軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

誰か襲われてんのか!

仕事がなくなってからも、なんか知らんが早起きの癖が抜けない俺は、気がつけば午前中にダンジョン前にいた。

ここは前回、ミリアにおすすめされて挑戦したダンジョンだ。

「おっし! じゃあ一応だけど、配信もスタートお願いしていい?」

『承知しました。……三……二……一……配信スタートします』

「な、なんか配信スタートするの早くなったね」

『慣れてきました』

「おお、そっか。すげえな。よっし、じゃあとりあえず、今日もこの初心者向けダンジョンに潜るのでよろしく!」

多分誰にも観られない気がしたので、わりと適当な挨拶を済ませ、俺はダンジョンへと入っていった。

さあーて、まずはスライム共の相手をすることになるのかな。今日は鋼の剣と皮の鎧に加えて、木製ラウンドシールドも身につけてる。

やってやるぞと気合を入れながら歩いていると、AIが意外な提案をしてきた。

『スキップチケットを使用しますか?』

「ん? あー、この前手に入れたチケットか。ってか、あれ使うとどうなるんだっけ」

『以前クリアした階層をスキップできます。一瞬にしてワープをし、次の階層に到着しています』

「めちゃくちゃ便利じゃん!? 使う!」

こんな便利なチケットがあるって、サブスク便利だなぁ。他にも特典があるらしいけど、三千円くらいだったらこれから払い続けても良いかも。

『では、スキップを実施します』

「はー……イィイ!?」

それはまさにワープだった。気づいたら地下一階の階段前に突っ立っている。特に派手な演出とかはなく、あっさりと完了してる。

「え、もう着いた感じ?」

『はい。地下一階に到着しています』

さらにその直後、天井からボンボンとアイテムが落ちてきた。

「うわ! 敵……じゃ、ないみたいだな」

『スキップで獲得したアイテムになります』

「へ?」

『スキップを使用しても、道中のモンスターは倒した判定になります。モンスターを倒したEXPと、アイテムはスキップ後にまとめて獲得できます』

何もしてないのに、経験値もアイテムも貰っちゃったわけか。便利だけど、なんかずるいことしちゃってる気分。

「いいのかな、俺何もしてないのに」

『景虎様は前回、しっかりと一階をクリアしておられます。そのため、スキップチケットで報酬が貰えるのは不正ではありません』

「はあ……まあ、よく分からんけど、とりあえず進むか」

アイテムは一通りサブスクのボックスに入れてもらい、俺は地下一階を歩き始めた。

今回はまるで迷路のように入り組んでる。でも、道中でやってくる魔物は一階と同じだったので、レベルが上がってる俺はわりかしあっさりと倒すことができた。

ここまで召喚カードは使ってないし、魔法も使用してない。ってか、魔法の使い方分かってないんだよな俺。

「なあミリア。魔法の使い方——っ!?」

AIに話しかけようとしたところで、突然ダンジョンから悲鳴がした。声の感じは女の子で、前方にある地下へと降りる階段から聞こえた気がする。

「誰か襲われてんのか!」

『声を地下二階より検知。また、前方より人の接近を確認』

「人? うわっと!?」

ダッシュしていたら、目の前に長身イケメンが現れ、ぶつかりそうになったので避けた。その男は青い顔のまま、一目散に走り去っていった。

一体誰なんだろう、とか考えてる余裕はない。俺は階段を駆け降りて、声の主を探す。

『突き当たりを右に曲がってください。この先、本階層では想定されていないモンスターを確認しています。お気をつけください』

「想定されてないモンスター?」

『明らかに上位のモンスターです』

嫌な予感しかないミリアの助言を聞き、とにかく気を引き締める。曲がり角の向こうにいたのは、地面に倒れこむ女の子。

それを見下ろしつつ近寄るモンスターを見て、俺は息を呑んだ。

「な、なんだよありゃ」

『オーガです。初級の鬼系モンスターです』

「鬼だって?」

そう、確かに鬼だ。よく昔話に出てくるような格好と、赤い肌。おまけに角を生やしてる。

手には刺々しい棍棒を持ち、よだれを垂らしながら怯える女の子に近づいてた。そして、丸太みたいな腕を振り上げ、そのまま棍棒で叩きつけようとする。

「うおおおお!」

でも、ここでどうにか間に割り込むことができた。左手に装着していたラウンドシールドで、どうにか棍棒の一撃を受け止める。

ただ、めちゃくちゃ腕がビリビリした。

「この!」

痺れている場合じゃなかった。間髪入れず、奴の腹を剣で切りつけると、鬼は苛立ちを露わにして、棍棒を持っていない左手で俺を捕まえようとした。

「あぶね! ってか、効いてないのか」

ギリギリで巨大な手から逃げ出した俺だったけど、正直この状況は厳しい。まるで岩でも切ったような感触で、まるでダメージを与えた気がしない。

俺は逃げながら、小石を拾っては鬼へ向かって投げる。すると奴は怒り、こっちに走ってくる。

これでさっきの女子から気を引くことに成功した。後は俺が無事逃げおおせるだけ! それがマジで厳しいんだけどね!

「すっげえ追いかけてきてる。怖え!」

迷路みたいな通路を走り続ける俺。追いかける鬼。まさに鬼ごっこ、なんてね。

「やべええ!? すげえ怖い顔になってるううう」

俺の心のダジャレでも聞こえたか!?

『景虎様、オーガは電撃が弱点です』

「召喚——そうか!」

懐にしまっていたカードを取り出し、振り向きざまに投げる。すると妖精の絵が描かれたカードが煌めきだし、可憐なモンスターが空を舞う。

現れた小さな女の子は、仰天する鬼に微笑みかけると同時に、猛烈な電撃を両手から発した。

「よし……! チャンスだ!」

鬼が悶絶しながら後ずさる。その姿は必死そのもので、いかに魔法が効いているか一目で分かるほど。

だが、多分これだけでは倒せない。目前の怪物を前にして、直感が教えてくれた気がした。ここで俺はもう一枚カードを取り出し、奴めがけて投げつける。

カードから飛び出したゴブリンが、悶絶している鬼を目掛けて飛びかかる。

でもこいつってば、たった一撃しか当てられないんだよなぁ。そう思うなり、鬼が息を荒くしながらこちらに向かってきていた。

ところが、ここで意外にもゴブリンが活躍する。前回とは比較にならない棍棒の一撃が、鬼の顔面をぶちのめしていた。

さらに一発、続けて一発。

「どうなってんだ? 一発打ったら終わりじゃないのか」

分からんけどこれはチャンス。俺もまた接近し、奴の首を切り飛ばそうとした。でも、剣はなんと鬼にキャッチされてしまう。

「げ!?」

『景虎様、魔法を』

すると、懐に入っていたマジックカードがホッカイロみたいに熱くなってた。

「これ、どうやって使うんだ?」

『サポートします』

「ん——おお!?」

次の瞬間、脳裏に次々に入り込んでくる奇妙な文字の数々。一体どういう原理か知らないが、このマジックカードから得られた魔法の使い方を、俺は理解したような気がした。

だが、鬼も待ってはくれない。いつの間にかピクシーとゴブリンは消えていた。ボロボロになりつつも、最後の力を振り絞って棍棒で殴る気だ。

『景虎様、魔法を』

「分かってる。こうやるんだろ!」

俺は化け物めがけて拳を振りかぶっていた。