軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最速でレベルアップできるようサポートします

言葉を発したかはともかくとして、こいつは化け物だ。

ジャーマは全身から猛烈な黒煙を放出させながら、あらゆる方角に拡散ブレスを吐き出していく。

(ん? もしかして……)

実はいけるかも、と思った俺は盾でそれを防いでみた。意外となんてことなかった。

でもこの黒い煙はなんだろ。どんどん出してるけど、なんかヤバくない?

『闇竜の呪煙が発動しました。一定範囲に猛毒を振り撒いたまま、徐々に進んでいきます』

「どこまで行く感じ?」

『この魔力量を測定する限り、地上まで進みます』

「え? それってヤバくね?」

『ダンジョンの周囲まで進行後、しばらく経つと無害な煙に変化します。今ダンジョンに挑戦している方は避難するべきです。また、ダンジョン周辺にいる方々も避難させる必要があります』

あの黒い煙、確かに毒々しい奇妙な色が混ざってる。しかもちょっとずつ、上じゃなくて前に進んでいるのも意味が分からない。

直後、闇竜が拡散していたブレスを一つにまとめ、フロアを横なぎにするように大きく顔を動かした。

「おわっと!」

でも盾で防ぎきれる。予想していたのと違うな。さっとあの竜をやっつけられたらいいんだけど。

でも、なんか体力が回復しているような感じもする。多分すぐには倒せないだろう。

「じゃあ、みんなで逃げるしかないか。それと配信観てくれてるみんな! この話を拡散してくれ。早く広めて犠牲者が出ないようにしたい。とにかく俺は氷堂さん達と一緒に、」

「逃げるのか、人間」

ん? ジャーマがこっちを向いてなんか喋った! やっぱ話せるじゃん!

「この先にはまだ九人の人間がいる。お前が助けなければ、その九人は俺が食う。助けられるのはお前しかいない……後悔したくなければ……進め」

それだけ言い残し、奴はまた黒い煙をブッパしながら消えていった。

関係ないけど渋い声してる。ベテラン声優みたい。

「喧嘩売られてるみたいじゃねえか」

イラっときたけど、どうっすかな。確かに見殺しっていうか、このままあいつに探索者を殺されたら……。いや、まずは氷堂さんたちの安否が優先するか。

すぐにフロアの真ん中に来てみたけど、さっきのブレスで地面が捲れ上がってて、俺はめっちゃ高い位置にいるような感じだ。

後ろを見ると、黒くて不気味な煙が真っ直ぐにこっちにやってきてる。煙の動きじゃないっていうか、意思がありそうで怖い。

「剣とか魔法でなんとかなできないか?」

『半分は霊的な力を含んだスキルとなりますので、消してもすぐに戻ります』

げ……なんだよそれチートじゃん。

「景虎さん!」

黒い煙とは別の、ブレスによる煙にむせりながら、葵ちゃんが姿を見せた。

「虎ー! なんかヤバいんだけど!?」

埃にゴホゴホ言いながら、次に出てきたのは玲奈だ。最後に姿を見せた氷堂さんは、黒い煙を見つめて深刻な顔になってる。

「景虎君。すぐに君の視聴者と思われる人達からコメントが来たよ。どうやら避難しなくてはいけないようだね」

「はい! ただ、この奥にまだ探索者がいるんで。どうにかして」

「救いに行こうとしたら、君とて助からない」

ドキッとするほど冷静な声で、氷堂さんは言った。

「虎、このままじゃ危ないって。あたし達だけじゃどうにもならないっしょ。だから逃げよ!」

「は!? か、景虎さん! 後ろ!」

ん?

気になって振り向いてみると、黒い煙の中に普通に入っていた。

「う、うわあ!? 死ぬ、死ぬ!」

『景虎様は耐性がありますので、問題ありません』

「え? 俺平気なの?」

『はい。さらにメタルクリスタルアーマーの特殊効果もあり、毒を完全に無力化しています』

完全にって……めちゃくちゃ便利な防具じゃん。まるで今回のダンジョン特化というか、便利な物が揃いまくってるな。

じゃあいいか。

「俺、ちょっと行ってきます。とりあえず、このまま帰ると見殺しにしてるみたいで嫌なんで」

「ちょ、ちょっと待った! 虎!」

前に出ようとした玲奈を、無言で氷堂さんが腕を掴んで止めていた。

「景虎さん……」

なんか悲しい目で葵ちゃんが見上げてる。

「景虎君。君は確かに強い。僕が予想していたよりもずっとだ。だが、それでもあのジャーマを倒すのは不可能だと思う。ここから下の層に行けば、奴はさらに力を発揮できる。ソロでは無理だよ」

そっか。さっきよりも強くなるってわけか。でも、今の感じなら行けそうな気がする。

それと……ちょっとだけ、今はアホなことを言ってみたい。

こちらを見上げてるみんなを不安にさせたくなくて、なんとか笑顔を作った。

「大丈夫ですよ。倒さなくても、みんなを助けて帰ってくればいいだけなんで。上で待っててください。それに」

俺はゴーグルを指さして、今度は本当にみんなに笑いかける。

「俺にはミリアがいるんで」

最後にそれだけ告げた後、手を振ってみんなから離れた。

「虎ー! 虎ぁ!」

「玲奈さん!」

「……二人とも、行こう」

玲奈の必死な叫びが背中に刺さるようだった。葵ちゃんが止めてたのかな。氷堂さんは俺の意思を汲んでくれたっぽい。

さっきジャーマが消えた先の通路に進んでみると、これがもう臭いというか、けむいというか。まあ当たり前なんだけど。

『……景虎様』

おや、なんかやけにミリアの声が湿った感じになってる気がする。いや、煙のせいでゴーグルの音声にも影響出てるのかも。

「頼りにしてるぜ、ミリア。ああそれと! 配信観てくれてるみんなも!」

『……はい』

:……マジで行くんか

:超危ないことになってるけど、探索者ってこうなんだよな

:応援してるよ、カゲっち!

:今からでも引き返そうよ

:大変なことになってきたわ

:ってか、この黒い煙……すげー不気味

:本当に大丈夫なんですか

:俺たちもサポートするぞ!

:行けええええええ!

:ミリアちゃん、なんか感動してない?

:やめたほうがいい。相手がやばすぎる

:ジャーマが喋るなんて……

:命知らずなところが、なんか初期の探索者感があって推せる

:さっきからAIの様子がおかしい

:ソロで深淵層に向かってるって、これもかなりのチャレンジだよな

:ど、同接が……同接が……

:ミリアちゃんどした?

:ってか、この先って深淵層じゃね?

:あの竜ボコっちゃおうよ

:いよいよクライマックスって感じか!

:ソロでジャーマを討伐だ!

:逃げろってば!

:俺は止めないぞ。ここまできたらやってくれ

:がんばれよぉーーーー! カゲトラーーーー!

おおお、すげー反響。ってか、もう怖くて同接数とか知りたくないわ。

「しかし闇竜は、この先に進むともっと強くなるのかよ。厄介だな」

『問題ありません。景虎様はジャーマに辿り着くまでに、さらに強くなっていることでしょう』

「え? ここから?」

『はい、お任せください。最速でレベルアップできるようサポートします』

なんか急に張り切った声になってない?

こんな場所で最速レベルアップとか、以前だったら信じることができなかったと思う。でも今は信じられる。

俺はちょっと苦笑いしながらも、サブスクに入って本当に良かったと思った。