軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第70話 英雄

『無事に出てきたぞ!!』

『本当だ!! 空鳴もいるぞ!! 全員無事だ!!』

『すげぇ!!』

視界が切り替わった瞬間、周囲からどよめきと歓声が起きる。

「えっと、これはどういうことですか……?」

ダンジョンの外には、沢山の武装した冒険者たちが集まっていた。

「アイリスさん、よくご無事で」

「ソルトさん?」

人垣を割るようにして受付嬢のソルトさんが歩いて私の前にやってくる。

「よく空鳴を連れ戻してくれました。本当にありがとうございます」

「いえ、どういたしまして」

真正面から感謝されることにまだ慣れていないのでむず痒い。

「彼らは、空鳴を心配していた人や助けにいこうとしていて集まった人たちです」

「助けに……ですか?」

「はい。自分たちも助けに行くと言って聞かない人たちが居まして……しかし、彼らではすぐ戻ってくるか、全滅するのが見えていたので止めていたんです」

空鳴はBランクの冒険者パーティ。

バルドスさんたちは人柄もいいし、慕っている人たちも沢山いたはず。

私が手を挙げた時にいなかった人たちが話を聞いて、居ても立っても居られずにダンジョンに入ろうとしたに違いない。

もしかしたら、既に入って連れ戻された人たちもいるのかもね。

「空鳴の皆さんも誰一人欠けることなく戻って来られたようで何よりです」

「あぁ、アイリスの嬢ちゃんがいなかったら今頃モンスターの腹の中だったぜ」

「ほんとほんと。モンスターに襲われなかったとしても中で死んでいたでしょうね」

空鳴が口々に褒めるものだから、皆が私に視線を向けてきた。

「嬢ちゃんが助けてくれたのか? ありがとな!!」

「空鳴が助かったのはあんたのおかげだ!!」

「本当に連れて帰ってくるなんて、あんたすげぇよ!!」

そして、私に感謝の言葉のシャワーを浴びせてくる。彼らの中には空鳴が無事に帰ってきたことに涙を流す人たちもいた。

空鳴の人たちがそれだけ人に好かれていたってことだよね。そんな人たち死に別れすることにならなくて本当に良かった。

「それと、あなた方は入り口から出てくるのはなく、いきなりここに現れました。つまり、モスマンダンジョンを踏破された、ということですね?」

ソルトさんが冷静な態度で問いかける。

「あぁ。だが、俺たちは一切関与していていない。それどころか、ほとんどおんぶにだっこの状態だった。踏破したのはアイリスただ一人だ。現に踏破者の証はアイリスしか持っていない」

「……本当ですか?」

ソルトさんが信じられないという表情で私に視線を向けた。

「まぁ、そうですね。アークも一緒ですが」

『うぉおおおおおおおおおおっ!!』

その途端、再び場を怒号のような歓声が響き渡る。

「すげぇ、空鳴を助けたどころか、あの凶悪なダンジョンを攻略してしまうなんて」

「いったい、あの嬢ちゃんは何者だ!?」

「アイリスって呼んでたよな?」

そして、興奮したように私の事を面白おかしく話し始めた。

『アイリス、アイリス、アイリス――』

なぜか私の名前のコールまで始まってしまう。

「ひとまず、ここでは落ち着いて話せそうもありませんね。ギルドに戻りましょう」

「分かりました」

すでにお祭りムードになってしまって収拾がつかなくなってきたので、私たちはギルドへと移動した。

ギルドマスター同席の元、適宜空鳴側の補足を入れながら、私が救出に行った際に起こったことを報告。

「なるほど。そんな罠があったとは……まだまだ知らぬことばかりじゃな」

「はい。アイリスがいなければ私たちは全滅していたでしょう」

私以外の人たちが神妙な顔で頷き合う。

新しい罠があるとなると危険度が高くなる。これからダンジョンに潜る時はより気を付けないといけないよね。

話が一通り終わると、ギルドマスターに声を掛けられた。

「アイリス……じゃったか。此度は本当に助かった。礼を言うぞ。明日には報酬も出す。それまで待ってくれ」

「分かりました」

「それと、踏破者の証を見せてもらえるかの?」

「どうぞ」

ギルドマスターさんにペンダントを外して渡す。

「ふむっ。これは間違いなく踏破者の証じゃな。おめでとう、お主がモスマンダンジョン、最初の踏破者じゃ。これから未来永劫、ここモスマンに名を刻まれることになるじゃろう」

「ありがとうございます」

ギルドマスターさんに改めて言われたけど、相当凄いことなんだよね。

何も状態異常も受けないままダンジョンを下りて、ボスもアークが瞬殺してしまったからあんまり実感がない。

「それでは、俺たちは失礼しますね」

「うむ」

話を終えて、私たちはギルドマスターの部屋を後にする。

「アイリス、この後、付き合えよ」

バルドスさんに突然そんなことを言われた。

「どこにですか?」

「そんなの祝勝会に決まってるじゃねぇか。主役がいないんじゃ、始まらねぇだろ。それに見てみろよ。すでに下で俺たちを待っている奴らがいるみたいだぜ?」

二階の奥のギルドマスターの部屋からロビーが見えるところまでやってくると、下には無数の冒険者たちが集まっていた。

彼らの手にはジョッキが持たれていて、全員が楽しそうに笑っている。

「あっ、主役のご登場だ!!」

「あの子が、空鳴を助けてくれたのね!!」

「ありがとぉおおおおおっ!!」

「空鳴も無事でよかった!!」

彼らは目ざとく私たちの姿を見つけて興奮した様子で叫んだ。

他の人たちも次々と後に続く。

「ほらっ、アイリス、行くわよ」

「えっ!?」

「そうですよ、行きましょ」

「え? え? ちょっと待ってくださいよ」

私はロナさんとリースさんに両脇を抱えられ、あれよあれよという間にギルドに併設された酒場の一番前の席に座らされた。

「空鳴の帰還とアイリス嬢ちゃんのダンジョン踏破を祝して……乾杯!!」

『かんぱぁあああああああああいっ!!』

そして、気づけば大宴会に巻き込まれていた。

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