軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第43話 念願の

「ほうっ、そんなことになっていたのか」

「はい」

街に帰ってきた私は、ギルドマスターさんに依頼の報告を済ませる。

「まさか、そこまでやってくれるたぁ思ってなかったぜ。ありがとな」

ギルドマスターさんは驚き半分、感心半分といった様子だ。

「いえ、私は自分がやりたいことをやっただけですから」

「よし、文句なしに依頼は完了だ。お疲れ様。マリンダも助かった」

「いや、アタイは何にもしてないよ」

マリンダさんは苦笑しながら肩を竦める。

「あっ、それと、一応報告ですが、私は少ししたら、この街を出ようと思います」

念のため、ギルドマスターさんにも伝えておく。

ホウレンソウは大事だってばっちゃが言ってた。

「なんだと!? どうしてだ?」

「もっと世界を見て回りたいと思いまして……」

ギルドマスターさんは私がしばらくはここにいると思ってたみたい。少し申し訳ない気持ちになる。

「そうか……優秀な冒険者で薬師の君には街にいて欲しかったのだが、仕方ないな」

「すみません」

「いーや、気にするな。冒険者は自由だからな。自分の行きたいところに行ったらいいさ。たまには帰ってきてくれよ」

「はい、勿論です」

私たちはギルドマスターさんの部屋を後にした。

「マリンダさん、付き添いありがとうございました。とても勉強になりました」

「いんや、気にしなさんな。これは仕事だからね」

「それじゃあ、私はこれで。失礼します」

「あぁ、またな」

帰ってきたのは少し日が傾いた頃。報告をしていたら、もう夕暮れ。

マリンダさんに別れを告げ、私は一度宿に戻る。

『約束は忘れておらんだろうな?』

『はいはい、覚えてるよ』

アークには頑張ってもらったので、対価を払わなきゃね。

宿に帰ったら、うっかり宿代を払っていた日にちを過ぎていたんだけど、店主さんの計らいでそのままにしていてくれた。

追加のお代を払ってホッと安心する。

アンナさんにこれでもかと、アーク用の料理を頼み、自分の分を食べた後、私は部屋で黙々と回復ポーションを調合して、キリの良い所でベッドに潜った。

翌日。

「そうか、行ってしまうのか……」

「はい」

お爺さん――バッツさんのところに薬を売りに行き、旅立つことを伝える。

お爺さんも残念そうな顔をしていた。

どこでも惜しんでもらえるなんて、申し訳ない反面、自分が認められていると実感できて嬉しいと思うのは不謹慎かな。

「それじゃあ、少し色を付けて買い取らせてもらわんとな」

「いえいえ、普通で大丈夫ですって!!」

「遠慮するな。嬢ちゃんには世話になったからな」

お爺さんは、珍しくその仏頂面を大きく綻ばせた。

そんな顔をされたら、断れない。

「これ……間違ってません?」

「いんや? 相場よりほんの少し色を付けたくらいだぞ?」

「マジですか……」

ただ、売却額がとんでもないことになった。

以前は、結局売ろうとして売れなかったからどのくらいになるか分からなかったんだよね。

魔法薬って恐ろしいほど高い……元実家で毎日タダ働きさせられていたのが、本当にひどい扱いだったのが分かる。

とりあえず、持ち歩くのは怖すぎるので、ギルドの口座に振り込んでもらった。

そして、いよいよ、お待ちかね。雑貨屋さんに向かう。

「こんにちは~」

「おや、あんたかい。マジックバッグ入荷してるよ」

きたぁああああああっ!!

入店するなり、お婆さんの言葉にテンションが上がる。

「それじゃあ、マジックバッグもらえますか?」

「それがすまないんだけど――」

ウキウキした気分で返事をしたら、お婆さんから嫌なフレーズが。

え、もしかして、まさかここでまた……お……預……け?

「サイズが一つ上のマジックバッグが来ちゃったんだけど、それでいいかい? 勿論、値段は据え置きで構わないよ」

「い、いいんですか?」

と、思いきや、別の話だった。

安心すると同時に、お婆さんの言葉の意味を理解したら、驚かずにはいられない。

一個上のバッグってことは金貨三百枚より金貨百枚単位で高いはず。なのに、そのままの値段で手に入るなんて美味しい話があっていいのかな。

「ああっ、構わないよ。入荷できなかったのはこっちの落ち度だし、この街の奴らはお嬢ちゃんに大分世話になってるみたいだからね。色々話は聞いてるよ」

「そ、そんな私は大したことはなにも……」

「自分では大したことをしてないつもりでも、恩を受けた当人はそう思ってないってことさ。素直に受け入れることだね」

「……そう、ですね。分かりました。お言葉に甘えさせていただきます」

自分はできることをしただけだけど、こんな風に返ってくるなんて思わなかった。

見返りを求めていたわけじゃないけど、頑張って良かった。

「はいよ。これがお待ちかねのマジックバッグだ。大事にしておくれ」

「ありがとうございます!!」

お代を払い、私はついにマジックバッグを手に入れた。

見た目はただの肩掛けカバンにしか見えない。

そして、このマジックバッグ。

容量がなんと――幌馬車の荷台二台分もある。一番小さいやつの二倍だ。これだけの容量があれば、大抵の物は入れておける。

本当に値段そのままでよかったのかな?

マリンダさんの教えに従い、すぐに使いそうなものやなくしてはいけない物は、別に分けて持ち歩く。

それから数日、私たちは必要な物を買い込んだり、各所に旅立ちの挨拶をしたりしながら過ごした。

そして、旅立つ前日の夜。

『アーク、起きてる?』

ベッドの中でアークに念話する。

『どうした? 寝れないのか?』

『うん、いよいよ、国を出ると思うとドキドキしちゃって』

私は死んだことになっている。

でも、いざ国境を越えるとなると、止められないかちょっと不安。

『関所などという人間が作ったもの、我なら簡単に飛び越えられる。バレたら、そうやって別の国に行けばいいであろう』

アークはそう言って私の不安を軽くしてくれる。やっぱり優しい。

『そっか、そうだね。ありがと』

『ふんっ』