軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

336話 ワールズエンド・ダンスホール

扉の奥は、見るからに死人の舞踏会風だった。

見渡す光景は貴族のパーティ会場もしくはダンスフロアで、大勢の骸骨貴人と奥の中央に緑色の髪でデカパイの美人が仁王立ちしていた。

「我が名はドゥーリ。魔王様の側近、【四天王】の一人となる」

ほっほぅ。つまり、残りの階層は四天王で占められている、と。

四天王の一人ドゥーリさんは私をビシッと指さした。

「それほどまでの大言壮語を吐いたならば、我に見せてみよ!」

「こんにちは。私はインドラと申します」

私が朗らかに挨拶したら、なぜかソードが額を手で打った。

「ドゥーリさんは、魔王様の側近とのこと。いくつか質問したいのですが、よろしいでしょうか?」

ドゥーリさん、キュッと眉根を寄せた。

「我に質問したいのならば、まずはその技を披露してみよ!」

ってことなので……。

しかたない、先に踊るか。

「そうですか。では、私の踊りの報酬は、私の質問に答えていただくということでお願いいたします。――リョーク! ミュージック、スタート!」

「「あいさー!」」

フフフ。前もって『打ち込み』しておいたのだ! 演奏しないで、踊って歌うために!

いや、このときのためにじゃなかったんだけどね?

では、踊りましょう。

「ワールズエンド・ダンスホール」

軽快な音楽が流れ出す。

リョークたちはバックダンサーで踊り出し、サビに至ってはなぜかミニミニ鎧騎士クン一号まで踊り出した。

……いつの間に覚えたんだ? 君には問いただしたいことがいっぱいだぞ? 君はしゃべれないけどな!

ドゥーリさんは、始まってからあんぐりと口を開けて歌い踊る私を見ていて、ホネホネ貴人たちもフリーズしていた。

だけど、踊って歌っているうちに、振り付けを覚えたらしいドゥーリさんが一緒に踊り出したよ!

骸骨貴人もステップを踏み出した。

最後のフレーズを歌い終わると皆で飛び上がる。なんでわかった……?

曲が終わるとワーッと拍手された。いや、『ワーッ』って表現はおかしいな。ガチャガチャガチャ、って骨の当たる拍手だもん! 骸骨、しゃべれないし!

ドゥーリさん、興奮して目がキラキラしている。

そしてソードが困っている。

うん、わかるよこの状況。ソードは間違いなく『倒しづらい』と思っているね。その通りですけれど。

でも、しょうがないじゃん! 相手が望んだんだよ!

私、悪くないもん!

「なるほど。【歌姫】の称号は本物だった。今まで聞いたことのないほどの美声と音楽だったぞ!」

称号はありません。自称です。

「そうですか。ありがとうございます。それでは質問させていただきます」

手で制された。

「待て。その前に、その歌と踊りを教えよ」

…………すみません。このボス斬り捨てて、先に進んで良いですか?

しかたがない……。渋々教える。いやそもそもそんなすぐ覚えられないと思うけど? だいたい、演奏をどうする気よ。

などと考えてる私が歌と踊りを教えてる間、骸骨貴人と仲良くなったソードが、双剣の演舞を教えて一緒に舞ってるぞ。

リョークたちも歌って踊って、その周囲にいる骸骨貴人は合わせて踊ってるし。

もう、このボス部屋で戦闘が起きる気がしない。

―― ピンポーン。練習中のため、しばらくお待ちください。 ――

「……よし! これで魔王様に披露出来る! 感謝するぞ!」

意外と飲み込みの早かったドゥーリさん、覚えきってガッツポーズをした。

…………うん?

魔王様にお披露目?

私は首をかしげた。

ドゥーリさんの顔が曇る。

「魔王様は、退屈してらっしゃる。この城の管理をしているが、蘇生出来るように施しても高層に上ってくる魔族はいないし、人間の勇者ももう数百年訪れていないという話だ。それゆえ、口には出さないが寂しがっているのだ。なので、我々が少しでも慰めたいのだ」

けなげだな。でもそれは、このダンジョンが凶悪なのがいけないと思うぞ?

私は肩をすくめて、当初の質問を始めた。

「まぁ、お役に立てたなら何よりだ。――それで、ドゥーリさんはいつもは何をしている?」

「いつもは城の見回りと、魔族の方の城で執務を行っている。昨日は魔王様から、久方ぶりに攻略できそうな探検者がダンジョンを訪れるので待機しろ、と命じられていたので、ここに待機していた」

そして私たちが来た、と。

……いつもは執務をやってるのかー。

以降、上の階も文官職のボスかぁー。

「…………うむ、そうか。それでは、戦うか?」

私は念のために聞いたが、ドゥーリさんは首を横に振った。だよね。

「最高の歌と踊りを披露してもらったので、其方の勝ちだ。報酬を出そう」

ドンドンドン!

気前よく大きいのが出てきたぞー。

ソードが、「え、いつの間にそんな展開?」ってコッチを見て驚いている。

私は振り返りソードに向けてビシ!と言った。

「……ソード! このダンス対決、私たちの勝ちだ!」

「このボス部屋って、そんな展開なんだ?」

ソードが呆然としてつぶやいた。

ソードが自失しながらボス部屋を出た。

私はソードの背をさすって慰める。

「まぁまぁ、そうガッカリするな。以降、上の階層もいつもは文官で執務をこなしている四天王が出てくるらしいけどな? 強いかもしれないじゃあないか、何せ四天王だしな!」

「…………別に、いいけどな。人型は殺しにくいし。しかも、あんな感じの、無邪気な連中とはちょっと戦いたくないし。…………敵意むき出しのやつと戦いたい。思いっきり悪巧みされてもいいから、そんな感じの敵が良い」

などと、いつものソードらしからぬことを言いだしたぞ。

……なんかソードが壊れ気味?

戦えなかったのがストレスになったかな?