作品タイトル不明
91話 ワイバーンは箒に乗って倒すのがお作法です
「お前といると、俺のイメージが崩れるんだよ‼」
って怒鳴ってきたし。
「そもそもが、私にすがってマジ泣きして謝ってきた時点でイメージがどうのとか思うのがおかしいぞ。イースでなんて、お前の扱い、超雑じゃないか」
「あそこは駆け出しの頃からの知り合いが多くて、俺がSランク冒険者になってもあんまピンときてない連中が多いから素でもいいの! でも、他の町や王都だと、それなりにイメージがあるの!」
本当かなぁ?
まぁいいや。
私は私で偽らないので、このままでいこう。
「いや、お前はもうちょっと偽れよ? あ、たまに偽ってるな、こないだなんか、スパイス露店の女将さんに対して、なんだありゃ? あと、ギルドの受付嬢にもたまに愛想ふりまいて、女ったらしの詐欺師みたいな態度してるじゃねーか」
「相手にサービスを求める際は、そういうこともしているな。男にもやるのだが、女ほど効果が無い」
美少女ににこやかに声かけられて胡散臭そうにするのってヒドくない?
「小僧に『イケメンのお兄さん』なんつわれたって、胡散臭い以外の何者でもねーだろ」
うん? 聞こえなーい。
*
ワイバーン退治!
ドラゴンほどではないがワクワク感がある。
「お前はワイバーンを退治したことはあるか?」
「一度だけな。まぁ、運が良かった、っつーか。……やつは、飛ぶからな、不利になったら逃げるんだ。たまたま槍を持ってたから、ぶん投げて仕留めた」
遠投だな。
某RPGの竜騎士は、ワイバーンも真っ青になるジャンプをして槍でくし刺しにするのだが。
と、ふと思い出し疑問に思った。
「……うん? お前、雷魔術が得意なんだよな?
雷落っことせばいいだろう?」
落雷を何度も落とすのが手っ取り早くないか?
そしたら、眼前に手を突き出された。
「先ず一つ。ワイバーンは雷魔術が効かない数少ない魔物だ」
へー、そうなんだ。
「次に一つ。お前の雷魔術と一般的な雷魔術はえらく違う」
ソードが指を折って数えている。
「最後に一つ。お前は雷を空から落とせる、けどな、フツーそんな雷魔術使えねーよ‼」
そうなんだ。
「お前って、遠距離の大規模魔術って使えるのか?」
って聞かれて、沈思黙考。
「うーん。やってみないとわからないが、手はあるな。一番簡単なのは、[原子力]……爆発魔術なんだが、これを使うと使った地帯と周辺が汚染され、長期間影響を及ぼし、感染した場合は解毒薬を飲んでも治るか解らないような状態になるが。ちなみにこれが、私のよく言う『禁呪の大魔術』だ」
「それ、封印な」
言うと思った。
「あとは、真空にする魔術だな。これは、呼吸する生物に対しては有効だが、無呼吸の魔物には効かない。スケルトン、グールとかな。で、これも殺せる魔法は、波動魔術だな。複数の有害な波動を降らせれば、砂や泥はちょっとわからんが、大抵の魔物に有効だろうな。光らない光魔術って感じだ」
「あぁ、あの、ダンジョンで使ってたヤツか」
うなずいた。
「じゃあその、光魔術が一番無難なのか?」
腕を組んだ。
「まぁ、素材は取れないが。火で燃やすよりもひどい状態になるからな。気化したり炭化したり、皮膚から内臓までグズグズになったりだ」
「わかった、お前に頼むときは最終手段にするわ」
って答えられた。
さーて、どうやって仕留めるか。
飛ぶ相手と戦うとなると……。
「やっぱり浪漫としては、美少女が箒に跨がって飛ぶのがセオリーなんだが」
「箒に跨がって飛べるなら、箒なくても飛べるだろ」
そうだけど、浪漫がさぁ!
面白くないのでそこら辺の雑木で箒を作った。
ソードがお馬鹿な子を見るような、冷めた目で見てるし。
その後、思いつく魔女っ子の歌を歌ってたら、ソードが笑い出した。
「お前って、ホンット、陽気なやつだよなぁ。そんな陽気にワイバーン倒しに行くやつお前以外に絶対いねーわ」
感心してないで、お前も陽気になれ。
と、歌っていたら、現れたるはワイバーン。
炎玉吐いてきたよ! とっても攻撃的!
わっふぅ!
だけど、まだ相当距離があるなー。
警戒するみたいに、高度を上げたまま旋回してる。
ソードが額に手をかざしてワイバーンを見た。
「結構距離あるなー。さーて、どうする?」
「もちろん、飛ぶ!」
箒に跨がった。
「さぁ、私をワイバーン目がけてほうり投げろ! 槍の遠投の如く! さぁさぁ!」
ソード、口を開けて呆れた。
が、気を取り直した。
「ま、いっか。お前なら死なないな」
ひょいっと持つと、肩に担いだ。
「んじゃ、行くぜ。仕留めて来いよー……」
「お前こそ、外すな……わぁあああ!」
バビュン!
一直線に、弾丸の如く飛んでった。
私、箒で飛んでます。
うそです、箒無しでも飛んでます。
でも、中々のシチュエーション!
アレだ、超有名魔法使い童話の、箒で飛ぶ、アレだよ!
このスピード感は!
私はシーカー!
……と考えてたらあっと言う間にワイバーンの元へ。
ワイバーン、超びっくりして口を開けて、固まってる。
ごめんね、問答無用で倒す。
空飛ぶ魔法使いなら魔法で倒すのがセオリーだが、この勢いなら首チョンパの方が早い。
すれ違いざまに抜刀、一閃。
「……ふっ、またつまらぬものを斬ってしまった」
お決まりを言った後、木刀を振り回して風を起こしてブレーキ。
で、ワイバーンと一緒に落下。
途中で重力制御魔術で落下速度を弱め、着地した。
ソード、ゲラゲラ笑いながらやってきた。
「お前、最高。こんなに笑ったの久しぶりだわ」
「楽しかったぞ! 今度はお前もやってみるか?」
「そーだな、今度出たらやってみるわ」
珍しく乗り気な発言のソードだった。
ワイバーンは血にも値が付くらしいので、血抜きして出てきた血をそのまま瓶詰め。
あとは洗ってそのまま保冷バッグに突っ込んだ。
ギルドに行くと、また歓待される。
ギルドマスターが
「ワイバーンが久々に市場に出回りますな。高値で買い取りますぞ!」
って言ってきた。
「そうか。首を斬って血抜きをしたが、血も売れると言われたから、別に保管してあるぞ。肉は私たちも食したいので少し戻してくれ。食せる全部位頼む」
私が言ったら、ギルド中の全員が固まった。
「ん? どうした?」
ギルドマスターが私を指差して、怖ず怖ずと
「もしや、少年が、倒した?」
聞いてきたけど、少年って誰のことかなー?
「あぁ、そーだよ」
思い出し笑いのソード。
「箒に跨がって、『ワイバーンに向かってほうり投げろ!』っつわれてよ、ちょっと懲らしめるか、とか思って思いっきり投げてやったら飛んでって首チョンパして、なんかかっこつけた後、一緒に落っこちてきたぜ? どーしよーもなく救いようのねぇバカだな、って思ってよ、もう、俺もいろいろ吹っ切れて楽しむことにした」
なにおぅ?
「箒に跨がって空を飛ぶのはお作法だぞ!」
「お前にとってはな。でも、ま、楽しそうだよな?」
「もちろん! 私は全力でシチュエーションを楽しむんだ! それこそが冒険!」
万歳したら、ギルド中に笑われた。