作品タイトル不明
84.到着!
「わぁ、あれがヘルメルト山脈か。大きいね!」
「そうね。この大陸でも有数な山脈だからね」
道の先を見ると、地平線が全部山脈で覆われていた。山脈のふもとや下層には木々が生い茂り、中層から上には岩肌が良く見える。そして、頂上付近は雲で覆われて見えない。
「ルイが求める素材はどこにあるの?」
「あそこで欲しいのはメリネルト鉱石、火石、風石、水石、地石だよ。それは岩肌が見える、中層にあるみたい」
私が作るアイテムは指輪の形をしている。それを作るのに必要な素材は五つ。
その土台となり、魔力伝達をしてくれるメリネルト鉱石。魔法使いの杖の素材にもなっている属性の石。火属性の火石、風属性の風石だ、水属性の水石、地属性の地石。
この五つが合わせれば、指輪に魔力を通すだけで四大属性の魔法が使えるようになる。しかも、詠唱なしで。
そうなれば、私は魔物と戦うことが出来る。行動範囲が広がって、欲しい素材がある場所にいけるようになる。まさに、今後を左右する重大なアイテムだ。
「向かうのは中層ね。魔物がたくさん生息していると思うから、気を付けていきましょう」
「大丈夫だよ。アマリアお姉様がいるし、私のショック玉がある。魔物なんてイチコロだよ」
「もう、そうやって気楽なんだから。ここは、私がしっかりするわ。絶対にルイを怪我させたりなんかしない」
アマリアお姉様は私に怪我をさせまいとやる気になっている。だけど、私は早くショック玉の効果をこの目で見たい。早く魔物が現れないかな。
そんなことを思いながら、馬はヘルメルト山脈へと向かっていく。
◇
深い森を抜けた先、見上げるほどに高いヘルメルト山脈の麓までたどり着いた。
「ここからは、馬と一緒にいけないわ。餌と水をありったけおいて、山脈を上りましょう」
アマリアお姉様の話を聞いて、飼い葉と水をありったけ置いておく。これで、馬を放置しても大丈夫だろう。
準備が出来ると、私たちは山脈を上り始めた。上り始めてすぐ、アマリアお姉様が心配そうな顔でこちらを向く。
「疲れとかない? 休憩しようか?」
「こんなんじゃ全然疲れないよ」
「でも、慣れない道だから……。ルイの体力が心配で……」
「私も森を駆け回っていたんだから、体力には自信があるよ。だから、大丈夫!」
ハラハラとした様子のアマリアお姉様。心配しないでいうが、あまり効果がない。
「もし、靴擦れとか起きたり、疲れたりしたら、背負ってあげるからね。それに――」
「はいはい。さっさと上る!」
そんなアマリアお姉様の背を無理やり押して、どんどん山脈を上っていく。木々が生い茂っている下層を上っていた時、アマリアお姉様の足が止まった。
「何かいるわ」
そう言って、大剣を構えた。とうとう、魔物が出てきた。私は腰のポーチに手をかけて、パチンコとショック玉を取り出す。
周囲を警戒していると、木々の影からゆらりと影が伸びてきた。それは大蛇の魔物。私たちの頭よりも大きな頭を持ち、私たちよりも大きな体を持つ。
「シャーッ!」
口を大きく開いて威嚇をする。これは良い的になる。パチンコにショック玉をセットした、その時――。
「ルイには指一本触れさせないわ!」
アマリアお姉様が駆け出していった。一瞬で大蛇との距離を縮めると、軽々と大剣を振る。風切り音が響き、その剣先は大蛇の体を切り裂いた。
だが、傷は浅い。どうやら、直前で大蛇が体を捩って避けたみたいだ。その素早さで、アマリアお姉様に襲い掛かる。
「シャーーッ!」
噛みつこうとしたが、アマリアお姉様が素早い身のこなしで避ける。それでも、大蛇はその後を追ってきていた。
これは、私が攻撃するチャンスだ。アマリアお姉様が引き付けている間に、私のショック玉を食らわせれば……。
パチンコを大蛇に向けて構え、狙いを定める。そして、威嚇をしている頭に向かって――ショック玉を放った。
真っすぐ飛んだショック玉は大蛇の頭に当たり、大きく破裂した。その衝撃は強く、一撃で大蛇の頭を消し飛ばした。
「やった!」
見事に大蛇の頭を吹き飛ばした。ショック玉の威力、凄い! これだと、必中になれば怖いものはない!
「アマリアお姉様、大丈夫?」
「これがショック玉の威力? ……凄いわね、一撃で仕留めちゃった!」
「どう? 私だって戦えるでしょ?」
胸を張って自信たっぷりにいう。すると、驚いていたアマリアお姉様の顔が緩む。
「そうね、ルイもいつまでも子供じゃないってことよね」
「そうだよ。私だって大人の仲間入りをしたんだから。これくらいは出来るようになったんだから」
「でも、まだ前に出るのは早いからね。戦える手段が遠距離なんだから、絶対私の後ろにいること。私に何かあっても前に出てきちゃダメよ。それに――」
あー、また始まった。アマリアお姉様は心配性なんだから。
「大丈夫! ちゃんと、自分のことは分かっているから! アマリアお姉様がいないと、ダメなのは分かってる」
「分かっているのならいいけれど……。やっぱり、ルイには何もしないでもらって、私が前で――」
「それだと、私のいる意味なくなるよー。アマリアお姉様も私を頼って欲しいな」
「ご、ごめんなさい。そうよね、だってルイはちゃんとした大人なんだから。うん、一人前だから」
心配してくれるのは嬉しいけれど、やっぱりちょっと過剰なんだけどね。まぁ、それだけ大切に思ってくれているってことだからありがいのは変わりないけれど。
「これで私も戦えるって分かったし、どんどん進んでいこう!」
「前は私よ。ルイは後ろからね」
そう言い合いながら、私たちは山脈を上っていった。