軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第X話『ガールズトーク』

【女将&アリッサ】

帝国暦四三三年一月、侯爵邸は静寂に包まれていた。

年末年始はクロノ公認の特別休暇だ。

この期間は休んでも給料を減らされず、仕事すれば特別手当が給与に加算される。

特別休暇中に帰省する者もいるが、人数は少ない。

劣悪な環境で育ったため故郷に思い入れのない者や故郷が遠いために帰省を断念せざるを得ない者が大多数を占めているからである。

女将ことシェーラ・エクロンはどちらかと言えば後者だ。

故郷に思い入れはそれなりにあるが、エラキス侯爵領とエクロン男爵領は離れすぎている。

まあ、いきおくれた 妹(カナン) と顔を合わせづらい気持ちも少なからずあるのだが。

偶にゃ暇も悪くないね、と女将は誰もいない食堂……窓際の席に座り、そんなことを考える。

普段は侯爵邸で働くメイドの分まで食事を作っているのだ。

昼時は工房で働くドワーフや事務員まで加わるから堪らない。

メイド達のサポートがなければとっくの昔に音を上げていただろう。

いや、ぶっ倒れるまで突き進んでいたかも知れない。

悪い癖だ。

昔から他人に頼るのは苦手だったが、夫と死に別れてから悪化したように思う。

それで金貨百枚の大借金をこさえてしまった。

視界が不意に翳り、女将は顔を上げた。

すると、ティーセットを持ったアリッサがテーブルの向こうに立っていた。

アリッサは二つあるカップに香茶を注ぎ、一方を女将の前に、もう一方を自分の前に置いてからイスに座った。

「確か、作り置きのビスケットが……」

「いえ、お構いなく」

「そうかい?」

女将は立ち上がろうとしたが、アリッサに言われて座り直した。

「クロノ様にゃ、許可を貰っているんだけどね」

「それは分かっていますが、普段から気を遣って頂いているので」

「何処かの双子に聞かせてやりたいね」

女将は苦笑した。

今もハシェルの南では開拓が続いている。

最初は紙の原料となる木を栽培するためだったが、大して珍しくない植物と分かった途端、目的を甜菜の栽培に変更したからだ。

加えて、クロノは砂糖を売るつもりがないらしい。

このことに狂喜乱舞したのはエルフの双子……アリデッドとデネブだ。

二人は非番の日にビスケットを狙って厨房を訪れるようになった。

これが許されるのは二人の人徳と言うか、お馬鹿な言動のお陰だろう。

「そう言えば、娘さんのことは良いのかい?」

「部下が仕事をしている時に休む訳にはいきません」

「相変わらず、お堅いね」

前に比べりゃ取っ付きやすくなったけどね、女将は心の中で付け加える。

以前のアリッサは見知った相手に対しても強い警戒心を抱いていたように思う。

今はそれが和らいでいるように感じる。

クロノがアリッサの変化に関わっているのは間違いない。

と言うか、クロノと男女の関係になったことで心境に変化があったのだろう。

狭い街のことである。

二人が密会しているなんて黙っていても耳に入ってくる。

「……ふぅ」

アリッサは香茶を飲み、息を吐いた。

かなりリラックスしているようだ。

これも以前は見られなかった姿だ。

子どものいない女将には想像するしかない領域だが、女手一つで子どもを育てるのは重圧が伴うのだろう。

ましてや、アリッサは体を壊して働けなかった時期があるのだ。

必要以上に重圧を感じていたとしても不思議ではない。

アリッサはクロノと関係を持つことで重圧から解放されたのだ。

まあ、クロノの人となりを知らなければアリッサが弱みに付け込まれたと考えるだろうが。

下心を持って近づいて深みに嵌まっちまったんだろうね、と女将は自分のことを思いっきり棚に上げ、そんなことを考える。

クロノは変な男だ。

誘惑しても乗ってこない。

こちらが困っていると知れば無償に近い形で助けてくれる。

正直、下心を持って近づいたのにそういう対応をされると困惑してしまう。

困惑しながらクロノの肩書きや財産ではなく、クロノ自身を見るようになり、情が湧く。

クロノはそこで一気呵成に攻めてくるのだ。

砦を攻略するために手を尽くし、万策尽き果てて、士気がガタ落ちになった所を背後から襲われるようなものだ。

一度、関係を持ったら最後である。

ただでさえ突き放しにくい状況ができあがっているのだ。

男女の関係になったら尚更である。

そこでようやく気付く。

クロノが蟻地獄か、泥沼のような男だ、と。

ったく、どれだけの女に手を出せば気が済むのかね、と女将は頬杖を突いた。

【レイラ、アリデッド&デネブ】

白々とした光が手元を照らしている。

照明用マジック・アイテムは読書に十分な光を提供してくれるが、その光は何処か寒々しい。

レイラはページを捲る手を休め、仕事でピクス商会を訪ねた時に見たガラス製のカバーを思い出した。

もちろん、その時は仕事を優先させたが、ニコラによれば僅かながら需要があるらしい。

多分、照明用マジック・アイテムを購入するだけではなく、部屋の雰囲気作りにもお金を出せる富裕層に需要があるのだろう。

ガラス製のカバーがあれば……いえ、贅沢すぎます。

そんな物にお金を使うくらいなら貯蓄するべきです。

贅沢は敵です、とレイラは自分に言い聞かせた。

全く手が届かないほど高額であれば諦めもつくのだが、少し無理をすれば買える価格が曲者だった。

クロノが領主兼指揮官になってから、お金は貯まる一方だ。

これは他の兵士にも言えることだ。

まず、食費と家賃が掛からない。

無料で読み書きと算術を教えて貰えるし、本だって無料で借りられる。

贅沢は本当に恐ろしい、と改めて思う。

三年前は一日三回食事できるだけで贅沢だと思っていたのに今は厚遇を当たり前のように受け止め、その上、大して必要のない物を欲しがっている。

「ところで、二人はいつまで私の部屋で酒盛りを?」

「全然、話しかけてくれないから」

「無視されてると思ったり、思わなかったり」

レイラが振り返ると、アリデッドとデネブは床に広げた布の上で酒盛りをしていた。

酒は葡萄酒や大麦酒ではなく、それらからアルコールを抽出して作った蒸留酒である。

酒場ではエルフの妙薬という名で親しまれている。

この名前はアリデッドとデネブが他人にアルコールの抽出方法を教えたことに起因している。

技術を流出させたことに思う所はあるが、エルフの妙薬を傷に掛ければ化膿しにくくなる……消毒の概念が広まりつつあるのは喜ぶべきことではないかと思う。

「今日のつまみは!」

「魚の骨みたいな!」

アリデッドとデネブは魚の骨を掲げた。

ただの魚の骨ではなく、魚の骨をカリカリになるまで焼いたものだ。

本来ならば捨てられる部分を集めて酒のつまみに変える二人の手腕は大したものだ。

場当たり的に作っているので、当たり外れが大きいのが難点だが。

「レイラはこんな時までお勉強みたいな?」

「偶には酒盛りに付き合って欲しいみたいな」

「……いつも付き合ってます」

レイラは溜息を吐きつつ、床に広げられた布の上に座った。

二人がレイラの部屋で酒盛りをするのは月に一度くらい、部下と一緒に飲みに行くこともあるらしい。

部下と積極的にコミュニケーションを図る二人を見ていると自分の至らなさを痛感させられる。

「まあまあ、そんなに暗い顔しないで!」

レイラが空のカップを手に取ると、アリデッドはすかさずエルフの妙薬を注いだ。

エルフの妙薬を口に含むと甘酸っぱい味が口内に広がった。

いつものように果汁を混ぜているようだ。

「さて、こうして新年を迎えた訳ですが、去年も色々ありました」

「神威術の使い手と戦うのはマジで勘弁して欲しかった、みたいな」

デネブは伏し目がちになり、やや低い声で言った。

「今年こそ、クロノ様の役に立ちたいです」

レイラはカップを見下ろしながら言った。

二年前の親征では待機組、南辺境では肝心な時にクロノの役に立てなかった。

「レイラは部隊運営でクロノ様の役に立ってるし!」

「あたしらは戦闘以外でクロノ様のお役に立ちたい!」

アリデッドとデネブは頭を抱えた。

「正直、あたしはクロノ様に戦って欲しくないみたいな」

「クロノ様、かなり無茶するし」

「……それは、私達のために」

レイラは言い淀んだ。

クロノの体を見れば、どれだけ無理をしているのか容易に想像できる。

軽々しく役に立ちたいと言うべきではなかった。

「少ししんみりしちゃったけど」

「クロノ様の健康と領地の繁栄を願って」

「……乾杯」

レイラは軽くカップを上げた。

【スノウ、スー、エリル】

スーの部屋は侯爵邸の中で最も変わっている。

まず、臭いが違う。

昏き森で採取した薬草を磨り潰したり、乾燥させたり、煮込んだり、燃やしていたりするので、スノウの乏しい語彙では説明できない臭いが漂っているのである。

悪臭ではないのだが、気分が落ち着かなくなる。

次点はエリルの部屋だが、これはスノウの理解の範疇にある。

本とマジック・アイテムが沢山ある。

一番似ているものを挙げるとすればドワーフ工房だ。

それくらいエリルの部屋は雑然としている。

スノウの部屋はスーとエリルのそれに比べれば普通だ。

二人部屋だからあまり変な物を持ち込めないし、収納スペースに限りがあるので、本当に必要な物だけを残さなければならない。

同室のハーフエルフは細かいことを気にしない質だが、それに甘えすぎるのは良くないと思う。

スノウはスーの部屋の壁際に立ち、深呼吸を繰り返した。

ちなみに壁際に立っているのは部屋の真ん中に毛皮で作られたテントがあるからだ。

「第……えっと、何回目か忘れちゃったけど、クロノ様に感謝の気持ちを伝えたいな会議!」

「……」

『……』

会議の開始を宣言すると、エリルとスーがパチパチと拍手をしてくれた。

エリルの目は虚ろだ。

スーはあまり関心がなさそうである。

「提案がある」

エリルは手を挙げた。

「何か、良いアイディアがあるの?」

「クロノ様を囲んで食事会を行う。感謝の気持ちを伝えるために女将に料理を沢山用意して貰う」

ダイエットに成功し、食事制限は解除されているはずだが、エリルの目はギラギラしていた。

どうやら、ダイエットはエリルの心に良くない影響を残したようだ。

また、ポッチャリしないようにボクが頑張らないと、とスノウは拳を握り締めた。

「クロノ様に感謝の気持ちを伝えなきゃいけないんだよ?」

「問題ない。クロノ様も喜んでくれる」

「スーは何かない?」

スノウはスーに話しかけた。

『オレ、ソロソロ、役目、果タス』

「役目って?」

『子、生ム』

え゛? とスノウは凍り付いた。

「ダ、ダメだよ!」

『オレ、ソノタメ、イル』

「さ、三人でなんて絶対ダメ!」

スノウは三人でクロノと子作りしているシーンを想像してしまい、慌てて言った。

スーは不思議そうに首を傾げた。

『三人、違ウ。オレ、一人』

「そ、そうだよね、スーはそのためにいるんだもんね」

アハハ、とスノウは笑って誤魔化した。

「三人でという発想は理に適っている」

「え? えーっ?」

スノウはエリルを見つめた。

「エラキス侯爵は性欲旺盛と聞いた。私達は……」

エリルは自分の体を見下ろし、次にスノウ、最後にスーを見た。

「私達は発育が十分ではない」

「そ、そうかな?」

ちょっとは大きくなったと思うけど、とスノウは自分の胸を押さえた。

「女将、ティリア皇女、セシリーの三人でも一人では太刀打ちできない。それならば三人で相手をして一人頭の負担を軽減するのが得策」

『危険、仕方ナイ』

「得策って、そういうものなのかな?」

スノウは納得できずに首を傾げた。

「合理的に考えるべき」

『敵、手強イ。チカラ、合ワセル、当然』

うっ、とスノウは呻いた。

二人と話していると自分が間違っているような気がしてくるから不思議だ。

「やっぱり、違うよ!」

「スノウは合理的でない」

『……』

スーはエリルの言葉に頷いた。

「合理的っていう話じゃなくて!」

スノウは乏しい語彙を駆使して説得を試みた。

どうやら、会議を始めるよりも先に二人との間にある溝を埋めなければならないようだ。

【エレナ、フェイ】

エレナは体を起こし、ベッドの上でボーッとしていた。

時間は昼過ぎだろうか。

普段ならば大失態だが、年末年始はクロノが定めた特別休暇期間だ。

この期間は休んでも給料を差し引かれず、休まずに仕事をすれば特別手当が付く。

侯爵邸の使用人も、事務も最低限の人数を残して半休止状態、ドワーフ工房も、紙工房も、学校まで休みで、働いているのは軍人だけだ。

あれがあたしの初夢か、とエレナはぼんやりと考えた。

クロノにお金を叩き付け、自分を買い戻す夢を見たのだ。

実際、自分を買い戻せるだけのお金はあるのだが、自分を買い戻したいという気持ちより躊躇いの方が強い。

漠然とした不安感も理由の一つだが、クロノの庇護を失うことが堪らなく恐ろしい。

エレナは奴隷商人の所にいた時のことを思い出して身震いした。

誰も守ってくれないことがあんなに恐ろしいと思わなかった。

「……奴隷根性が染み付いてる、ってことなのかな?」

エレナが疑問を棚上げして布団に潜り込むと、扉がドンドンと叩かれた。

布団を被り無視していたが、ドンドンという音は止む気配すらなかった。

「ああ、もう! 分かったわよ!」

とうとう根負けしてベッドから出る。

眠気は完全に吹き飛んでいた。

エレナが扉を開けると、扉を叩いていた人物……フェイは拳を振り上げた姿勢で動きを止めていた。

「エレナ殿、おはようであります!」

「……フェ~イ」

フェイは右拳で左胸を押さえた。

「今日は絶好の外出日和であります」

「怠いから嫌よ」

エレナは扉を閉めようとしたが、フェイに邪魔された。

扉が閉まらないように足を差し込んできたのだ。

「は、話し相手になって欲しいであります!」

「アンタ、軍に友達がいたでしょ!」

フェイはスノウという名のハーフエルフと友達だったはずだ。

エレナが指摘すると、フェイは痛い所を突かれたと言わんばかりに呻いた。

「休みが合わないせいでスノウ殿と疎遠になってしまったであります! スー殿とエリル殿に取られてしまったでありますよ!」

フェイはちょっと涙目だった。

「……まあ、そういうことなら」

「感謝感激であります!」

エレナが扉を開けると、フェイは嬉しそうに部屋に入ってきた。

「まあ、適当な所に座りなさいよ」

「分かったであります!」

フェイは一つしかないイスに座った。

まあ、良いけど、とエレナは頭を掻きながらベッドの縁に腰を下ろした。

「あたしの所に来なくても部下と話せば良いじゃない」

「賭け事は苦手であります」

フェイは地の底から響くような低い声で言った。

どうやら、仲間内の賭け事でカモられたようだ。

「アンタ、部下に舐められてるんじゃない?」

「皆、普段はちゃんとしているでありますよ。ただ、休日は仲間内で賭け事をしたり、お酒を飲んだり、羽目を外すことが多いであります」

フェイはショボ~ンと頭を垂れた。

「そう言えば、フェイは帰省しないの?」

「帰省も何も帰る所なんてないであります。強いて言えば、ここが我が家であります」

へぇ、とエレナは感心した。

「強いて言えば、ここが我が家であります。大切なので二度言ったであります」

「……台無し」

「いずれ、我が家になるであります」

それはそうかも知れないけど、とエレナは予想の斜め上を行くフェイの前向きさにちょっと引いた。

「水着のお陰で夜伽もバッチリであります!」

「……フェイ的にはそれで良いかも知れないけど」

エレナは窓の外を見た。

まだ、太陽は高い位置にある。

真っ昼間から夜伽の話をするのは不健全すぎる。

「ただ、クロノ様は水着をお気に召さないようであります」

「いや、まあ、クロノ様は」

アンタの恥ずかしがる顔を見たいんだろうし、とエレナはもごもごと口を動かした。

「そう言えば、クロノ様って何処にいるのかしら?」

「む、クロノ様はカド伯爵領に行ったであります」

「え? アイツ、働いてるの?」

むぅぅぅ、とフェイは眉間に皺を寄せた。

「仕事ではなく、海藻を採りに行ったのであります。何でも、『ろーしょん』なるものを作るとか?」

「ろーしょん?」

エレナは首を傾げた。

「何でも海藻を煮ると、ヌルヌルした液体になると」

「ヌルヌルした液体?」

エレナは総毛立った。

そのヌルヌルした液体の使い道を理解したからだ。

「フェイ、紐は何処にあるのかしら?」

「工房にあるはずであります」

「ちょっと借りてくるわ」

「お供するであります」

エレナとフェイは立ち上がった。

翌日、僕のローションがっ! というクロノの悲鳴が侯爵邸に響き渡った。

【ティリア、セシリー】

書簡を読み終えたティリアは目蓋を閉じ、眼球を軽く揉んだ。

やはり、物事というものは思い通りに進まないな、と目を開ける。

机の上には羊皮紙の束が置かれている。

周辺領主に送った書簡の返信だった。

「ティリア皇女、どうかなさったんですの?」

「周辺領主の反応が思わしくなくてな」

ティリアは小さく溜息を吐き、セシリーの問い掛けに答えた。

関税の撤廃による市場の拡大、ひいては経済同盟のために周辺領主へ書簡を送っているのだが、状況はあまり進展していない。

「わたくしのお父様は?」

「ああ、ボンドは協力を申し出てくれた。ティナも協力してくれている。周辺領主も興味を持ってくれているようだが……どうも、決め手に欠けるようだ」

関税を撤廃し、露店制度を導入すれば商業活動が活性化する。

ハマル子爵領では成功しているし、分の悪い賭ではない。

「いや、私が決め手になると思っていたものが決め手にならなかったと言うべきか」

「決め手と仰りますと?」

「神聖アルゴ王国の羊毛だ。あそこの羊毛は質が良いからな。安く手に入れられるようになると分かれば話がスムーズに進むと思っていたんだ」

ティリアは自分の胸元を見つめ、舌打ちをした。

「高品質の羊毛が安く手に入れば良いという問題ではなかったみたいだ。たとえば、自由都市国家群の職人が高品質の羊毛で作ったみたいな……要するに付加価値が重要だったのかも知れない」

直接、問い質せない所が悩ましいな、とティリアは腕を組んだ。

「状況を打開する策はありますの?」

「一応な」

あまり使いたくないが、と心の中で付け加える。

「付加価値には付加価値で対抗する。つまり、高品質の羊毛が安く手に入り、自分の領地で加工することに価値があることにすれば良いんだ」

「流石、ティリア皇女ですわ!」

うむ、とティリアは頷いた。

「どのような方法を使いますの?」

「苦渋の選択だが、ヤツの力を借りる。アイツはアルフィルク城の警備を担当しているからな」

ティリアは羽ペンを手に取り、断腸の思いでリオへの書簡を書き始めた。