軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第170話 釣り

「ごちそうさまでした」

「片付けはお任せを」

「ありがとう」

食事を終え、レインが片付けをしてくれる。

レインがいてくれて本当に助かる。

「我は寝る……zzz」

アークはそう言って地面に寝そべり、大きなあくびをした後、昼寝を始めた。

「エア、追いかけっこしよっか」

「ピピィッ」

「じゃあ、私が追いかけるから、エアが逃げてね。十まで数えたら追いかけるよ」

「ピピッ」

残された私とエアは腹ごなしがてら追いかけっこをして遊ぶ。

「いーち、にー、さーん、しー、ごー――」

「ピヨピヨ」

私が数字を数え始めると、エアはトコトコと走って逃げだした。

「じゅう。それじゃあ、いくよー」

私はエアの後ろからその背を追いかけた。

エアが走る姿が可愛い、可愛い。

「ピピピピッ」

「待てー」

「ピヨピヨッ」

「ほらほら、早く逃げないと追い付いちゃうよ」

「ピピィッ」

私にあおられたエアは一生懸命に走る。でも、まだまだ生まれたばかりで、風の力を使わなければ体力がすぐに尽きてしまう。

エアは立ち止って座り込んだ。

「はい、捕まえたぁ」

「ピークルピィッ!!」

私はエアを抱き上げて顔をぐりぐりと押し付けるとエアはくすぐったそうに笑う。

エアの可愛さは世界一だ。

「マスター片付けが終わりました。何かすることはありませんか?」

エアと戯れていると、レインがやってくる。

せっかく川があるのに何もしないのはもったいない。

「釣り竿って作れる?」

「はい。簡易的なものであれば」

「それじゃあ、作ってくれる?」

「分かりました」

レインにリールのない糸とハリがついただけの釣竿を作ってもらった。

「さて、さっそく始めますか」

「ピピッ」

「お供します」

アークは寝ているので放っておいて、私たちは川のほとりに移動してさっそく釣りを始める。

エアは、エアでも持てるように改造された専用の竿だ。

「エサはこちらをお使いください」

「ありがとう」

レインがどこからともなく、小さな虫の餌を差し出してきた。

エアと自分の竿に餌をつけて準備万端。

「よっと」

川に糸を垂らす。

「ピピッ」

「ふっ」

エアとレインも真似をして糸を垂らした。

サァーと川の流れる音と肌を撫でる風が心地いい。ぼんやりと浮きの動きを見ていると、雑念が消え、ただそれだけに集中する。

『……』

誰もしゃべらずにいるけど、その沈黙もまた醍醐味の一つ。

しばらくの間、川のせせらぎと草の揺れる音、そして、アークの寝息だけがその場を支配する。

――ピクッ

レインの釣竿の浮きがピクリと反応を見せた。

断続的に不自然に揺れている。そして、一瞬、深く沈みこんだ。その瞬間、レインは竿を引き上げる。

――ザバァッ!!

お風呂から上がった時のような音とともに餌に喰らいついた魚が正体を現した。

鮭だ。テレビや動画サイトで見たことがあるから分かる。

でも、どうみても一メートルを超える特大サイズだった。この世界の魚が大きければなんでもいいとでも思っているのかな。

それにしてもレインが作った竿と糸の強度が半端じゃない。これならどんな魚も吊り上げられそう。

――ピクッ

今度はエアの竿に反応があった。

タイミングを見計らって竿を引き上げる。でも、エアの力じゃ全然持ち上がらない。

「ピピィッ!!」

エアは風の力を使って竿を引き上げる。

――ザバァッ!!

「今度はでっかい鮎!?」

渓流釣りで有名な魚と言えば、アユは欠かせない存在だよね。

その鮎もただの鮎とは思えないほどに大きい。五十センチくらいはある。塩焼きにするにしても普通の人じゃ食べきれないと思う。

もちろん、私たちに限ってはそんなことはないけど。

――ピクピクッ

最後に私の竿に反応があった。

竿を持って行かれそうになったので、負けじと踏ん張る。

――バシャシャシャシャシャッ!!

しかも相手もやたらと粘って逃げ回る。でも、そのくらいじゃ、私から逃れることはできない。

「ふんっ」

私が少し強めに竿を引き上げる。

――ザッパーンッ!!

凄まじい水音とともに巨大な魚影が姿を現した。

「ナマズ!?」

長い髭、平べったい顔。オタマジャクシみたいフォルム。

どう見てもナマズだ。

二メートル以上ある。そんなに大きな川には見えなかったけど、こんなに大きな魚が泳いでいるなんて驚きだ。

――ズシンッ

地面に落ちた巨大ナマズによって少しだけ揺れた。

ナマズは、悲しげな顔で口をパクパクさせて私を見ている。

なんだか他の魚と違って知性を感じさせる瞳をしている。

「逃がして欲しい?」

なんとなく尋ねてみると、ナマズは言葉が理解できるのか体全体を使って頷いた。

やっぱり頭が良さそうだ。泥抜きしたり、ぬめりをとったりするのは大変そうだし、なんだか不憫になったので逃がしてあげることにした。

――ザバァッ

川に投げ入れられたナマズがひょっこりと顔を出して頭を下げる。

こういう律儀なところがやっぱり人っぽい。逃がして良かった気がする。

「もう釣り上げられないようにね」

ナマズは私の言葉に頷き、川に潜って去っていった。