軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お兄さんならきっと、VIP待遇で配信者デビューできますよ

それから一日が経ち、早朝から俺は急いで着替えをしていた。

「やべえ! 昨日疲れて寝過ぎちまった。急がないと面接に遅れる」

今日は就職の面接がある日で、俺は鳴り響いていたはずの目覚ましをいつの間にか止めていたらしい。

ったく冗談じゃないと思っていたら、今度はゴーグルから目覚ましと同じような音が鳴り響いた。

「え!? なんだよ急に」

とりあえずゴーグルを手にすると、ミリアの涼しい声が響いた。

『おはようございます。本日のログインボーナスです』

「ログボ? ああ、それは忙しいから後に——」

探索のこととかは後回し、そう思っていたら天井が輝き出し、いろんなものがドカドカと落ちてきた!

「うわ!? な、なんだあ」

『本日のログインボーナスになります』

「なんか増えてね?」

『はい。本日よりプレミアムログインボーナスも開始しておりますので、報酬が増えています。このまま継続していけば、最速でのレベルアップが、』

「プレミア? ちょ、ちょっと後、後! 帰ったら見るわ」

とにかく遅刻するわけにはいかないので、俺は大量に転がったよく分からない報酬とやらをそのままにして家を出た。

「はあ、やっぱダメかな」

それから五時間後、お昼を過ぎた頃に俺は電車に揺られていた。

とにかく時間通りに会社に到着し、面接を行うことができたんだけど。手応えはまるでなかった。

面接官は二人。圧迫面接というわけじゃないんだが、俺のことを怪しんでいるようだった。

ダンジョン探索事務所を一ヶ月で退職した、そういう経歴について語ると、まあ根掘り葉掘り聞かれたわけで。

なんか粗探しされてる感が凄かったな、あの面接官。気のせいかもしれないけれど。

とにかく、合格の場合のみ連絡を寄越すらしい。気にしていてもしょうがないので、俺は他のところも面接を受けるつもりでいた。

でも、なんかモヤモヤしてたので、気晴らしに駅を出て繁華街をウロウロ。すると、突然綺麗なお姉さんに声をかけられる。

「こんにちはー」

「あ、こんにちは」

何か紙を差し出されたので、とりあえず受け取ろうとしたところ、

「あの、すみません! ダンジョン探索に興味はありませんか!?」

と必死な声を上げてきた。

「え?」

戸惑いつつ、ひとまずチラシを受け取ろうとするんだけど、この人が離そうとしない。

「チーム【袋小路】ってご存知ですか? 今最も勢いのあるライバー事務所なんです! お兄さんならきっと、VIP待遇で配信者デビューできますよ」

チーム袋小路だって?

俺は面食らってそのお姉さんを見た。スーツ姿で黒髪を後ろでまとめており、新入社員感に溢れてる。

その事務所がいかに今をときめいていても、そこに入るつもりは到底なかった。

だってここ、俺をクビにした事務所じゃん。どうやらこの人は俺の代わりっぽい。チラシ配り、俺もやらされたっけ。

ちなみに袋小路というのは、社長の苗字なんだ。目立ちたがり屋すぎて、会社名も自分の苗字にするあたり、アイツらしさが出てる。

「ごめん。俺、興味ないんだ」

「ええー! 本当ですか。ダンジョン探索も、配信も?」

「ああ、やったことはあるけど。別にいいかなって」

「でも、うちの事務所は手厚いサポートがあります。全然他と差がつきますよ。だって半年も続ければ、レベル1から一気に10まで上げることだって夢じゃないんです!」

なかなかガッツあるなこの新人。できればそこでクビにされたんだよね、って言うのが一番効果ありそうだけど、「うわ」って顔されそうで怖い。

……ん? ちょっと待て、この子はなんか勘違いしてるな。

「半年でレベル10あげられるって、遅くない?」

「え? いえいえいえ、全っ然遅くないですよ。ってか大抵の人は、レベル3とか4で挫折しちゃうパターンがほとんどなんです。知らないんですか?」

なんか俺のほうが常識ないみたいな反応されてる。

あれ? でもおかしいな。レベルだったら昨日だけで、もう10以上に上がってたはずだけど。

「いや。実は俺昨日ダンジョン潜ったけど、一日でレベル4から12、いや13くらい……に上がったんだ」

「それ、どこのダンジョンです? どこまで潜りましたか? 私学生の頃から潜ってますから、大抵は知ってるんです」

え、この人けっこうな有識者だったの?

俺は戸惑いつつも、潜ったダンジョンの地名と、一階まで潜ったところで終わったことを説明した。

「ありえません! あそこのダンジョンで一階をクリアしただけで? だってモンスターはスライムとか、ゴブリンとかばっかりでしたよね?」

「ああ、まあ」

「お兄さん、きっと何か勘違いされていますよ。とにかくこれから事務所に」

「あ、あー! ちょっと急用思い出した!」

「え? ちょ、待ってー」

このままだとマジで事務所に引っ張り込まれる。そして社長に見つかって地獄絵図になりそうだったので、もう強引に話を打ち切って逃げ去った。

それにしても、なんか全然話が食い違ってたな。

家に帰った俺は、テーブル周りに散乱しているアイテムを見て、ふと思い出した。

「ミリアー。ちょっと聞きたいんだけど」

『お帰りなさいませ』

う……お帰りって言ってもらえるのが嬉しい。AIだって分かっててもグッときちゃうあたり、俺は精神的にヤバくなってきてるかもしれん。

「ただいま! ってか今日、ダンジョンに詳しそうな人に聞いたんだけどさ。レベルが1日で10上がったりするのって、あり得ないのかな?」

『いいえ。あり得ます。現に景虎様は、レベル4からレベル13に上昇しており、レベル14も目前でした』

「でも、一階フロアをうろつているだけじゃ、とても無理だって話だったぜ?」

『本サブスクでは、経験値ボーナスも特典として追加しています。恐らくはサブスク未加入の探索者でしょう』

「え? 経験値ボーナス? それって初耳だけど」

そんなボーナスまで付いてんの? サブスクヤバくね?

『はい。まだお伝えしておりませんでしたが』

「なんかどんどん追加されてる気がするなぁ。本当に今月無料なの?」

『はい。当月分は無料となり、来月以降も三千円より頂くことはございません』

ビックリするくらいサービスが良い。ってか、知らなかったのマジで損してたわ。

「すげえ! ってか今転がってるアイテムなんだけど」

驚いてばかりだったけど、そろそろこのアイテム達を片付けないと。なんか見たことないものばっかりだけど。