軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4話 頭を洗ったよ

プリムローズは実行に移してくれたらしい。ぱったりとあの男と会わなくなったし、食事が来なくなることもなかった。ついでに新人メイド嬢も現れなくなった。

放っておけというので、新人メイド嬢にも放っておくように言ったらしいね!

まぁ、基本自分で何でも出来るしあらかた頼むことは済んだので、あとは各個撃破で頼みにいくとしよう。

まずは、厨房。突然現れた私に驚いている。

「仕事中申し訳ないが、いくつか質問をしたいのと、いくつか注文したいことがある」

洗い物はどうやっているのか、と聞いたらけげんな顔をされた。そりゃそうか。

水! というシンプルな答え。

あとは、やはりというか、ゆで汁を使うと汚れ落ちが良いのはなんとなく料理界で広まっているらしい。それで何とかなってるならそれで良いけど。

「しつこい汚れには煮洗い、という方法もあるぞ。木灰を混ぜた汁の上澄みを煮るとさらによく落ちる」

驚かれた。どちらかといえば洗濯だけどな。

で、本来の目的、豆と灰、そして鍋がほしいと言った。

また驚かれる。

「一体何に使うのでしょうか?」

「……洗髪や身体を洗うのに使う予定だ」

料理人はついてこられないだろうけど、本当なのだ。

豆は乾燥豆だった。水につけてふやかす。

……また明日ね。

翌日。

豆のスープを飲みながら、――これって、昨日からふやかしてる豆じゃないよなぁ? と考える。

……協力者がいればせっけんも作れるのに……でも五歳の私にはせっけんを作る工程が無理だった。

魔術が使えれば一人でも出来る……かもしれないから、魔術の訓練頑張ろう。

別世界で体験したせっけん以外の洗い方は米ぬかとツバキの実だけど、どちらもこちらの世界で手に入るのか分からない。

ツバキは庭や練習している雑木林を見渡す限りは生えてない。米に該当する植物も見当たらない。

……いつかここを出て、米を探すんだ! 米を食べるまで死ねない。いやそこまでは思えないか。

で、米ぬかもツバキの実も手に入らないので豆と木灰で試してみよう。今の水で流すだけよりはマシだろ。

そんなことを考えながら厨房に行った。……あ、良かった、豆あったよ。

「この豆をどうなさるのですか?」

「生のまま、粗く潰す」

やってくれた。親切だ。

見る限り、油分が足りなそうなので、木の実を追加しオイルを少し垂らす。そして、ボウルに木灰と一緒に入れて混ぜる。

「え、マジでこれで洗うの?」みたいな顔をしてますが、私も初挑戦なので。

「皮膚の丈夫な人は、コレを目の粗い布袋に入れてこすります。子供や肌の弱い人は柔らかい布袋に入れて、水につけてもんでからこすります。髪は、頭皮に直接こすりつけて、髪をたらいにつけて櫛で解かして取り除きます。……という方法をとろうと思うが、まだ実験段階なのでどうなるかわからない」

「え」

しょーがないじゃん、別世界では違うのでしか試したことないんだからさ。

後、ビネガーか酸っぱい果物はないかと聞いて酸っぱい果実はあったらしい、それをもらって引き上げた。

さて、実験開始!

本当はお湯の方が落ちるけど、新人メイド嬢すら使役できない現状ではどうしようもない。

まず、水場からバケツ……いや、桶? で水をくんで風呂場に運ぶ。何往復もしないといけないが、これもトレーニングの一環と思えばよろしい。

水を用意し、タオル……つか布だよね、パイル生地ってこの世界に存在するのかな?――の、体拭き用と体洗い用タオル、櫛、そしてお手製ぬか袋ならぬ豆袋、そしてスクラブをセットし、いよいよ開始!

最初にぬらした手ぬぐい(もうタオルとは言わない)で体を湿らせ、袋も湿らせ……あ、灰が溶けたよ。あんまり湿らせてはいかんな、そのままこすった。

うん、灰色になった! が、気にせず擦る。擦る。背中もなんとかこする。

顔はスクラブで洗った。その後水で流す。

……おぉ! なんかしっとりしてる!

気のせいかもしれないけど綺麗になった気がする! いや、なってるはずだ!

気を良くし、次は洗髪。つーか頭皮洗い。

頭を桶に突っ込み、髪をぬらした後、スクラブを少しずつ手に取って頭皮にもみ込む。

お? 良い感じ、ヘッドスパ的なヤツだ!

鼻歌を歌いつつ全体にもみ込んだ後、もういっかい頭を桶に突っ込んだ。

……これ、洗い流すのが大変だな。櫛を手に取って、梳かし洗いながらそう思った。

シャワーがほしいなぁ。せめて、じょうろだな。

何度も梳かしすすぎ、ようやく落とした。

仕上げに果実を搾った水に髪を浸した後、頭から真水を被って終了。

「よし、洗い上がりだ!」

万歳した。

苦労のかいあり、全身すべすべの髪フワツヤだ。

……今の私ってストレスのせいか肌艶も悪いし髪もヤバかったんだよね。幼女なのにハゲそうとか! ――何を隠そう別世界の私も、多毛剛毛だったのに、社会人になってから多忙とストレスであっという間に髪が少なく細くなり、育毛に力を入れていたのよ。ヘッドスパとかヘッドマッサージもよくやってたなぁ。「こんなに頭皮が固い人はいませんよ!?」とか美容師さんに怒られたこともあったな……遠い目。

別世界の私が最終的にハゲたかは覚えてないけど、今の私も気をつけないとハゲそうなので育毛頑張る。頭を洗うのこの世界だと超めんどいけど。

実験結果を報告に厨房に行ったら、ひと目見ただけで成功だとわかったらしい。料理人を見てうなずいた。

「成功した」

「それは……おめでとうございます!」

喜んでくれた。

「それで、その……私も、まねをしても……」

「それは構わないが、材料や作り方は極秘にしてほしい。まぁ……簡単だけどな、念のためだ」

「かしこまりました」

料理人、神妙にうなずいた。

「使い方は、体はこれらを袋に入れて、布を湿らせ、体もあらかじめ水を含ませた布で全身を拭いて湿らせてからこすればいい。むしろ汚れたようになるが気にしないでこすって、最後に水で洗い流せば綺麗になる」

ここら辺は簡単。

「洗髪は……かなり大変だし水もたくさん使うが、それに見合う髪が手に入る。髪を全体的に湿らせた後、少しずつ手に取って頭皮にもみ込み、頭を桶に突っ込み、櫛で梳かして何度もすすぐ。出来るならもういっそ川で洗った方が楽だと思う」

……髪の方は灰を中心に、粗く砕いた木の実だけにして油で練ろうかな? スッキリ感は豆や木の実が多く入った方があるんだけど……。

「……あ、そうだ。仕上げに、酸っぱい果実の果汁を溶かした水に髪をつけ、それをしっかりと真水で洗い流すと、ふわっとする。果実水は必ず洗い流さないと、肌についたままだと毒となり肌を焼くので気をつけろ」

この世界の果実はわからんが、たぶんね。

料理人が目を丸くした。

「……お、お嬢様……。……その知識は一体……」

目をそらした。うん、まぁ、不審に思うよね、普通は。

「……私は、生まれ変わった。求めても得られない愛情を求め、虐待されて傷つきながらもなお顔色をうかがいへりくだり心を擦り切らせて倒れた私はあのとき死んだ。運良く目を覚ました後私は、私のためだけに好きなように生きると決めたのだ」

料理人は目を伏せた。

「……そうでしたか」

うん、答えになってないがうまくごまかせたようだ。ふう。

まだ余ってるが、足りなくなったらまた作りに来ると言って厨房を逃げ出した。これ以上追求されると何と答えて良いかわからない。