作品タイトル不明
82.ショック玉の披露
「ほら、早く来て!」
「おいおい、急かすな」
「朝から元気だね」
「……」
ロザンお父様の手を引いて、屋敷を出る。その後ろからはファルスお兄様とアマリアお姉様がついてくる。
「こんなにすぐに攻撃アイテムとやらが出来たのか?」
「うん。間違いなく、凄い威力のあるアイテムが出来たよ」
「それは楽しみだ。それが凄いものだと、ルイもとうとう魔物討伐が出来るのか……。なんか、感動するな。ルイは本当に大きくなった」
しみじみとそう言うと、手で頭を強く撫でられた。
「そりゃあ、もう大人の仲間入りをしているからね。今ではなんでも出来るんだから」
「じゃあ、領地の運営も手伝ってもらおうかな?」
「うっ、そ、それは……」
ファルスお兄様に意地悪なこと言われて、思わず言葉に詰まる。領地運営は私の出来る範囲に入ってないよー。
「きっと、この攻撃アイテムはアマリアお姉様も満足する威力だよ! 期待してて!」
「ふ、ふん! 私は厳しいわよ! そう簡単に許してもらえると思わないことね!」
「もう。そんなに私が魔物と戦うのが嫌なの?」
「そりゃあ、そうよ! だって、あんなに小さかったルイが大人になった途端に魔物と戦うなんて……そんなの怖くて許されないわ!」
相変わらずアマリアお姉様は過保護だ。だけど、そのお陰で私の平穏無事な生活が保たれてきたのだから、強くは言い返せない。
「はぁ……。ルイには領地運営の方で活躍して欲しかったのだけれど、どうしてこうなったのかしら……」
「それは、あれだ。アマリアが魔物と戦っていた話をルイにしたからじゃないか? だから、興味を持って自分でも戦えるんだと思って……」
「そ、そんな! わ、私のせいでルイが……粗暴な子にっ!?」
「……それ、自分のことを粗暴だって言っているようなんだけど」
まぁ、確かにそれは言えている。私が魔物に興味を持ったのはアマリアお姉様の武勇伝のお陰だ。だけど、肯定をしたら、アマリアお姉様がショックを受けそうだから言わない。
そうこうしている内に近くに生えていた木の所にたどり着いた。
「じゃあ、ここで披露するね」
「あの木を的にするんだな。さて、どれだけの威力が出るか楽しみだな」
「もし、その攻撃アイテムが誰でも使えるものだったら、村人にも持たせて、周辺の魔物退治も出来そうだね。これは、お手並み拝見だね」
「そ、そう簡単に私は許さないわよ!」
家族が離れた場所で見守っていると、私は木の正面に立つ。手に持ったのはショック玉とパチンコ。手で投げるよりも道具を使った方が早く正確に標的に当てられると思ったから持ってきた。
「みんな、見ててね」
そう言って、パチンコにショック玉を装着すると、力いっぱいに引っ張る。狙いを木に向け――手を放す。
ショック玉が真っすぐ木に飛んでいくと――大きな破裂音がして。そして、一瞬で木は向こう側が見えるくらいに抉れ、倒れていった。
「な、なんだと!?」
「これは……」
「えっ、嘘っ!?」
その威力に家族は驚いた様子だ。一本の木をなぎ倒すほどの威力。それを、目の前に見せつけられて信じられないと言った様子だ。
「どう? これが私の作った攻撃アイテム、ショック玉だよ」
そう言って、ショック玉を見せつける。すると、ロザンお父様がショック玉を手に取ってまじまじと見つめる。
「こ、こんな小さなものに木をなぎ倒すほどの威力が? 信じられん……。本当に錬金術は我々の常識を覆す」
「言ったでしょ? 錬金術は色んな物が作れるって。こんな物でも作れちゃうんだから、とっても便利」
「あぁ、これは凄い! 全く、ルイはとんでもない才能を持っているな。偉いぞ!」
上機嫌に笑いながら、また私の頭を撫でる。……でも、まだ子ども扱いされているような気がしてむずかゆい。
「うん、これは凄い攻撃アイテムだね。これさえあれば、誰でも魔物が倒せる。村人に持たせれば、もっと村が安全になるよ。これは領地のためにもなるアイテムだよ」
「そこまで考えてくれたの? そっか、これは領地のためにもなるものなんだ。うん、だったらみんなに使ってもらえるようにたくさん作るよ!」
「そうしてくれると助かる。ルイが錬金術師になってから、この村は少しずつ良くなっていっているような気がするよ」
まだ実感はないけれど、錬金術で作ったアイテムが領地の為になる。それを聞くと、俄然やる気が出てくる。
家族も大事だ、でも領地も大事だ。私は大事なものを守るために、どんどん錬金術を使っていきたい。
その為には、私自身が素材採取出来なくてはダメだ。でも、素材採取には魔物という障害がある。その障害を取り払うためにも、アマリアお姉様の協力が必要不可欠。
アマリアお姉様を見ると、難しい顔をしていた。
「言った通りに攻撃手段を手に入れたよ。だから、私を素材がある場所に連れて行って」
真剣な表情でお願いすると、その顔が困惑したように歪む。しばらく無言だったけど、突然表情が緩んだ。
「……分かった。約束は約束だからね。連れて行ってあげる」
「本当!? ありがとう!」
やった、これで色んなところに行ける! 嬉しさのあまりアマリアお姉様に飛びついた。
「だけど、絶対に無理はしないこと。ルイには安全な後方にいてもらって、私が前衛で戦う。今までの木の棒なんて通用しないからね! それと――」
「も、もう! そんなにたくさん言われても困るよ!」
「いえ、大事なことよ。怪我を絶対にさせないように、陣形も大事だし、事前の確認だって――」
と、くどくどと必要なことを言い始めた。それには私たちは苦笑いを浮かべた。やはり、アマリアお姉様は過保護すぎる。