軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第58話 驚きと驚き

「うむっ、我は満足した」

アークが口元をぺろりと舐めた。

「もうっ、片っ端からスライム食べちゃうんだから。おかげでリュックをいっぱいにするのに時間が掛かったじゃん」

「ふんっ、そんなこと我は知らん」

「都合が悪くなるとこれなんだから。まぁいいや。そろそろ帰るよ」

ダンジョンに入ってからもう結構経つ。

洞窟の中は景色が変わらない。そのため、はっきりとした時間が分からなくなる。ただ、感覚的にもうそろそろ沈むくらいの時間だと思う。

「うむっ、そろそろ腹が空いたところだったのだ。ちょうどいい」

「ついさっきまであんなにスライム食べてたよね」

「スライムなど食べたうちに入らん」

「呆れた」

今まで散々アシッドスライムを食べていたというのに、まだ食べるつもりらしい。本当に食いしん坊だ。

私は、浄化のオーブで体を綺麗にしてから、アシッドスライムの核がパンパンに入ったリュックを背負って外に出る。

外はもうすぐ日が沈みそうな時間帯だった。予想通り。

ダンジョンの中にいても、大体どのくらい時間が経ったのか分かったんだよね。もしかしたら、これも超健康の恩恵なのかもしれない。

「お疲れ様でーす!!」

「わふっ」

私たちは挨拶をして門番さんの前を元気に通り過ぎていく。

「お、おいっ、ちょっと待て!!」

「え、何か?」

焦った様子で声を掛けられ、門番の方を振り返った。

「も、もしかしてその中身は今日の成果か?」

「はい、そうです!! 沢山アイテムを手に入れました!!」

呆然とする門番さんに、これ見よがしに見せつけながらリュックを叩いてみせる。

「初めてなのに、いったいどうして……」

「だから言ったじゃないですか、大丈夫だって。それじゃ!!」

「お、おいっ!!」

私はそれだけ言うと、追いすがる声を無視して歩き出した。

「ふふふふっ、門番さん、めちゃくちゃ驚いていたね」

「あの顔は滑稽であったな」

アークと小声で目論見が成功したことを喜びながらギルドを目指す。

「核がいくらになるか楽しみだなぁ」

「腹が減ったから早くしろよ」

「分かってるって」

理由は、アシッドスライムの核を買い取ってもらうため。アークがいい値段になるって言ってたからワクワクしてくる。

「すみません」

ギルドの中に入って空いていた受付嬢さんに声を掛けた。

「こんにちは。ようこそいらっしゃいました。本日はどのようなご用件ですか?」

「アシッドスライムの核の買取をお願いしたいんですけど」

「え? 本当ですか?」

「はい」

「助かります。アシッドスライムの核って割と色々なことに使えるんですけど、なかなかとってきてくれる人がいなくて……それでは、出してもらえますか?」

「分かりました」

受付嬢さんは困り笑顔で応える。

耐性が付与された装備を持つ冒険者じゃない限り、ほとんど旨味がないモンスターだからね。誰も持ってきてくれないんだろうな。

取ってきた核で足りるといいんだけど。

ドンッ!!

私はそういう効果音がしそうな勢いで、リュックをカウンターの上に置いた。

「えっと……核だけ出してもらえればいいんですが……」

「はい。この中身全部アシッドスライムの核です」

「え? えぇえええええっ!?」

返事を聞いた受付嬢さんが目の玉が飛び出そうなくらい驚いて叫ぶ。

「なんだなんだ?」

「いったい、どうしたんだ?」

「何があった?」

冒険者たちの視線が一気にこっちに集まる。

失態に気づいた受付嬢さんが口を押えた。

「コ、コホンッ――失礼しました」

「いえ、大丈夫ですよ」

これはよくある受付嬢が情報を漏らしてしまうイベント。

履修済みなので驚いたりしない。

「そ、それでは鑑定させていただきますね」

「よろしくお願いします」

「え、なにこれ……」

受付嬢さんが体裁を取り繕ってリュックを開け、中からアシッドスライムの核を取り出した瞬間、呆然となった。

「どうかしましたか?」

「どうかしましたか、じゃないですよ!? なんで核が無傷なんですか!?」

不安になって尋ねたら、受付嬢さんが急にカウンターから身を乗り出してきた。

「そ、そりゃあ、まぁ、普通に中からそのまま取り出したからですよ?」

「いったいどうやって?」

「手を突っ込んで、ですけど……」

その勢いに押されながらも、見えないスライムに手を突っ込むような動作をしながら答える。

「いやいや、そんなことしたら手溶けちゃいますから!!」

「私の体は頑丈なのでアシッドスライムの酸くらいでは溶けないんです」

「そんなバカな!!」

本当のことを言ったんだけど、信じてもらえない。どうしたらいいかな。まさかこんなに大ごとになるとは思わなかった……。

「ねぇ、何を騒いでいるの?」

「あっ、せ、先輩!! これは……」

そう思っていると、騒ぎを聞きつけた凛とした佇まいの受付嬢さんがやってきた。キャリアウーマンって感じで、いかにも仕事ができそうな雰囲気が出ている。

受付嬢さんの様子から判断すると、この人はキャリアのある先輩みたい。

「いいから。ギルド中に聞こえてるわよ? 声量を落として。何があったの?」

「えっと、この方がアシッドスライムの核を売ってくれるというので、実物を見させていただいたんですが、核が傷ひとつない、完全な無傷だったんです」

「なるほど……そういうことね。いいわ、この人は私が対応するから」

「わ、分かりました」

最初に相手をしてくれた受付嬢さんが落ち込んだ様子で席に座り直す。

「すみません、お荷物を持ってついてきていただけますか?」

「分かりました」

私はキャリアウーマンな受付嬢さんの後をついていった。