軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ガチへーき? じゃ、じゃーいくよ!

さらに下の階に辿り着いた俺たちは、普通のダンジョンらしい通路をただ進んでいた。

でも氷堂さんの話じゃ、もうじき深層の最下層に到達するらしい。つまりモンスターもかなり危険なのが出てくるということ。

「ね、ね! 観てよ。あたしの配信、初めて同接五十!」

「お、同接五十人かー」

「ちげーし! 五十万!」

どうやら玲奈の配信も同接が上がってるみたいだ。最近感覚が麻痺してるけど、五十万はめっちゃ多いよな。

玲奈は視聴者のみんなに軽快に挨拶をしてた。俺も暇を見つけてはコメント欄に応えてるんだけど、流れが速すぎてあんまできてない。

「妙だな。霧が出ている。このような情報はなかったはずだが」

俺と一緒に先頭を歩く氷堂さんが、入り組んだ通路内に起きた変化に警戒してた。

「なんか見えづらくてやり難いっすね」

なんでこんなところに霧が出るのか。迷子になりそうで嫌だわ。

「大きな部屋があるみたいです。あそこ!」

葵ちゃんが指差した先に、どうやら階段へと続く大部屋があった。でも、こういうところにヤバいモンスターがいるんだよなぁ。

『闇竜の気配があります』

「え? マジかよ。でもいないな……」

この大部屋は今までのよりは若干小さく、あんな化け物がいたら速攻で分かる。でも、特にそれっぽいやつはいないなぁ。

そういえばけっこうデカい鳥のモンスターや、牛っぽいモンスターならいるんだけど。

『隠れているようです。この霧ですが、恐らくはデススモークと思われます』

「デス……スモーク?」

聞いたことのない単語が出てきて、俺は首を傾げる。

「あ、ああ!」

すると、一番後ろにいた葵ちゃんが怯えた声をあげ、ジリジリと後ろに下がっていた。

「葵ちゃん、どうした?」

「あ、有栖川さん……」

え? 今俺を見て、有栖川って言わなかった?

ふと後ろを見てみるが、なんかぼーっとしている氷堂さんと玲奈がいるだけだ。二人も心なしか、様子がおかしいような。

『デススモークは凶化したことで、幻覚スキルを覚えたようです。今葵さんの目には、景虎様が別の方に見えているのでしょう』

「ええ!? マジかよ、やばくね。ちょ、葵ちゃん」

「きゃあ! 来ないで!」

慌てた俺が近づくと、葵ちゃんは後ろを向いて逃げ出そうとした。

「なんで来るんだよ! こいつ!」

「……」

今度は背後で叫ぶ声がしたので振り向いてみると、なんと玲奈が氷堂さんに魔法を放とうとしてる。

「景虎君、いるか!」

「います! いますよ!」

「……ダメか。いや、あっちか!」

なんだろう。氷堂さんは汗を浮かべながら玲奈から距離をとって、俺を探しているみたいだ。

『デススモークの本体を叩きましょう。火属性の攻撃が有効です』

「あ、でも葵ちゃんが!」

俺は逃げ出す葵ちゃんをどうにか捕まえ、フロアに戻してきたんだけど。ポカポカ杖で叩かれる。

「やめて! 触らないで!」

「なんか俺、めっちゃ嫌われてんなぁ」

『有栖川という方が嫌われているようです。トラウマになっている存在が自分を倒そうとする、またはそれに近い恐ろしいことをされる幻覚を見ているのでしょう』

:有栖川って、あれか

:ノエルの幻覚見ちゃってるのか葵ちゃん!

:葵ちゃん葵ちゃん葵ちゃん葵ちゃん

:助けなきゃ!

:叩かれてるカゲ君が、ちょっと羨ましい

:葵ちゃんに叩かれて死ぬなら本望

:↑アホなこと言ってる場合か

冷静な分析を続けるミリアの話を聞いていると、突然額当てから緑色の光が発せられた。

すると、バタバタ暴れていた葵ちゃんが大人しくなり、目をパチクリさせていた。

「……え、え? 景虎さん?」

「お! 正気に戻ったのか!」

今度は額当ての輝きが氷堂さんとギャルの元へ。二人もまた、我に返ったみたいでキョロキョロしてる。

「やはり幻覚だったか」

「あ、あれ!? なんであたし……?」

『状態異常を解除しました』

そういえば以前あったかい風を吹かせてくれたけど、サブスクのサービスって半端ないな。こんなサービスもあるのか。

いやでも、冷静に考えてみたらおかしいような……とか思ったけど、今はあまり考えている余裕がない。

『大部屋の霧の中に本体がいます』

「ちょっと探すのむずくね? あ、そうだ!」

俺は部屋の真ん中あたりに立つと、玲奈に向かって手を振った。

「おーい玲奈! 俺に向かってフレアを撃ってくれー」

「え、ちょ、マジ? マジ言ってんの?」

「ああ! 頼む!」

「ガチへーき? じゃ、じゃーいくよ!」

やっぱり長い付き合いというか、うちのギャルが躊躇っていたのは少しの間だけだった。

それから数秒とかからず、猛烈な爆発魔法が真っ直ぐに飛んでくる。俺はすぐにスキル【回転斬り】を使用した。

そしてちょうど魔法が来た瞬間に、腕に装着していたラウンドシールドを当て、魔法をあさっての方向へ弾き飛ばす。

すると、ドカーンといういい感じの音が響き渡った。

「この調子で撃ちまくってくれー」

「な、なんだと!」

「えええ! 景虎さん」

「おもしれー! じゃガチブッパすんね!」

氷堂さんと葵ちゃんが、「おいおいこいつ嘘だろ」と言わんばかりの反応をするなか、玲奈だけは容赦なくフレアを連発してくる。

その魔法を、三人には当たらないように大部屋のあらゆるところにシールドで弾きまくる。

フロアの中はさながら戦場というか、もう崩壊しないか心配になくらい爆発しまくり。

:こんな使い方あったんか

:うわあああー目が回るううう!

:カゲっち、もうちょいゆっくり回ってくれない?

:よく魔法を弾いて乱射するなんてこと思いつくなw

:ってか、このテクニックは何気に凄くね?

:マジでスキルの使い方うますぎ

:おおおお!

:めっちゃドッカンドッカンいってる

:なんか楽しい

:アトラクション乗ってるみたい

:こりゃ霧型モンスターにとっちゃ悪夢だろ

:どんどん壊されていくな

:俺たちの常識まで破壊されちゃう

:これでもカゲトラは本気じゃない気がする

:こんな応用誰も考えないでしょ笑

:すげえ……こんな回転技初めてみました!

:もう何があっても驚かないよ

:ひえええええ

:あ! あれ本体じゃね!?

そんな爆発だらけの場所で、一つの霧が悶えながらこちらに迫ってきた。狐のような目と、裂けた口が印象的なモンスターだ。

『デススモークの本体です』

「おっけー!」

スパン! と剣で一撃見舞ったところで、モンスターはしおしおと消えていった。

『ジャーマが来ます』

ここでミリアが鋭い声を発する。気が抜けかけていた俺は、ハッとして周囲を見渡した。

すると大きな牛のモンスターが飛び込んできたので、かわしながら剣で切り倒す。

『上から来ます』

「うえ!?」

ふと天井をみると、さっきの鳥が急降下してきた。だが少しずつ鳥の全身が大きく、デカく黒々としたものに変わっていく。

『鳥に化けていたようです』

「闇竜って、そんなこともできるのかよ」

奴は急降下し姿を戻しながら、氷堂さん達に爆発魔法を放っていった。威力的にみんなを倒せるものではないだろうが、しばらくは合流できない。

狙いは完全に俺ってことか。そういえばさっき吠えられていたような。

奴にどれだけ嫌われたのか知らないが、こうなった以上はやるしかない。

俺は剣を構え、急降下してくるモンスターに向かっていった。