。

魔核としての意識が目覚め次第、迷宮核と魔核達が鎮座している西の森の湖の底に並べる予定であった。

「それじゃあ、王都の魔核が目覚めるまでに車両の開発をやっておこうかな」

超巨大都市の片鱗が垣間見える都村へ、さらなる多くの人と物を集めるべく、公共交通機関を構築する。

国土のおよそ三分の一がイレギュラーダンジョンの領域と化したテラコーヤ王国は、迷宮列車の敷設により、大量輸送の時代に突入するのであった。