作品タイトル不明
344話 CENTURIES
かわってラセツはというと。……ソードの強さが理解出来てしまったらしい。諦観の相が顔ににじみ出ている。
あらら……そんなに簡単に諦めないでくださいよ。なんのために初手で傷をつけなかったと思っているのだ。
鎧斬りがうまくいったため余裕の出たソードが、諦め顔のラセツを見てフッと鼻で笑う。
「じゃ、次はそっちの番だ。攻撃してこいよ。この棒っきれで防いでみせるからよ。俺の身体にその斧がかすりでもしたら、また交代だ。出来るならな」
お、ソードが煽ったぞ? 煽り属性まで身につけたか。
「……なめるなぁ!」
ラセツは激高して斬りかかった。のをパリィ。
パリィ。パリィ。パリィ。以下続く。パリィ。
私は手持ち無沙汰なので応援歌を歌っています。
試合場が闘技場なので、【CENTURIES】を歌う。
うん、良い歌だ。周りを気にし過ぎなソードのための応援歌だな!
さっきから頰に槍が当たるのでミニミニ鎧騎士クン一号を肩車にした……というよりは私の頭にしがみつかせた。そうしたら今度は槍で私の頭を刺しているんだけど。歌に合わせて振り回しているだけだと信じたい。
さて。ソードはというと、常にパリィしています。ラセツの渾身の一撃も、パリィ。斧ラッシュも、パリィ。なにをどう攻撃しても、パリィ。
……うん、心を折りにいっているね。それともパリィが楽しくなってきちゃったかな?
ラセツは頑張ってる。頑張ってるよ! どう攻撃してもパリィしてくるソード相手に、頑張ってるよ! 扉前を守護していた大鬼の連中は完全に心折れて、座り込んだからね!
ラセツは頑張ってるけど、勝てないね。本人……あ、人じゃなかった鬼だった、も、わかっているけど戦っている。……あ、とうとう武器が心より先に折れちゃったよ。
くの字に曲がった斧を見て、ラセツは手を下ろして目を閉じた。
「もう、終わりにするか?」
ソードが淡々と尋ねた。
「……クーラ様、申し訳ありません。この者は強い。私では勝てませんでした」
ラセツ、ソードの問いには答えなかったけれど事実上降参した。
クーラさんが悔しそうにぶるぶる震える。
「……お前の仇は私が討つ!」
って、悔しさのあまり無理なことを言いだしたよ。
「まぁ、無駄だろうが頑張れ。無駄な努力でも本人の気が済むという方向では無駄ではないぞ。それ以外は無駄だが」
私が言ったら全員ににらまれた。なぜだ。
「……お前は何をしている! さっきから、何を遊んでいるんだ!」
クーラさんに怒られてしまった。
「ソードの応援だ。応援歌を歌っていた。あとは、私の作ったミニミニ鎧騎士クン一号が、お前たちを懲らしめに行かないように捕まえていたな。ミニミニ鎧騎士クン一号は、鎧を着ている者は皆鎧騎士に見えるようで、すぐ突撃をかますのだ。ラーブリー!」
自分のやっていたことを説明したら、クーラさんはますます怒ったみたいだ。なぜだ。
「お前も戦え!」
クーラさんにビシ!と指さされた。名指しかー。
「いいけど……クーラさんと戦うのか? ソードの獲物を横取りすると、ソードのフラストレーションが溜まるからなぁ。どうしよう」
私がしゅん巡したら、ソードが苦笑した。
「じゃあ、ラセツにとどめを刺して。ちょっと俺、いじめすぎたみたい。――つーわけで、交代だ。冷酷無情のインドラに引導渡されてこい」
わぁ。ソードったら私に尻拭いさせる気だぞぅ。いいけどさ。
「では 私(わたくし) 、冷酷無情のインドラがお相手しよう。私は真の剣の達人なので、斬鉄剣でなくとも斬りたいものが斬れるのだ!」
と、ラセツに言ってミニミニ鎧騎士クン一号を頭にしがみつかせたまま向かった。
ミニミニ鎧騎士クン一号、相変わらず槍を振り回して私の頭を小突くのだが。興奮しているのだと信じたい。
ソードが私を見て、具体的には頭にしがみついて槍を振り回すミニミニ鎧騎士クン一号を見てひそかに笑っているぞ。……ミニミニ鎧騎士クン一号、本当にわざとではないよな?
「ではいきます」
私はすらりと木刀を構える。ラセツは、覚悟した表情で折れた斧を構えた。
フフフ……私が『真の剣豪』とはどういうものかを見せてやろう!
シュバババッ!
斬った。
ガラガラガラ、と、鎧が落ちた。
私は静かに木刀を鞘に納め、納め終わったときにカチン、と鍔を鳴らす。
「フッ、またつまらぬものを斬ってしまった」
決めゼリフもバッチリです。
ソードとクーラさんが啞然としてこちらを見た。どうやら意外だったらしいよ。
私は腰に手を当てふん反り返った。
「ミニミニ鎧騎士クン一号が興奮するからな! 鎧を斬ってやったぞ! 真の剣豪とは、斬りたいものだけを斬れるのだ!」
あれ? 私を見るソードの視線が冷たいぞ?
「……それで、ラセツの鎧を斬ってマッパにしたのかよ」
「武士の情けでぱんつは斬ってないぞ!」
穿いてて良かったね。
下の階にいたお人形さんなんて、穿いてなかったからね!
…………と。
ラセツが両手で身体を抱きしめ、ガクリ、と膝から崩れた。
「…………ひどい」
って。え? 私のこと?