軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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街づくり好きな迷宮核が、穢れ山ダンジョン前に冒険者向けの街を作り始めて凡そ十日あまり。

最初に建てた大型施設に冒険者ギルドが入って『穢れ山ダンジョン支部』になり、冒険者の活動が回り始めたので周囲に宿泊施設や商業施設を建て増しして、街としての機能を整えた。

二十日も経つ頃には、スクールの街に匹敵する規模の立派な街が出来上がっていた。

街の大きさ自体はスクールの街の方が広いものの、強固な防壁に囲われた内側には全面石畳が敷かれ、三階建て以上の丈夫な建物が連なり、通り道には魔鉱石の街灯が惜しげもなく並ぶ。

全ての建物内には照明器具として魔鉱石のランプが付属しており、上下水道設備は当然の如く、浴室や厠のような公衆衛生施設も戸別に完備されている。

そして、この街は各施設のみならず床石から壁に至るまで丸ごとダンジョンのオブジェクトなので、自動修復機能付きである。汚れないし壊れない。

宿泊施設や商業施設の利用料は冒険者ギルドや大手商会に管理運営を一任してあり、毎日の売り上げの一部は、街づくり好きな迷宮核が用意した徴収用の穴に納められる。

「大分魔素も資金も貯まって来たな。お金があれば人との交渉がやり易くなるぞ」

徴収穴から回収した売り上げを保管している街づくり好きな迷宮核に、魔核が何か言いたそうな雰囲気を醸し出していたので、資金の使い道を挙げて説明した。

しかし、魔核は人間との交渉事よりも穢れ山ダンジョンとの喰い合いについて問う。

『向こうからは明らかに格上の力を感じる。勝算はあるのか』

穢れ山ダンジョンの出入り口ぎりぎりの所まで領域化した道を敷いた事で、もはや目と鼻の先に相手ダンジョンの領域を感じている状態。

こちらの魔核曰く、穢れ山ダンジョンには最低でも二つの魔核があるという。

街づくり好きな迷宮核が挙げていた戦略。冒険者に正面から攻めさせつつ、地下から侵食するやり方は、容易に対処される恐れがあるそうな。

「まあ、はなからまともにやり合う気はないから大丈夫だよ」

『……』

大丈夫の根拠が一つも見えない状況に嘆息気分な魔核はしかし、このおかしな迷宮核のやる事がここまで成功を収めている事も鑑みる。

また何かしら思いもよらない方法で喰い勝つのではないかと、仄かに期待を寄せるのだった。

事態が動いたのはそれから数日後。穢れ山ダンジョン周辺の瘴気濃度が急激に上がり始めて、山の中腹の旧出入り口付近にも魔素が流れているのが観測できた。

浅い層から撤退してきた若い冒険者たちの話では、魔物が突然大量に沸いてきたとの事。

『ダンジョンの周辺に魔物を撒こうとしている。我々にはまだ気づいていないが、見られている』

「ふむ。こっちに気付いてないなら今のうちに色々仕掛けておくか」

穢れ山ダンジョン前の街づくりも一段落しているので、そろそろ地下から攻め寄せていく準備を始めようとしていたところだ。

街づくり好きな迷宮核には、地中を効率よく掘り進めるのに丁度良い工作機械の知識がある。

「とりあえずシールドマシン型の穴掘りゴーレムを十体ほど出撃させとこう」

『……』

魔核から見て、地中に生息するワームという魔物のような形をしたゴーレム系の魔物。この迷宮核が地面ばかり弄っているせいか、生成できる魔物のバリエーションが土属系統に偏っている。

ただ、ワームそのものではなく、わざわざ異世界の知識を元にしたゴーレムを設計して放つ意味を問い質してみたところ、街づくり好きな迷宮核からは――

「ワームって魔物にはできない事をやらせるからだよ」

という答えが返って来た。具体的に何をする気なのかは、魔核には想像もつかない。

てっきり地下から相手ダンジョンに直接攻撃を仕掛ける戦略かと思っていたのだが、街づくり好きな迷宮核は「それだと多分競り負けると思う」と明言した。

現在、この街づくり好きな迷宮核が管理しているダンジョンは、長さだけならかなりのものだが、迷宮部分がほぼ皆無で、魔物を生み出すための材料となる瘴気も薄い。

というか魔素まで使って魔物除けに変換しているので、ある意味マイナス値だ。

魔核を二つ以上持つと思われる穢れ山ダンジョンは、その存在期間の長さからして多くの知識を有している事は明らか。

先ほどから大量に吐き出している瘴気量からみても、やはり相当な格上のダンジョンだと分かる。

本当に 戦って(喰い合い) 大丈夫なのかと、魔核が不安を覚えていたその時、地上でまた動きがあった。

「出入り口の封鎖か。これって悪手だってダンジョンマスターの知識にあるんだけど?」

『獲物の警戒が強くなり、糧にできるモノが減って手強いモノが増える』

地上の様子を観察していた街づくり好きな迷宮核が、穢れ山ダンジョンの出入り口が封鎖されたらしい事を指して問えば、魔核は何故その手法が悪手なのかを答える。

「なるほどな。向こうはそれが分からないほどお馬鹿じゃない筈だし。多分、外の街の情報が欲しくて冒険者を吸収したいんだろうな」

街づくり好きな迷宮核は、「仕掛けるなら今がベストか」と、攻撃に入る事を告げた。

締め出された冒険者たちが、中に取り残された仲間を助けようと出入り口の岩扉を叩いているが、当然ながらビクともしない。

「くそ、不味いぞ! 下層でしか感じないような瘴気が噴き出していやがった」

「もし下層の魔物が上がってきたら、アイツらじゃ対処できねぇ」

「ここじゃ定期的に小規模なスタンピードが起きる事はあったが、こんな事態は初めてだ」

ダンジョンの前に別ダンジョン産の街ができる異変も大概だが、何十年と変わらず存在し続けて来た穢れ山ダンジョンの初めて見る異常な動きに、地元の熟練冒険者も困惑と動揺を隠せない。

その時、多くのざわめきに交じって若い冒険者が叫んだ。

「おい、あれ!」

「うお! マジかっ」

ダンジョンの出入り口ギリギリの位置にある石畳から、見覚えのある太い石柱が生えた。

「や、やるのか……?」

「みんな道を開けろ! 脇に寄れ!」

「こっちのダンジョンがやる気だ! 射線を通せ!」

出入り口前に集まっていた冒険者たちが一斉に脇へと寄って射線を確保する。皆が注目する中、太い柱から白い線にしか見えない超高圧の水流、ウォータージェットが噴き出した。

迷宮産の水による超高圧水流は、水流の威力に領域化の侵食効果も乗るので、その破壊力は凄まじく、穢れ山ダンジョンの封鎖された岩扉は泥壁のように見る見る削れていく。

やがて出入り口が開かれると、中から高濃度な瘴気が噴き出した。同時に、閉じ込められていた熟練冒険者たちが転がるように飛び出して来ては警告を発した。

「やべぇのが来る! 三層まで行けねぇ奴は直ぐこの場を離れろ!」

一方、街づくり好きな迷宮核が超高圧水柱で穢れ山ダンジョンの出入り口を攻撃した事により、互いの領域が接触状態となって『穢れ山の魔核』に『西の森の魔核』の存在を感知された。

『侵食だと? まさか別のダンジョンが生まれていたのか』

穢れ山の魔核は、街に見えた外の建物群は、ダンジョン発生時に生じた環境変異によって隆起した地面が偶々街のような形になった、ただの地形かと一瞬考える。

が、改めて確認したがやはり街だ。どう見ても街だった。そしてよくよく観察して見ると迷宮領域の街であった。

感知した魔核は力も小さく、生まれてから恐らく一年も満たない未熟な魔核である事も分かった。しかし、本体の推定座標が 馬鹿々々(ばかばか) しいほど遠い。あまりにも遠過ぎる。

穢れ山の近辺に発生したのではなく、とんでもなく遠い場所からここまで迷宮を伸ばして来たのだと推察できた。

『しかし、なぜ地上に迷宮領域を』

地上に迷宮領域を設けた例は幾つかある。冒険者たちから吸収した知識にも記されているそれらは、殆どが魔核を持たないダンジョンの出来損ないという代物だ。

がしかし、極稀に生まれた場所の問題で地下迷宮を構築できず、環境の都合上仕方なく地上に迷宮領域を展開した魔核入りのダンジョンも存在した。

地上の迷宮領域は入り込んだ獲物が何時でも領域外に逃げ出せる事や、領域外からの攻撃で魔素を吸収できず一方的に魔物を狩られてしまうなど、ダンジョンにとってはデメリットが多い。

この未熟な魔核に感じる力でこんな遠方まで距離を伸ばし、これほどの規模の街型迷宮領域を展開しているとなれば、街型領域以外の部分は薄く長く、本体と繋ぐだけのモノになっている筈。

『この魔核は愚図なのか。いや、未熟ゆえに知識が足りていないのか』

あるいは個性として成長する事に固執した結果、他所の魔核を喰う為に無理やり距離を伸ばして遠征して来たのかもしれない。

いずれにしても――

『我にその身を献上にきたか』

穢れ山の魔核は、そう嗤って揺らめいた。