軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

護衛騎士の所在

寮に帰宅し、エイリンに『心配した』と泣きながら叱られた後。

ナイジェルに手伝ってもらいながら、わたくしは荷物の整理をはじめた。まったく、ナイジェルがワガママばかり言うから。エイリンには泣かれてしまうし、荷物の整理も夜からになってしまったわ。

そして三時間ほどが過ぎ――荷物の整理をある程度終えた頃には、時刻は真夜中近くになっていた。

……残っている荷物の整理は明日には終わりそうね。入学式までには後二日あるし、残りを終えたら少しゆっくりとできそう。

そのことにわたくしは、ほっと安堵の息を吐いた。

「もう夜も遅いけれど……お前の部屋はどこなの?」

気になっていたことを訊ねると、ナイジェルはこちらに視線を向けた。

「護衛たちの寮が近い敷地にありまして、そちらに部屋があります。定期でこちらに巡回にも来ますが、身の安全が心配でしたら私たちは姉弟なので隣室に常駐することも許されます」

なるほど、血縁同士だとそういうことができるのね。

護衛騎士が決まったのも急だっだし細かいことをお父様に聞く余裕なんてなかったから、ナイジェルが詳しくて助かるわ。

「寮と隣室……。どちらにしようかしら」

わたくしの寮の部屋は四室ある。居間、寝室、浴室、そしてゲスト用の隣室だ。

その隣室にナイジェルに居てもらうことができるのね。

「……姉様をお近くでお守りできるなら、私はそれが嬉しいです」

「そう。それなら隣室にお前の荷物を運びなさい」

ナイジェルがそうしたいと言うのなら、そうしてもらおう。

それに、近くに常時護衛が居ればわたくしも安心できるもの。

「いいのですか?」

なぜだか、ナイジェルは目を丸くしている。

近くで守りたいと言ったのは自分のくせに……おかしな子ね。

「ええ。頼もしい騎士様が近くに居てくれるのなら、ほっとできるわ」

そこまで言って、ハッとする。

姉弟だけれど――わたくしたちは血が繋がっていないのだ。

血の繋がらない男女が扉一つ挟んだだけの場所に居るのは、とても良くないのではないかしら。

そう思って発言を訂正しようとナイジェルに目を向けると――

「姉様をお側で守れるのが、本当に嬉しいです!」

満面の笑みでそう言われてしまい、わたくしは言葉に詰まってしまった。

ここで『やっぱり止めましょう』なんて言って、理由を訊かれたら……上手くごまかせるのかしら。

ボロが出るようなことを言ったら、聡い子だから自分の素性に行き着いてしまうかもしれないわ。

「ナイジェル、その……」

「では、荷物をこちらに持ってきます!」

「え、ええ……」

……結局、発言を訂正する勇気は湧かなかった。

まぁ、問題ないわよね。ナイジェルはわたくしを本当の『姉』だと思っているのだし。

わたくしさえ、妙な意識をしなければ済むのことなのだ。

妙な意識? ……妙な意識ってなにかしら。

わたくしが首を傾げている間にも、ナイジェルの荷物はどんどん隣室へと運び込まれていく。

それを見ながら、わたくしはなんだか取り返しのつかないようなことをしたような心地になってしまった。