軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第128話 また会う日まで

「うーん」

私は目を覚ます。カーテンの隙間からはまだ日差しは差し込んでいない。

体を起こすと、エリアとカリヤさんはスヤスヤと穏やかな寝息を立てている。昨日は別れを惜しむように夜遅くまで話をしていたから無理もない。

私は健康すぎるので、全く問題ないけどね。

『起きたのか?』

『うん』

アークも目を覚ましていたらしく念話を送ってくる。

「あっ」

目を開いて少し体を起こすと、アークの上で寝ていたエアがコロコロと転がり、ベッド上に落ちる。

「ピィ……ピィ……」

エアは起きることなく、そのまま寝息を立てている。はしゃいで疲れたのかもしれない。赤ん坊だから仕方ない。

目が冴えたので、私はベッドから下り、着替えて早朝の街に出る。

『ついていってやろう。少し歩きたいと思っていたところだ』

『ありがと』

『ふんっ、礼を言われるようなことなどないわ』

治安がいいとは言え、日も昇らないうちに一人で行かせられないと思ったのか、アークもついてくることに。

お礼を言ったら煩わしそうにそっぽを向くけど、しっぽが嬉しそうに揺れているので、丸わかりだ。

早朝の街は、昼間の賑わいが嘘みたいに、静まり返っていた。

人がまばらで、馬車もほとんど通っていない。

祭りの後の静けさみたいだ。

この静けさは、エリアとの別れが迫っていることや否応なく感じさせた。

歩いて街を回っていると、お店の人が開店準備をしているのを見かける。その中にはエリアと回った屋台やお店の人たちの姿も見られた。

また賑やかな一日が始まるんだろうな。

旅の思い出が蘇ってくる。エリアやカリヤさんとは、たった数日しか一緒にいなかったのに、もう何年も一緒にいたみたいな感覚。私はそのくらい仲良くなれたと思う。

日が昇ると、人が一気に増えてくる。これは混み合う前に出発した方が良さそうかも。

イードゥは治安も良くて賑やかでいい街だった。またいつか来たいな。

私は宿へと戻った。

「ピピピィ!!」

「ごめんごめん」

部屋に戻った瞬間、エアが「どこに行ってたの!!」と飛び込んできた。

起こしたくなかったからそのままにしていたけど、アークもいないから、置いていかれたのかと不安になったみたいだ。

エアを宥めながら平謝りをする。

エアが落ち着いたところですでに着替えたエリアが話しかけてきた。

「お帰りなさいませ」

「ただいま。おはよう」

「えぇ、おはようございます。どちらに行かれてたんですの?」

「ちょっと散歩ついでに街を見てきたの」

「そうでしたのね。朝食の準備が整っておりますわよ」

「分かった」

テーブルに座り、用意された朝食を食べる。名物などはなく、主にパンとスープ、それにサラダや果物などのシンプルな内容だった。

もちろんアークやエアの分もある。二人の分はそれぞれの体格に合わせた、従魔仕様の山盛りの肉系の料理だ。二人は一心不乱に食べている。

「ふぅ、今日でお別れですわね」

食事を食べながら、エリアが話し出した。

「そうだね。短い間だったけど、一緒に旅ができて楽しかったよ」

「私もですわ。同世代でこんなに仲良くなったのはアイリスさんが初めてですの」

「ほんと?」

エリアは商会の娘ということもあって交友関係は広そうだと思っていたんだけど。

「えぇ、これでもそれなりの商会の娘ですから。下心を持って近寄ってくる方が多いんですのよ。その点、アイリスさんにそういうことに無頓着ですし、私に見返りを求めてきませんから」

なるほど。大きな商会の娘ともなるとそういったしがらみも多くなるらしい。貴族社会とか、もっとそういう駆け引きというか、水面下の戦いがひどそう。

私だったら、疑心暗鬼になってノイローゼになっちゃう自信がある。つくづくそう言う世界から離れられて良かったと思う。

そもそも前世の私が強く出ているからだろうけどね。

「それは大変そうだね」

「社交界なんて本当に疲れますわ。笑顔の下で何を考えているのか分かりませんもの」

「……苦労してるんだね」

エリアは私と同い年なのに本当に凄い。

食事を終えた私は荷物の整理をして、出発の準備を整えて宿を出る。

「それじゃあ、そろそろ出発するね」

「お見送りしますわ」

「いいのに」

「私がしたいんですの」

エリアに押し切られて、ヴェルナス側の城門まで一緒に街を歩いた。太陽の光が石畳を照らし、朝の風が心地いい。

「それでは、ここでお別れですわね」

「うん、見送りありがとう。帰りも気を付けてね」

「アイリスさんもご無事で」

私とエリアは自然と抱擁を交わしていた。

「また……会えるよね?」

無意識に声が上擦る。こんな経験は前世で両親とお別れした時以来かな。

「そうですわね……私も世界中に販路を広げるつもりですから、どこかで会えると思いますわ」

エリアの声を掠れていた。

別れるのが本当に名残惜しい。

「そっか、楽しみにしてるね」

「私も楽しみにしておりますわ」

体を離し、お互いに泣きながら笑みを作る。

「それじゃあ、またね!!」

「はい。またお会いしましょう!!」

私はエリアたちに手を振り、アークの背に乗ってイードゥの街を出発した。