軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第48話 一度あることは二度ある

「う、うーんっ!!」

外から差し込む日差しで目を覚ます。

着替えをして外に向かうと、すっかり日が昇っていた。疲れとかないはずだけど、結構寝ちゃったみたい。

『おいっ、随分ゆっくりではないか』

『あっ、おはよう、アーク』

外ではアークが待ち構えていた。

他の人たちの姿がどこにも見当たらない。先に出発しちゃったみたいだね。

『うむ、おはよう――ってそうではない。我らも早く出かけるぞ』

『何言ってるの。急ぐ旅じゃないだからゆっくりでもいいでしょ。朝ごはん食べよ』

『……ふんっ、仕方あるまい』

不機嫌なアーク。

だけど、食事の誘惑には勝てなかったのか、大人しく炊事場近くの共有スペースで朝食を食べた。

割と保存食も美味しいので助かる。

そうしてやっと、私たちは関所を旅立った。

ほどなくして峠道の看板が見えてくる。

前には、相当険しい山が連なっているの見える。あれだけの山を越えるのは普通ならものすごく大変だと思う。

「ふんふんふーん♪」

『ご機嫌だな』

「だって、山道でも全然疲れないからね」

でも、私にはあまり関係なかった。

アークと一緒にスキップしながら山道をスイスイ登っていく。

やっぱり、こうやって体を動かせるのは嬉しい。

数時間ほど登ると、先に出発した人たちの背中が見えてきた。皆、結構疲れてる顔をしてる。

「失礼しまーす」

邪魔にならないように声掛けして、彼らの横を颯爽と追い越していく。

そして気づけば、見晴らしのいい場所にたどり着いた。

「おお~!!」

これが山の上から見える景色。

自然の雄大さを感じずにはいられない大パノラマ。

下に関所やバンドールの街が見える。

「綺麗だな……」

初めて見る風景に思わず口から言葉が零れた。

「ここは少し怖いね」

さらに先に進むと、馬車一台が結構ギリギリ通れそうな道が姿を現す。すぐ横が断崖絶壁で、ちょっとでも外れたら真っ逆さま。

崖下を覗き込むと、下に川が流れているのが見えた。

「どいたどいた!!」

立ち止まっていたら、急いだ様子の馬車が通りがかる。

こんな道を急ぐなんて危ないなぁ。

――ドンッ

なんて思っていると、すれ違いざまに馬車の一部が私の体にぶつかった。

「わわっ?」

必死に体勢を立て直そうとする。

でも、傾いた重心をもうどうすることはできなくて、私はそのまま前へと倒れてしまった。

「おいっ、人間!!」

「わぁ~」

人前で話さないようにしているアークの声が聞こえたと思ったら、私は崖の下に真っ逆さまに落ちていく。

この前崖から落とされたばかりなのに、また落ちるなんて予想もしてなかった。

「人間、本当に世話が焼けるな!!」

声が聞こえた方を見ると、アークが崖を駆け下りて私を追ってきていた。

とても焦っているように見える。

「あ、アーク。助けに来てくれたの?」

「何を暢気なことを言ってるのだ!! ちょっと待ってろ。すぐに助ける!!」

もしかして忘れてるのかな?

「別に焦らなくてもいいのに。言ったじゃん、私は崖から落とされたって。だから、助けなくても大丈夫だよ」

「むっ」

「まぁ、助けてくれてもいいんだけどね?」

ちらっ、ちらっ。

「ふんっ、お前など知らん!!」

期待する視線を送ったけど、ダメだった。

アークは折角助けに来たのに、助けなくていいなんて言われたもんだから、不機嫌になってしまった。

「あぁ~、あんなこと言わなきゃよかった」

多分大丈夫だけど、絶対ってわけじゃない。だから、何も言わずに助けてもらえばよかった。何をやってるんだ、私は。

そのまま私は落ちていく。

下に川が流れてるけど、幸いそばに陸地がある。空気抵抗を利用して移動し、足から着地するつもりで体勢を変えた。

どんどん地面が近づいてきて――

――ドンッ

遂に地面に着地!!

「……」

でも、衝撃が伝わってきただけで痛くない。足やら手やらを動かしてみたけど、骨折したり、傷を負ってる部分もない。

とりあえず大丈夫そう。やっぱり超健康はチートすぎるね!!

「お前は本当に人間か?」

「そうだよ」

アークが私の姿を見て呆れた顔をしている。

"超健康"スキルが、こんなにチートだなんて知らなかったんだからしょうがない。

「助けに来てくれたのに、ごめんね」

「ふんっ」

許してもらおうとアークに駆け寄ってワシャワシャしても、そっぽを向いてしまった。

すっかり機嫌を損ねてしまったな。

「美味しい料理またつけてあげるから。ね?」

こういう時は食べ物で吊るしかない。

「……どうしても、というのなら許してやらんこともない」

「どうしても!! ごめん、もうあんなこと言わないから許してください!!」

「ふんっ、仕方ない奴だ」

さっきまでの頑なな態度は大分軟化した。

ふぅっ、機嫌を直してくれてよかった。

できるだけ折角の厚意を否定するようなことを言わないように気をつけよう。

「心配してくれてありがとね。嬉しかったよ」

「し、心配などしていない!! 約束は忘れるな!!」

ギュッと抱きしめたら、アークは私を振り払って逃げていく。

「あっ、ちょっと待ってよ!!」

私はアークの後を追った。

「どこに向かってるの?」

「元々進んでいた方角だ」

「そっか、なるほどね」

そばを流れている川に沿って進んでいく。

「あれ?」

途中で、いかにも怪しい横穴を見つけた。

「どうした?」

それにこの匂いは……

「こっちに行ってみよ」

「お、おい、待て」

私は嗅いだことのある匂いにつられて洞窟の中に足を踏み入れる。

しばらく進んでいくと、奥に眩い光が見えてきた。

洞窟を潜り抜ける。

「わぁあああああっ」

「これは……」

そこには、色とりどりの花や草が一面に茂る空間が広がっていた。