軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

330話 トリックでトリート

この階層は、廊下の突き当たりに大きな扉があった。

ソードと首をかしげる。

「いきなりボス部屋? ってことはねーだろうから、なんかの部屋なんだろうけどな。……なんつーか、さすが魔王城のダンジョンだよなー。今まで行ったダンジョンとは全然違うぜ」

ソードがワクワクしているな。いそいそと扉を開けている。

そこは…………

「〝だまし絵〟の部屋か!」

私は一気にテンションが上がった。

ソードは啞然。

「……なんだここ?」

ループする階段が天井にあり、絵だと思ったら物で、物かと思ったら絵の部屋だった。

「魔王様は凝っているな! ソードよ、これは『トリックアート』だ。本来は絵で表現するのだが、さすがダンジョンだな。実際に存在させてしまうのか。しかも、芸術性もあるとは。素晴らしい」

奇妙だけどバランス良く配置されている。

ソードが口を開けて私を見て、また周りを見た。

「見よ! 王国のギッラギラした品のない教会よりも素晴らしく計算され装飾されているだろう!? これが芸術というものだ!」

興奮している私をソードがなだめた。

「わかった、でもここダンジョンだから。これを突破しねーと、先に進めないから。そんでもって、コレ、フツーに突破出来ねーだろ。階段がループしてんだぜ? なんで上ってる階段の出発地点と最終地点が同じなんだよ?」

「そういうものなのだ!」

私の回答に、ハァ、とソードがため息ついた。

「で? どーするよ」

私は人さし指を上に向けた。

「簡単なのは、シャールでこの層の最上階まで飛ぶ」

「……簡単だな」

ソードがガックリした。

「だろう? せっかくだから、楽しもう! 力業は最後にとっておくものだ!」

ソードが苦笑すると私の頭をくしゃくしゃにした。

「ま、そうだな。俺たち、力業で突破出来るんだもんな。なら、遊び倒してからでいっか」

そうだよ!

そもそもが、だまし絵通じないよ私たち?

空間を歪ませてこの状態を造り出しているのも、実際の間取りがどうなっているのかも、なんでも見えちゃうアイで見える私と第六感で視覚情報なくてもどうにでもしちゃうソードの組み合わせじゃ、視覚だけで騙そうとしたって無駄じゃんか。

私は出来る限りなんでも見ちゃわないようにしてるけどさ。じゃないと楽しくないもん。

ソードはまず何をするんだろ……って見ていたら、階段を上りはじめた。

……すると、さすが第六感の男。空間の歪みを感じ取って、立ち止まっているし。

「ソード、そんなにすぐ答えを出すな」

ソードが私を振り返って、笑った。

「悪い。でも、なるほどな。俺たちにはあんま通用しねーのか」

「私は楽しむべく、なんでも見ないようにしているのだ。なのにお前は第六感ですぐ嗅ぎつけるからなぁ」

私は天を仰いで嘆息した。

だってさー、ぜんっぜん引っかからないんだもん、ソードって。

扉のような絵も、ソードはすぐに「壁に絵を描くって、すげーな」って分かっちゃうし。そんでもって。

ザシュッ!

って、絵のような魔物も簡単に見破って斬り捨てた。

「見たことねー魔物だな。……って、インドラ、どーした?」

じとーん。

ソードをジト目で見た。

「ソード! 楽しめと言っただろうが! それは、絵画! という『設定』で、罠に引っかかるのがセオリーだぞ!」

「あ、そーなの。早く言って」

んもー! つまんないなー!

しょうがないので、ソードと一緒にまわることにした。そしてソードに言い聞かせる。

「第六感を使うなよ」

「無茶言わないで」

無茶らしいよ。パッシブスキルなのか。

……しかたない。設定を教え込もう。

「いいか? この壁に描いてある扉は、一見扉に見える。だから、近づき開けようとしてから、壁じゃん! って驚くべきなのだ! さらに、よーく見たら壁のこの扉は、実はやっぱり扉で、開くのだ! そういうお約束なのだ! わかったか!」

「わかったよ。で?」

「罠に飛び込む!」

「…………」

ソードが、ハァ、とため息をついた。

「ま、いっけどな。言っとくけど、俺、普通の人間だからうっかり罠にはまったら死ぬこともあるんだよ?」

「用心しすぎだ! お前が死ぬような罠など、この世界にはない!」

「お願いだから、買いかぶり過ぎないで」

と、お願いを言いながら拳でぐりぐりするのを、お願いだからやめてほしい。

ソードが絵画に目を移し、指さした。

「で、この魔物は?」

魔物言うな! 私は憤って説明した。

「それは、『絵』だ! 『これはなんと素晴らしい絵画だ……!』などとほざきながらまじまじと微に入り細に入り魅入るのだ! そうすると、魔物が『やーい、引っかかったー!』と喜び勇んで攻撃してくれるはずなのだ!」

ソードに説明していたら、絵がブルブル震えて、ぴょーん! とどっかに飛んでいってしまった。

「「…………」」

ソードが口を開け、飛んでいった絵を目で追った。

そして、私を見た。

「アレって、お前がひどいこと言ったから逃げてったんじゃねーの?」

なんでだよ!?

「どうしてお約束がひどいことなのだ」

ソードが面倒くさそうに頭をかいた。

「……なんつーか……相手からすりゃ、わかっててわざとやられても面白くねーんじゃねーか? しかも、ご丁寧に説明されたときたら、恥ずかしいやら悲しいやらで逃げてってもしかたねーと思うけどよ」

…………。

ぷいーっと。