軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

私が入ってるギルドを紹介しましょうか

なんだかんだ治療してもらうことになったので、ひとまず近くにあった公園に向かった。

驚いたのは、その治療ってやつの時間がめちゃくちゃ早かったこと。だって一分もしないうちに、火傷が跡も残らないで完治しちゃったんだからビックリだわ。

ベンチに並んで座っていたんだが、俺は驚きのあまり空いた口が塞がらなかった。

白くて小さな手から、温かい新緑色の光が発せられると、火傷なんてすぐに消えていった。心なしか、以前より手の調子が良くなったかも。

「すげえ! こんなにあっさり治せるもんなの?」

「えへへ。魔法だけは、ちょっとだけ自信があるんです」

その後も少し話したんだけど、どうやら彼女は普段から友達やギルドの仲間とダンジョンに潜っているとか。

そう考えると、断然俺よりもダンジョン探索は先輩なんだなぁ。

「いいなー! 俺もダンジョン潜れる仲間欲しいわ。いや、それより早く就職しないと」

「え? 今お仕事されてないんですか?」

「あ、あーそう。プー太郎になっちゃったんだよ。ついこの前会社クビになっちゃってさ」

「ええ……!」

なんか余計な話題になっちまった。言わんでもいいことを言っちゃうのが俺の悪い癖だ。

『このままダンジョン探索と配信を続けていけば、十分に生活することが可能です』

おっと。またしても突然のAIミリアカットイン。

「いやー厳しいだろ。視聴回数二桁、とかで頑張っている探索者いっぱい見たし。ちなみに俺の前回の視聴回数は四回だぞ」

自分で言ってて悲しい!

『今回の探索で獲得した報酬の中でも、売却すればなかなかの値段になるものがあります。上層を回るだけでも、生活費は十分に稼ぐことが可能です』

「え、そうなの!?」

「あ、あの……」

ミリアの説明に衝撃を受けていると、おとなしめな女の子が質問してきた。

「すごく……変わったAIさんですね。まるで生きてるみたい」

「ああ、それそれ! 俺もなんか普通に人と喋ってる感じなんだよ。最近のAIってマジ凄いな。サブスク超お得だわ」

「気になっていたんですけど、サブスクってなんですか?」

お? けっこうダンジョン潜ってるみたいだけど、サブスクは知らなかったのか。

俺はとりあえずサブスクについて、今知っている限りのことを説明してみた。すると、さっきまで物静かだった子が、徐々に「え?」とか「??」みたいなリアクションが増えてくる。

「初耳です。私、探索機材でそんな便利な機能があるなんて、知りませんでした!」

「そうなんだよ。俺も知らなくってさ、毎日ビビってる」

「ログインボーナスって、私一度も受け取ったことないです」

「あ、そうなんだ」

「召喚カードのガチャも、初めて聞きました」

「へー」

「スキップチケット? とかボックスって、すっごい便利ですね! でも私、それも初耳です」

「マジか! 初耳多すぎるな!」

この子、それなりに探索してるみたいだけど。ここまで全部初耳だったとかある?

『本サブスクは、世間ではなかなか出回っておりません。本商品は、数量限定発売となります』

「あ、そっかー! じゃあ知ってる人が少ないのも無理ないか」

そういうのもあるよな、と納得した俺だったが、女の子はなんかポカンとした顔だ。

『とにかく、景虎様は現在の生活を継続させたい場合には、定期的にダンジョンに潜る必要があると考えます』

「でもなー。やっぱソロじゃ限界あるじゃん?」

「あの……良かったら、私が入ってるギルドを紹介しましょうか。招待制のところなんです」

「え、本当に?」

女の子の提案は、俺にとって願ってもないものだった。ギルドっていうのは誰でも入れるところが一般的だけど、本当に需要が高いのは招待制らしい。

ダンジョン探索っていうのは命の危険がつきもので、そうなると当然同行するメンバーも質を問われる。

さらに危険人物と組むことは絶対に避けたいわけで、続けるほどに安心してメンバーを組む環境を欲する人が多くなる。

だからギルドはある程度出入りが自由なところよりも、紹介制のところを探す人が増えている。

人脈に乏しいと招待制ギルドなんて当然入れず、一般のギルドで声かけする以外には、ほとんどメンバーを組めない。

……まあ俺がぼっちだったのは、ただ単に話しかけるのが苦手だったんだけど。

「はいっ! それにもしお邪魔じゃなかったら、私もご一緒できます」

「え!? いいのか。俺全然初心者だぜ?」

「もちろんです。じゃあ、良かったら連絡先の交換をお願いしても、」

『連絡先は必要ありません』

「うお!? どうした急に?」

ここでまたしてもAIからアドバイスが。突然大きな声がしたんで、隣の女子がビクッとしてる。

『ギルドで必要な会話をすれば十分と思われます』

「まあ、言われればそうか」

「で、でも……紹介する時、LINで繋がってることも必要なんです」

「あ、じゃあ交換しないとダメだわ。お願いしていい?」

「はい!」

『………』

AIが急に静かになったのが気になったけど、とりあえず連絡先の交換は終了した。

「あおいちゃん、で合ってる?」

「合ってます!」

「ありがとう! 登録した」

ってか、学生の子と連絡先を交換するのって、何気に初めてかもしれん。親戚の子供達とは交換してるけど。

その後、少し雑談をしているとあおいちゃんの携帯が鳴り響いた。彼女は戸惑いつつ、真剣な顔で応対している。

電話が終わると、ちょっとだけ気の抜けた顔になっていた。

「すみません。マネージャーの人から電話があって、ここで失礼します」

「え? あ、はい」

マネージャー? よく分からんが、探索配信の事務所に所属してるのかな。

「助けていただいて、ありがとうございました! えっと、ギルドでもよろしくお願いしますっ」

「こちらこそよろしくー」

去り際のくるっと振り向いての笑顔が眩しすぎる。青春っていいなぁと柄にもなく思ってしまう。もう気分はおっさんです。

話は逸れたが、とにかくこれで俺はソロから抜けられる可能性が出てきた。

いや、その前に就職しなきゃ。ちょっとだけだが、生活が少しずつ前向きにはなってるような気がする。

次の日は面接ラッシュの予定。疲れている場合じゃないと、家に帰ってからも準備に大忙しだった。