軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第168話 汚名返上

腹ごなしに歩いていると、気になる情報が聞こえてきた。

「今日はモンスターレースが熱いらしいぜ」

「あぁ、人気モンスターが勢揃いだもんな」

「賭けも盛り上がりそうだ」

「行かないともったいないぜ」

今はお昼過ぎ。夜までまだ時間がある。特に用事があるわけじゃないし、一番盛り上がるレースなら見てみたい。

「まだ時間あるし、行ってみない?」

『別に行きたくはないが、お前が行きたいのであれば、ついていってやろう』

『ピピィ』

「もちろんついていきます」

仲間たちも興味があるみたいなので、人が流れている方へ歩いていく。

次々と人々が合流してまるで川のように大きな流れになった。コミケの参加者たちの列の映像によく似ている。

しばらく歩いていると、現代のスタジアムのような楕円形の建物が姿を現した。薄い黄土色で統一されていて、ローマのコロッセオのようだ。

近づいてくると、その威容がよりハッキリとしてきた。壁に微細な細工が施されていて建物の品格を引き上げている。

ファンタジーと地球の歴史的な建造物を組み合わせたような姿は、感慨深く、ワクワクした気分になった。

入り口がアーチになっていて、その前にテーマパークの入口みたいになっている。

私たちの番がやってきた。

「いらっしゃいませ。入場料が一人銀貨一枚になります」

「従魔はどうなりますか?」

「従魔の分は必要ございません。お客様とお連れ様の分のみお支払いください」

「分かりました」

指示に従って私はゴソゴソとお金を取り出す。

「ちょっと、その方はVIPよ。お通しして」

でも、別の人が出てきて口を挟んだ。

「え、あ、はい。こちらへどうぞ」

「いいんですか?」

「はい。もちろんです。私についてきてください」

受付している人に尋ねたのに、口を挟んだ人が答え、私たちを先導して歩いていく。なぜかお金を払うことなく、中に入れることになった。

アーチの中は長い回廊になっていて、私たちは他のお客さんたちは別の方に進んでいく。

煌びやかな装飾が施された扉を開けると、奥に見たまんま競馬場のような競技場が広がっていた。

観客席は、映画館のような造りになっている。出入り口に続く通路を抜けると、段々ボックスシートのように区切られた席がいくつか用意されていた。

コースの一望できる位置に造られているおかげでしっかりとコースが見える。

私たちはその中の一つへ案内された。

「こちらのお席へどうぞ」

「ありがとうございます」

私たちは各々腰を下ろす。

VIP席だけあってふっかふか。手触りもとても気持ちいい。

「コンシェルジュのミシェルと申します。以後お見知りおきを」

「アイリスです。アークとエア、レインです。よろしくお願いします」

私はそれぞれ手で指してミシェルさんに仲間たちを紹介する。

「これはご丁寧に。ただ、私に丁寧な言葉遣いは不要でございます」

「わかった。どうして私たちをここに?」

私はVIP席に案内されるようなことはしていないはず。

「アイリス様方のお噂はすでに上層部全体で共有されております」

「え? 本当に?」

信じられない内容過ぎて思わず聞き返してしまった。

「はい。国賓と同等の扱いをするように、と」

「まさかそんなことになっているとは思わなかった……」

確かに女将さんやレプスさんのような凄い人と知り合いになったけど、ただそれだけ。それ以上でもそれ以下でもない。

私自身は別に凄いことはしていないのに、なぜか私もハイステークス勢に分類されてしまっていた。

おかしな話だよね。

「もし賭けをしたい場合は、私にお申しつけください」

「分かった。それじゃあ、早速賭けたいんだけど?」

「承知しました。こちらが次のレースの参加モンスターリストです。そろそろ隣のパドックに参ります。ご覧になられてはいかがでしょうか」

「ありがとう」

観覧席の隣には小さな競技場みたいな場所があって、飼い慣らされたモンスターたちが出入り口から入ってくる。

そこで今日のコンディションを確認できるみたい。

私はもらったリストを見る。そこにはオッズや機種などの情報が書き込まれていた。ソシャゲもやってたし、調べたから少しくらいなら分かる。

「あっ、あのケルピー速そう」

私は水っぽい半透明な水色の馬を指さした。

『やめておけ。あれは勝てぬ』

水を差すようにアークが口を挟む。

『分かるの?』

『我に掛かれば造作もない』

『じゃあ、今回のレースはどのモンスターが勝つと思う?』

『あのリクガメリオンだろうな』

『えぇ、遅そうだよ?』

アークが前脚で指したのは、巨大な亀。

どう見ても速そうには見えない。

『あやつのコンディションは最高だ。他の奴らはあまり良くない。普段なら勝てぬかもしれぬが、今日はあやつが勝つ。嫌ならお前が賭けたい奴に賭ければいいだろう』

『分かったよ』

そこまで言うのならここはアークの言う通りに賭けてみよう。

「あのリクガメリオンに賭けたいんだけど」

「承知しました」

ミシェルさんに掛け金を渡すと手続きして戻ってきた。

「こちらどうぞ」

ミシェルさんはまるで馬券みたいな板を差し出した。

「ありがとう」

「それでは始まるまで、今しばらくお待ちください」

そして、しばらくしてモンスターたちがスタート位置に並ぶ。

――パー、パー、パララララ~!!

軽快な音楽がレースの始まりを告げる。

――パァンッ

クラッカーのように弾ける音が聞こえた途端、モンスターが全員駆けだした。ケルピーが先行逃げ切りで走り出す。リクガメリオンは最後尾スタートだ。

『ちょっと、駄目じゃん』

『見ていれば分かる』

『……あっ』

アークの言う通り、しばらく見ていたら徐々にリクガメリオンがスピードに乗り、最終コーナーを回った後の直線で一気に全員を抜き去った。

そして、そのままゴールイン。本当に当たってしまった。

『凄いじゃん!!』

『だから、言ったであろう。勝つと』

アークはドヤ顔で胸を張っている。

『疑ってごめん』

『分かればいいのだ』

『それじゃあ、次に来るのは?』

『少し待って』

次のパドックを見てまたアークの言う通りに買うと、再び的中。

これはまぐれではなさそう。

私はアークが言ったモンスターに賭け、勝ち続けることができた。

『ありがとう。おかげで今日は儲けたよ』

『ふんっ、金のことなど知らん』

アークは照れたようにそっぽを向く。尻尾が嬉しそうに揺れている。

全く素直じゃないんだから。

『今日はどこかに料理を食べに行こうか』

『そんなことよりも、これでこの前の失態はチャラでいいな?』

『なんだ、そんなことを考えてたの?』

どうやら、この前カジノで失敗したことをなんだかんだ気にしていたらしい。

『我だけ料理が食べられぬのは拷問であろう』

『はいはい。分かったよ。今回だけだからね。次はないよ』

アークの失態がなくなるわけじゃないけど、今回の手柄に免じて許してあげよう。

『分かっている。次はしないと約束しよう』

こうして私は、オークション用の資金を得ることができた。