軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6話 お茶会へ行こうよ(嫌だ)

身体能力が か(・) な(・) り(・) 上がっているのは気付いていた。

だってさー、いっくらビフォーが栄養失調で運動不足の病んでる子だとしてもさ、アフターで五倍の距離を走って息切れしないってどうよ? 腕立て伏せとか、十回出来るかどうかだったのが、今じゃ五十回やってもやった気がしないのよ? おかしいよね? つーか、女子としてどうなの?

まだ五歳なのに別世界の全盛期の体力を超えてるし! だからといってムッキムキになったわけでもなく……。

……なんとなく原因がわかる気がするんだけど。でも、筋力トレーニングなんだから筋力をつけるために疲れるまで回数をこなすことにした。

そんなある日、プリムローズが顔を出した。

この子、「近寄るな」って毎度お願いしてるのにまったく聞かないし、勝手に入ってくるなと何度言っても勝手に入る。マナーもいまだになってないので、将来さぞかし苦労するだろうね。

それとも、他所様はそんなにマナーにうるさくないのかな? 私を産んだ女と、私に対するあの男だけがうるさいってだけで。

そんなことを考えながらさりげなく無視を決め込んでいたが、この子ったらどんどん私への耐性を身につけていっていて、おかまいなしにしゃべりまくるようになった。さすがだね。ある意味尊敬する。

「……それでね、お姉様とお茶会に出るってお返事したの」

聞き流していたら、とんでもないことを言われた。

「は?」

「五日後に、お茶会に呼ばれたの! お父様にお願いして、姉様もご一緒に、ですって!」

…………なんですと?

「私に着ていくドレスなんてないぞ」

幼児の成長期はあっと言う間に服が入らなくなる。今クローゼットにかかってる服はもうどれも入らないだろう。

この普段着のドレスは、いつも小汚い練習着ばかりを着ている私を見かねてメイド長がこっそり用意してくれたものだ。あの男はそんなことも知らないだろうね。つか、産んだ女が死んでから服を作った覚えがないわ。

「私のドレスを貸してあげるわ! たくさんあるもの!」

「たくさんあったとしても、サイズが合うかわからないだろうが。もっとハッキリ言うと、合わない。そして、合ったとしても、そんなことしたらお前の父親に『娘の服を奪い取った』って 絶(・) 対(・) に(・) 言われて平手打ちされるな」

「…………」

プリムローズは黙り込んだ。

よし、言い負かしたので帰ってくれ。

「はい、じゃあこれでこの話はおしまいだな。さよなら」

「あ、待って、姉様……」

身体能力が上がったので、ほうり出すのが簡単になったよ。

プリムローズ、どうやら父親に訴えたらしい。

執事やメイド長まで一緒になっていろいろ言ったらしく、翌日、ノックされたと思ったら、

「姉様! 姉様のドレスを買ってもらえるように頼んだわ! ハンニバルやコーラルも協力してくれたの!!」

とか言いながら飛び込んできた。

あ、ハンニバルは執事の名前、コーラルはメイド長の名前ね。

私は舌打ちした。

「余計なことを……」

「さ、姉様!」

……お茶会なんて行きたくないんだけど。

渋ってたらメイド長と知らない女性が入ってきた。

「失礼します。ドレス職人を連れて参りました」

メイド長と女性を交互に見やりながら、お断りした。

「お茶会は四日後だろう? つまり、あと二日しかないのにドレスなんて用意出来るわけがない!」

この世界に既製服なんてあるようには思えないんだけど? しかもドレスなんてさ。

「大変心苦しいのですが、古着ならご用意出来ます。もちろん、きちんと洗濯されているものですし、数回ほどの着用ですので、傷みはほとんどありません」

古着かよ!

……そうきたかー。でも、古着ならなお合うサイズがあるかわからないかも?

「……合うサイズがあるとは思えないんですけど」

「多少でしたらすぐお直し出来るかと」

マジかー。でもわかるー。うん、私も縫製やってたからね、無理したらすぐ出来ちゃうよね。

「合わせて、新しくドレスも作らせていただきます。今後も必要になってくるでしょうから」

ため息をついて諦めた。

その翌日、古着が届いた。

わぁ。早ーい。いらないのにー。

似合うとか似合わないとかではなく、一番サイズが合う服、という点で選ばれた服。

……服飾が趣味だった割にはドレスにはまったくときめかない私。いや、この世界のドレスが好きじゃない、って感じだな。昔の貸衣装のような……安っぽい感じが否めない。

この生地、シルクじゃないからかなぁ。なんの糸だろう?

考えつつ入るのを確認して終了。

「ところでお嬢様、その……下着は……。変わったものを身につけられているようですが……」

うん、ツッコまれた。見逃してくれるかと思ったが、無理だったか。

――この世界の服飾事情。ジャージ生地もなければゴムひももない。ウエストがひものパンツしかない。そしてトイレ事情もよろしくないので、出来るだけトイレを我慢したい。

が、我慢してるとひもを解くのがまどろっこしい。

ボタンパンツ形を最初考案したけれど、ボタンも面倒なことは面倒なので、すっごい大変だったけどリブ編みに挑戦したよ! すっごい大変だったけど!

苦労のかいあり、ほどよい締め付けで落ちてこないし、着脱も楽。

フフフ、別世界の知識に栄光あれ! ――その苦労の結晶を見られてしまった。

「自分で考え作り出したものです。盗まないでくださいね?」

ニッコリ笑って通達した。