作品タイトル不明
34話 赤じゃなくて白だよ
会話をしていて思い出した。
「リョークを作ったら、お前もいるか?」
「いります。ください」
即答が来た。
「[並列化]……具体的に言うとだな、一人のリョークが覚えたことは全部のリョークが覚えるような仕組みになっているが、それでも良いならお前専用を用意するぞ。依頼達成金ももらったし、もうちょっと材料が集まれば作れる」
「用意するから何でも言って」
そんなにほしいのか。
あんなに冷めた目で見てたのに。
「色の指定もしていいか?」
「いいけど……うまく色が出るかわからないぞ? あと、その機体専用の機能はダメだ、パーツの取り外しでオプション指定になら出来る、じゃないとうまく動かなくなる」
「なんでもいいから作って下さい」
酒以来の食いつきだな。
「大きさは変えられるぞ? どうする?」
「あんまりデカくてもなぁ……。狭いところを通り抜けられなくなるだろ?」
「そうなんだよなー。今のところ困ってないが、もう少し小さい方がいいのかと悩む」
結局、大きさは同じ、色は白、って言われた。
「赤って言うかと思った」
「なんで赤なんだよ、赤は【血みどろ魔女】のパーソナルカラーだろ」
え、そんなんあるの?
そして、ソードのパーソナルカラーは白なの?
「【迅雷白牙】のパーソナルカラーと言ったら白に決まって……」
「え? なんて?」
今、変な言葉が聞こえてきたぞ? 頑張れ翻訳くん!
聞こえたのは……なんだっけ、脳内の翻訳くんが機能を停止してるぞ!
「…………なんでもない。とにかく、俺『Sランク冒険者ソード』のパーソナルカラーは白だ!
そう言った!」
「そ、そうか。なんか変な言葉が聞こえてきて、脳が翻訳を拒否してきたんだ。気のせいだな! うん、そうか、Sランクってパーソナルカラーがあるのか。そういや、偉くなると色指定が出来ると聞いたことがあるな、うん」
別世界の公国軍のエースパイロットも赤がパーソナルカラーだもんな!
ここでは血みどろさんがそうらしい。
しかし、すっごい名前だよね。
「お前もSランクになったら決められるぞ? つーか好んで使う色を勝手にパーソナルカラーにされる感じだけどな」
「青緑一択で」
よし、これから青緑を積極的に使っていこう。
「……そういや、機体は何使ってんだ? 鉄辺り使ってんなら、俺が金を出してやるからミスリルかアダマンタイトで……」
「いや、鉱物を使ってない。それだと傷がついたとき自動修復出来ないだろう? 塗装もメンテナンスも大変だし、何より重くなる。だから虫や甲殻類と同じ、殻をベースにしている。自動修復出来ないほど壊れたら、脱皮して治すんだ」
ソードが笑顔で固まった。
「……まるっきり蜘蛛じゃねーかよ! 脱皮ってなんだ、脱皮って!」
「蜘蛛よりすごいぞ、大抵の傷は自動修復するんだからな。普通はしないんだぞ?」
魔素が混じると何でもアリになるよね。
(注:インドラさん、五歳時点で難しい原書も読み書き出来ちゃうほどでしたが、記憶がよみがえって前世の言語が入ってきて、おまけに今世では以降殆ど会話しなかったので思考言語が前世よりになってます。基本バイリンガルですが、理解したくない言葉を言われた際、「その表現なんつってる?」とわざわざ翻訳してしまいます。)
*
数日後。
「出来た」
設計書があればプラモを組み立てるより簡単に作れた。
魔術って便利ねー。
「ソードの生体認証で登録してある。私の命令も聞くが、最上位はお前だ」
「初めまして、ソードさん! 僕は、リョーク!」
手を挙げてかわいく挨拶!
ヤヴァイ! 萌え死にしそう!
「……なんで全部リョークなんだよ?」
「名前の変更は受け付けておりません」
リョークは、リョークなんだよ!
「はぁ……まぁいいか。よろしくな」
なんだかんだでうれしいらしい。
喜んでくれてる。
「オプションいけたか?」
「うん、それは大丈夫」
ソードが唐突に思い出して付けたオプションは「グレネードランチャーから発射するのを四十ミリ爆撃魔術ではなく雷撃魔術で」
ってことだった。
アレだな、別世界のコピー忍者が初期に使ってた千鳥が鳴くような音を出す忍術みたいな!
屋敷のリョークが使えないけど、オプションだから指定して使わないとダメってことで回避。
帰ったらメンテナンスして使えるようにしてあげよう。
――並列化情報によると、屋敷のリョーク、農作業手伝ったりメイドさんとウフフキャッキャしてたり料理人と買い物に行ったりしてるらしい。
屋敷の警備、リョークだけで充分じゃね? って言われてるくらいに重宝されてる様子。
しかも、屋敷のリョークはかわいくしゃべるようになってきたぞ!
なんでだ⁉
並列化してるはずなのにうちのリョークとどうして違うんだ‼
専用リョークが出来て、ようやくソードが酒を控えるようになった。
ひそかに基本動作として「ソードさーん、お酒の飲み過ぎは本体内部装置の損傷だけじゃなく、記憶回路や演算回路の処理遅延を発生させるんですよー? はい、お水」ってセリフを追加したためのはずだ。
ホッとしてると、頭をなでられた。
「……悪かった。心配掛けたな」
「お前の酒はよくない酒だ。下半身丸出しではなくとも、大声で歌いながらリョークと行進するくらい楽しく飲め。解毒薬を飲んでるから大丈夫、なんてことはないのを覚えておいてくれ」
「わかった。…………お前は本当に割り切ってるよな。ゲームするように遊びで依頼を受けてそのせいで人が死んだらどう思うんだよ?」
「不注意で死なせるということか? ソイツの運が悪かったって思うな。例えば、リョークの試運転中、誰かが忍び込んで誤射に当たったとかだろ?」
ソードが首を振った。
「大したことねーだろ、って鼻歌交じりで依頼を受けたら目の前でソイツが殺されちまった、とかだな」
「この間のことか? だから、「それがどうした」だ。……そんなにつらかったのなら私が代わってやれば良かった」
また首を振る。
「お前は目の前で死なれたことがないだろ? その場面で本当にそう割り切れるのかって……」
「私が助けたいのはお前だけだ」
その言葉にソードが止まった。
「別世界を知らない、この世界しかわからないお前と私は見えてるものが違う。私だって何も思わないわけじゃない、だが、私にとってこの世界はあまりにも殺伐とし過ぎている。こんな世界の人間がどうなろうと、私の精神を削ってまでどうこう思えない。リョークを壊されたら腹を立てる、お前を殺されたらソイツごと世界を滅ぼす。だが、他の人間にはそこまで思えない」
だんだんとソードが苦笑した。
「……別世界でお前の男だったやつが、この世界に来てるかもしれないぜ? そんでも滅ぼすのかよ?」
「別世界の私とこの世界の私は違う。それは、別世界で恋人だった男もそうだ。例え出会ってもお互いわからないし、この世界にいるとしても、さっきの言葉の通りを行う。〝私〟が助けたいのはお前だけだ」
「…………わかったよ」
ソードが頭をなでてくる。
……ちょっと困ってしまった。
どうやら、ソードが泣いてるっぽいからだ。
そんなにつらかったのなら、人命救助は私がメインで受けよう。