軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12話 迷宮の異変とおっさん無双

悲鳴が聞こえた。

表層の魔物は弱く、余程の事がない限り死ぬ事はない。というか表層での死亡例はまず聞かない。可能性があるとすれば。

「なんらかの異変が起きた……?」

“助けに行く?”

“もし対処出来ない異変だと木乃伊取りが木乃伊になるぞ”

“けどほっとくのも不味くね?”

無視するか助けに向かうか。

「行きましょう。知ってしまったからには見殺しには出来ませんし」

迷宮は何もかもが自己責任だ。本来なら救助に行く必要はない。だから救助に行くのは自分の自己満足だ。

悲鳴のした方に駆ける。この迷宮に限らず表層はシンプルな作りをしており、迷う事はない。罠もない。全力で駆ける。

“おっさん足速っ!”

“息も切れてなくね?”

“おっさんの迷宮適性って何?”

「Eですが」

“嘘だっ!!”

“これは鉈少女も叫ぶレベル”

“どう考えてもウ○イン・ボ○トよりも速かったぞ!”

“ジェットコースター苦手なワイ、無事に酔う”

“オロロロロロ……”

いや実際に適性はEと出たんだからEとしか言えない。

…………Eだよな。

なんか自分も言ってて変に思えてきたぞ。

全速で走り、カーブや曲がり角で多少減速したものの、それでも1分とかからずに悲鳴のした現場に到着。

そこには、多数の赤い帽子を被った茶褐色のゴブリンと、その多数のゴブリンに囲まれ、傷だらけの探索者達。

見覚えがある。というか昨日会ってる。

自分を見下したあの若者達だ。

“ぅえ!? レッドキャップ!?”

“なにぃ! 知ってるのか雷○!?”

“誰が○電だよ! さておきアレはレッドキャップ、ゴブリンの亜種だ。特徴はあの赤い帽子。性格は残忍にして残虐。1体1体はゴブリンに毛が生えた程度の強さだが連携が上手くて、あの数だとオーガ1体相手するよりも厄介だ。現にあの探索者、攻撃しようにも邪魔されて何も出来ず、徒に傷を増やしている”

“長い説明サンクス”

“それよりも表層にレッドキャップがいる方が問題なんだが? 確か上層に出る魔物だっけ? それもどちらかと言えばレアモン”

“とにかく協会に連絡だ!”

“生目1号墳だっけ? ワイがしとったで”

“おま、有能すぎ”

確かに異常だ。だからと言って自分は何もしないでいるというのは流石に気が引ける。たとえ自分を見下し小馬鹿にした者達だとしてもだ。

「助太刀します!」

“おっさん!?”

“いや待てそれは流石に危ないて!”

確かに危険な行為だ。自分も死にかねないだろう。だからと言って前途ある……あるか? いやまぁ兎に角彼等を見殺しにするのは寝覚が悪い。そう、これはただの自己満足だ。

レッドキャップを背後から纏めてスコップで薙ぎ払う。

背後からの奇襲に対応出来ずまともに攻撃をくらい、何体かが黒い霧となって消滅する。

「は? え?」

何が起きたのか呆然とする若者達。

「Gi……? Gigyaaaaaaaaa!」

自分に気付いたレッドキャップが襲いかかる。そのおかげで若者達を囲っていた包囲網が少しだけ緩む。

「今のうちに早く立て直して!」

しかし動く気配がない。逃げる様子もない。ただ呆然としてるだけ。そんな動かない若者達の方が倒しやすいと思ったのか、半分以上のレッドキャップが若者達に押し寄せる。それで流石にヤバいと思ったのかなんとか応戦し始める。男は剣で、2人の女性のうち1人は槍で、もう1人は魔法で。しかし大振りで隙だらけの攻撃はレッドキャップに隙を付け入れられ、魔法に関しても途中で邪魔されまともに発動出来ていない。

「チッ」

思わず舌打ちをする。怪我のこともあって彼等の動きが拙いのもあるが、それ以上にレッドキャップの連携が上手い。しかし。

「冷静に対処すれば、なんの問題もない」

一斉に襲いかかるレッドキャップの1体の鳩尾を握りで突き、別の1体の頭部を剣先で殴る。攻撃を受け流しバランスを崩れさせ、転倒したところで足で押さえつけ、剣先を首めがけて突き下ろす。

もしこれが人間なら、いや、人間に限らず動物なら恐れをなして逃げるだろう。或いは恐怖のあまり自暴自棄になって隙だらけの攻撃をしてくるのだろう。だが魔物は違う。仲間がやられても、そんなのお構いなしに襲ってくる。しかし冷静に対処し、1体1体処理し、数を減らせば、如何に連携が上手くとも、余裕が生まれる。

“おっさん強え……”

“これで適性Eって絶対何かの間違いだろ”

“端から身体を鍛えてたのか、機械の故障か、そのどっちかだろ”

“故障は有り得ねえだろ”

“俺も探索者だから解るけど、このおっさん動きやばすぎ。多分見えてるぞこれ。レッドキャップの動き読んで行動してる。そんなのB以上ないとまず無理”

“あー、適性B辺りから身体能力おかしいからな”

1体、また1体と倒し、自分を囲んでいたレッドキャップを全て倒し、そのまま彼等を囲んでいる群れを背後から奇襲し……程なくレッドキャップは全て倒された。

“すっげ……”

“マジかよ……”

“あんなにいたレッドキャップをほぼ1人で全滅させるってどんだけだよ。しかもスコップで”

“それにしても落ちてんなー。血染めの帽子にブラッドナイフ”

“血染め……?”

“レッドキャップの帽子が赤いのは犠牲者の血で染めてるからって話だぞ”

“何それ物騒”

あー、確かそんな伝承あったな。しかし表層に上層の魔物が出るのはおかしいな。ボスならともかく。

まぁけど今は彼等だろう。

「あー、えっと大丈夫ですか?」

手を差し出すが。

「てめー! なに横殴りしてんだよ! 人の獲物横取りしやがって!」

……えぇ?