軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

292話 〈閑話〉プミラの婚約者とその商店その一(前話より、少し時間が経ってからのお話です)

私はプミラと申します。

兄ベンジャミンは、この国一番の商店の店長です。

その妹として、頑張っています。

頑張っています……本当に。

毎日毎日手紙を読んで返事を書いています。

私、字がすごく上手くなった!

読解力もついた!

ひどい癖字でも読めるようになった!

毎日毎日手紙と闘い、勝利し時に敗北しています。

兄にサブをつけてと本気でお願い(脅迫)したら、ようやく雇ってくれました。

手紙の仕分けだけでもありがたいです。

あ、お茶も淹れてくれるのね、ありがとう。

……はぁ、疲れた。

今日は帰ったら、インドラ様に教えてもらった〝パック〟とやらを試そう。

――あら、また来たわ。

私がこんな目に遭っている……もとい、充実した日々を送っている元になった、かつての婚約者が、最近になって手紙を送ってくるのです。

差出人を見て読まずに廃棄していたのですが、しつこく送ってきます。

まぁ、読んでも返事は書きませんし、読むだけ時間の無駄ですからね。

他にも読まなければならない手紙は、こ━━━━んなに!

こ━━━━んなに! あるのに!

くだらない手紙なんぞ読めるかっ!

…………あら、いけない、我を忘れてしまったわ。

とにかく、読む暇なんかありません。

他の手紙を読みましょう。

今日は抽選日です。

抽選イベントなるものを店頭で行っておりまして、これが非常に盛り上がります。この辺りは王都の外れで、しかも店周辺の土地は兄が買い占めているので近所迷惑にもなりません。

毎回毎回たくさんの人が集まりますけど、当選者がいましたらその場で招待状を渡すことが出来ますので……つまり書かなければいけない手紙が減るので、ぜひとも参加してほしいと思います。

大きな丸い籠を回し、それが止まりかけるとポンポン! と当選者が書かれた球が飛び出します。

空中で止まり、弾け、抽選番号と名前が大きく表示される、すごい魔導具を使っています。

抽選に参加出来ない子供たちも、これを見るために集まって、玉が弾ける度にわぁわぁと喜びます。

当選者は前に出てきて副店長から招待状を受け取ります。

このときに生体認証もされるので、たとえ襲われて招待状を奪われても、本人が来れば招待状なしでも入れますし、逆に招待状を持っていて本人と違う場合は捕まります。

なので、ここで受け取った方が安全なのです。

当選者なりすましも考えられますけど、抽選者には番号が割り振られていますし、当たるかどうかはこのときまでわからないので今までトラブルはありません。

私も助手で参加し、当選者が現れる度ににこやかに当選の祝辞と挨拶を簡単に述べます。

何しろ、書く手紙が減るので! もう満面の笑みで「おめでとうございます!」と述べます!

今回は当選者全員が現れてくれましたよ!

なんて素晴らしい日でしょう!

やったー!!

抽選会が終わり、次回の一般公開日が発表されて抽選申し込みの受付になります。

一度当選された方でももちろん申し込みは出来ますが、購入されなかった方や迷惑をかけられた方はブラックリストに入り二度と当選はしません。

逆に、一定以上の金額を購入された方やリピート率の高い高額商品を買われた方は優待証をお渡ししています。

つまりは、抽選申込されずとも、来店日予約で購入出来るようになるのです。

ただしこれも、一定期間に来店及び購入がない場合は取り消されます。

もちろん、優待証にもランクがありまして、公爵家の方々は永久不滅優待証ですよ。

当たり前です。

抽選申し込みをされる方は名前と住所をお聞きしています。

当選のお手紙を出さなくてはならないという建前で、犯罪防止のためでもあります。

ちゃんとした住所を持っておられない方は事前に落選しますし、私が以前いた町の住所と、その隣町も事前落選です。

ほぼ間違いなく連中の関係者ですから。

さーて。

戻ってまた手紙を読んで返事を書かなくちゃ。

いい加減落ち着かないかしら? この騒ぎ。

あと、手紙を読んで返事を書く人をもっともっと雇い入れてほしい。

兄の「プミラが頼りッス!」って言葉に殺意を覚えるわ。

家事だけやってくれればいいから、って言って呼び寄せたくせに!

今、家事やってるの家政婦さんじゃないの!

私が家政婦をやるから手紙を書く人を雇いなさいよ!!

…………あらいけない、また我を忘れてしまったわ。

――中に入ろうとすると一組のカップルが寄ってきました。

「…………プミラ、久しぶり」

男の方がなれなれしく挨拶されたので「また知人を装った犯罪者かしら? リョークとホーブに追い払ってもらわなきゃ」って考えつつ相手の顔をしばらく眺めて…………思い出しました。

「…………あぁ。貴方、もしかして…………」

かつての婚約者、婚約破棄してきた男だわ。

そういえば、男の腕にすがって、優越感をたたえたような顔でこちらを見ている派手な女性には、なんとなく見覚えがあります。

…………何しに来たのかしら?

そして、どの面下げて私の前に立てるのかしら?

すさまじい面の皮の厚さだわ。

もしかして、わざわざ王都まで来て、婚約破棄した女に見せつけに来たってこと?

強奪婚した女の方が、ものすごく得意げですものね。

暇があって結構な事ね。

あら、結構なことじゃなかったわね、忙しい方が儲かっているってことだもの。

一つも良いことなんてなかったわね。