作品タイトル不明
3―14 ブルームランドへ その三
税務担当のライムント・バーデンは、その父親の代から勅令書類さえ偽造して密かに新たな税を造って、かなりの額の税を横領しており、それを隠すために二重帳簿も作っていたのである。
数字に聡い商人たちに新たな偽税を課せば、いずれ経理の段階でバレることを予想して、農民にだけ課す特別の税を生み出したことが悪どいのだ。
その税は王家直轄領時代に考案したものだが、公爵領になってからも新たな偽の触れを発給して、王家直轄領と同じく偽の税をかすめ取っていたのだった。
最終的に僕が与える刑罰は、リーンハルト・メーベルトとヨーゼフ・アイスナーの両名に対して、財産没収と公爵領の東部域にある丘陵地帯にある鉱山での20年の重労働刑である。
20年はアラフォーの両名にとっては長すぎるから、おそらく生きては 娑婆(しゃば) に戻れまい。
然しながら、その家族については、その悪事を知らなかったので罪を問わないが、おそらくはこの領内に住むことはできないだろうと思う。
一方で、ライムント・バーデンを含むバーデン親子二代にわたる横領については、額が大きいことと悪質であることから、バーデンの両親とライムントは、財産没収の上で死罪、その他のバーデンの家族については領地外への追放処分とした。
またこれに関わったバーデン親子の腹心の部下二名は、罰金刑を科すとともに鉱山奴隷10年の刑とした。
これに関連し、若しくは、関連しないものの、賄賂を貰って便宜を計らった幹部二人については、受け取った賄賂額の倍額の罰金を科し、同時に懲戒処分で免職とした。
このことで新たに人材が必要となるんだが、これは止むを得ないだろう。
次いで、幹部への賄賂を提供した者や、例の公共事業に関連してリーンハルト・メーベルトと共謀した工事業者の商人については、賄賂額の三倍を罰金刑として科した。
支払えない場合は、重労働がその額に応じて待っていることになる。
因みに金貨十枚につき、1年の重労働刑となる。
この辺は、他所の領地で判例があるんでそこから引用させてもらったよ。
それを調べてくれたのも、僕の妖精sだ。
これからも彼らには随分と世話になりそうだね。
因みに遠隔地に遠出している妖精sも転移魔法で瞬時に僕のそばに戻れるからね。
彼らは交替制で僕の願いを聞いて色々と調査してくれているんだ。
◇◇◇◇
さて、僕の両隣の領地二つ、ブルームランドの領地の西部から南西域に接する領主がフランツ・ヴィスク・マンハイム・リーベルト子爵で、ブルームランドの領地の東部域に接する領主がデニス・ヴァロ・オットマイアー・ローエン男爵なんだが、この二つの領地で麻薬と思われる薬剤が出回っているようなんだ。
その余波が、僕の領内にまで波及していることからこのまま放置はできまい。
妖精sの調査では、どうも系統のよくわからない教団が関わっているようだ。
教団のアジトらしきものはリーベルト男爵領にあるんだが、その麻薬供給の大本は、ブルームランドの南部から南東域にある王家の直轄領であるエレーズランドの港町にあるようだ。
エレーズランドがハーゲン王国の南端と言うわけでは無いけれど、入り江が有って港として使える地があるために、ハーゲン王国に三つある貿易港でも一番小さな港として他国との交易もあるようだ。
尤も、貿易港として栄えているのはハーゲン王国の南にあるサルバドル王国の港ホルツマスが近辺では最も大きい交易都市である。
エレーズランドに麻薬の胴元の拠点があるようだが、その先はホルツマスを経由して、どうも南の大陸へとつながっているらしい。
これを何とかせねば、ハーゲン王国に麻薬の類が蔓延する恐れが高い。
そうして、この麻薬の背後に見え隠れしている怪しげな教団については、妖精sの情報をまとめて分析すると、どうやら悪魔崇拝の教団であると思われる節がある。
悪魔崇拝の教団だから、既存の神様を崇拝する教会の教義とは相反しており、世間にはその存在を隠している。
彼らの目的は、悪魔や邪神復活のために、大勢の信者等の命を捧げることにあるらしい。
で、悪魔は実在するのかと言うと、そこがよくわからないんだ。
少なくとも妖精sに聞いても明確な情報が得られなかった。
で、話が出来そうなイフリートを呼び出してみたら、潜在的な悪魔は次元を隔てて存在するそうで、当該次元の壁を破ったり、穴を開けたりすることで悪魔が顕在化することあり得るとのことだった。
なお、邪神については神の存在が次元を超えることを許してはいないので、邪神本体が人の住む現世に出現することは無いという。
然しながら、一方で、依り代を得れば、その能力の一部が発現できることもあるそうだ。
仮に悪魔教団が悪魔を呼ぼうとすれば、膨大な魔力が必要となり、少なくとも特殊な魔法陣に初級程度の魔法師数百人が魔力を注がねばならないだろうという説明だった。
また、邪神の場合、生き物を依り代にはできないので、例えば、魔剣だとか魔槍だとかの形をとれば、現世にその能力の一部が顕現できるやもしれぬという。
飽くまでその物に対して、邪神の能力を付与する程度のものになるだろうということだった。
まぁ、少なくともラノベのように邪神そのものが、こちらの世界に復活するわけじゃなさそうなのでその点は一安心だよね。
尤も、魔界とでも言うべき処から魔族を呼び出せる可能性があるのはいただけない。
そうしてこの怪しげな教団の本部は、海を渡った南の大陸にあるようだ。
流石に大海を渡るとなると妖精sも大変なようだから、調査をするとなれば別途の方法を考えなければならないね。
特に、南のサルバドル王国の港ホルツマスや、ハーゲン王国の他の二つの貿易港も一応調査しておく必要がある。
そんなわけで、取り敢えず妖精sに情報収集をお願いしているんだ。
彼ら同士のネットワークにより遠隔地でも情報が得られるところが凄いよね。
但し、調査をする場所が他の大陸となれば、縄張りみたいなものが有って、僕の名付けした妖精sでは難しいようだ。
教団と麻薬について、他の大陸における関連情報について、イフリートにお願いすると彼が快く請け負ってくれた。
そちらの方はイフリートにお任せで、ブルームランドで僕がなすべきことをしておかねばならない。
一つは領主館の建設以来だな。
これは地元の業者に依頼する。
その際に仕様書を含めた大枠の設計図を渡して、施工を依頼した。
見積額とおおよその完成時期が提示され、地元の商会であるクレブナント商会に一任した。
同時に、人集めも始めたよ。
事前に領内及び近隣の地にお触れを出していたので、二日をかけて代官所で面接をしたんだ。
貴賤は問わないが、能力もしくは潜在能力が有る者を雇う。
もう一つ、王家の直轄領であった頃に、領内の警備衛兵として雇用されていた者についても、取り敢えず、希望する者は継続して警備衛兵として雇っていたんだが、その雇用を正式にすべく面接を行い、任命状を手渡すことで明確にした。
公爵領の場合、王家直轄領とは異なって、更に私設の軍隊が必要なんだ。
まぁ、単純に言って、公爵領の騎士団となる存在だ。
これは直轄領の警備衛兵とは異なる。
これまでの警備衛兵はブルームランドの治安を守る機関であって、いわば警察機構だが、騎士団は軍事力であって領地とそこに住む住民を外敵から守るのが主要任務となる。
無論王都でも公爵領に配置する騎士の募集を始めているんだが、少なくとも秋口の騎士養成学校の卒業までは青田刈りも難しいんだ。
まぁ、他の貴族は血縁とコネで養成学校の卒業前に人材を確保しているようだけれど、僕のような新興貴族はそのような方法は難しいね。
だから個別折衝で集めるしかないんだが、少なくとも剣、槍、弓などの武器の扱いに慣れた者、若しくは魔法師として適性があるものを採用し、鍛錬をしなければ物にはならないだろうね。
当座は、元の警備衛兵のみで頑張ってもらうしかない。
王家の直轄領を拝領地としていただく事例は少ないんだが、それでも貴族であれば領軍を保有しているので、それを少し割って配分するようなこともできるんだけれど、僕のようにそもそも手元に無いものは配分しようがない。
時間がかかっても逐次整備して行くしかなく、万が一、領地若しくは領民に危難が迫れば、僕自身が王都から騎士を引き連れて出張るしかないと考えている。
何はともあれ、欠員となった官吏を含め、人材確保だな。
取り敢えず、予定していた二日間で延べ50名の応募者と面接し、中で官吏も出来そうな人物数名を欠員に補充した。
官吏候補者の場合、騎士としての技量に劣っているから、騎士として採用しても物の役には立たない可能性がある。
まぁ、騎士団の事務を行うということならできなくもないが、それよりは欠員となった官吏を補充するのが先だ。
採用者は最終的に応募者の約半数、24名+管理要員6名の30名となった。
他の20名は、残念ながら能力不足で騎士や官吏には向かないんだ。
もう一つ、領主館の人材募集も考えねばならないんだが、そもそも館ができていないので、募集はかなり先の話になる。
領主館の完成見込みは今のところ早くても半年後になる予定なんだ。
従ってその時期頃に再度の募集をかけるつもりでいる。
その前に王都でも従者ギルドを含め一般から領主館の従者の募集をかける予定ではある。
領軍の騎士として活動してもらう20名については、拠点が必要なので、ブルームランド郊外の荒れ地を整備して、そこに王都別邸を建築中に使用していた仮の従者用宿舎を設置したよ。
街道から少し脇道に入ったところではあるけれど、ブルームランドの門から百尋ほどの距離にあり、万が一の場合、ブルームランドの囲壁へはすぐに駆け付けられる場所でもある。
そんな施設が突然できたことでびっくりする向きもあるかもしれない。
但し、街道から見ると林の陰になって見えにくいところにあるから、左程目立ってはいないはずだ。
別途、騎士団の従者として料理人や厩務員を雇っている。
この料理人や厩務員については、ブルームランドの町中を散策していて見つけた人材だ。
色々な事情で職が無く、他所から流れ着いた余所者ではあるが、僕の鑑定で信用できる働き者と認めたので、潜在能力のある料理人二人と厩務員一人を雇ったんだ。
残念ながら、騎士団とは言いながら馬の手配はもう少し遅れるな。
これも代官を通して地元に根付いている商会に依頼しているよ。
色々と忙しかったブルームランド訪問だったが、当座の仕事は終えたので、僕らは王都に向かっている。
因みに、孤児院出身者の密偵として働いてもらった5人は、このままブルームランド代官所の従者として働いてもらっているよ。