作品タイトル不明
271話 つまんないから帰る!
遠くのゴミ集積場付近で騒ぎになっているらしいが放置。
「むぅ……。私が端から細切れの刑に処して引導を渡したかったが、しかたない」
「実害ないのにそこまでするなよ。仕返しを待つのがお前の信条だろうが」
それは……その通りなので渋々うなずいた。
でも、リョークや式部に狼藉を働こうとした償いをさせたいんだけどなぁ。
……って顔に書いたらしい。
ソードが真顔で説教してきた。
「あのな。リョークにしても、式部にしても、相当強いんだよ。敵の強さをお前基準で考えるなって。さっきのアイツは確かにソロでBランクは中々の実力だけどな。お前や俺と比べたら全然まだまだなんだ。いつか、俺やお前に匹敵するのかもしれないけど、現時点じゃ山の麓にいるレベル。頂に近いリョークや式部がどうにかなるわけねーだろが。
拠点にいるチャージカウやコカトリスだって、弱そうに見えるけど普通のBランクじゃ相当気合い入れないと討伐無理だから。アマトはアレでも勇者だから世話してる時にじゃれつかれてなんともないけど、普通の冒険者でアイツらにじゃれつかれたら、瀕死になるから。下手すりゃ死ぬから」
…………。
そうなのか。
渋々。
わかったよ、拷問は諦める。
ものすごーく拷問の理由付けに良かったのにな……。
今の今までリョークに手出ししてきたやつなんていなかったのに。
式部狙いかもしれないけど、式部とリョークってぱっと見よく似てるからなー。
私は唇をとがらせて言った。
「もうここは出るか。拷問できないならつまらない、いてもしょうがない」
「拷問を理由に居座らないでよ」
――そんな会話をしていたら、無線が鳴った。
『ソードさん、インドラ様。ベンジャミンですけど、今お時間あります?』
お、ベン君だ。
「どうしたベン君?」
『そろそろ、王都にお店を出そうと思いまして』
ほぅほぅ。それはちょうどいいや。
フラストレーションも溜まったことだし、ものづくりでもして発散しよう。
ベン君と打ち合わせして、王都に出向くことが決定。
王都の繁華街から離れた場所に土地を買ったとのこと。
店舗付ではなく、雑草や木まで生えている完全に土地のみだそうな。
「インドラ様のセンスでお店建ててもらえばって思って! ブロンコみたいなかっちょいいお店をお願いします!」
と言われてしまい、その気になった。
「うむ! いいぞ! レトロ且つ最先端の店を設計しようではないか! 要望を言ってくれたら全部盛り込もう!」
「あ、俺も参加したい」
ソードが挙手。
ソードもフラストレーションが溜まっているらしいね。
だから、ソードにしては珍しく、あの落ちぶれBランク冒険者クンを投げ飛ばしたんだろうね。
アマト氏も参画させたいが、王都に舞い戻らせるのもなぁ……。
タブレットに動画を送れるようにして、遠隔参加させるか。
ついでにスカーレット嬢にも声をかけてみよう。
なんかいいアイデア出してくれるかも。
スカーレット嬢とアマト氏にメッセを送った。リョークスタンプ付で。
即レス。
参画するって。スタンプ付で。
「……俺にはソレないの?」
って拗ねた口調で私の背後から催促するソード。
ホンット、ガジェット好きだなー!
「わかったわかった。開発途中のモノなので、ちゃんと作ったら渡そうと思っていたのだが、ほしいなら渡そう。アイデアがあったらアマト氏や私に伝えてくれ。アマト氏は別世界でコレの中身を作っていた職業だったので、ある程度なら作れる」
ソードが絶句した。
「……アマトって実はスゲーやつなの? お前に匹敵する?」
「私に匹敵するかはわからないが、これの中身を作るのに特化してるな。私も似たような職業だったのだがジャンルが多少違うので、アマト氏の方が得意だろうな」
私は企業向けのシステム構築だったから。
一般向けのゲームは趣味で簡単なものしか作ったことないのよねー。
「……つまり、お前らみたいなのって、別世界ではよくいるってこと?」
ソードががく然とした感じで尋ねてきたので私は首を横に振る。
「いや、別世界は様々な職業があり、それぞれ特化型なのだ。こういったものの中身を考える者、設計する者、その部品をそれぞれ作る者、全て細かく特化して分かれている。アマト氏は中身を作る者だったが、その中身を作るに当たっての道具を作る者もいるのだ」
私も別世界でのOSの作り方やプログラミングソフトの作り方はわからないもん。
ハードのチップやCPUの作り方に至っては、何を使ってどうやって作るのかすらわからんもんね。
むしろこの世界の方が分かりやすいよなー。
魔素に実現したい結果を教え込ませれば何でも出来ちゃうんだもん。
急にソードがなでくり回してきた。
「ふーん……。じゃあ、やっぱ、それを全部出来るお前の方がスゲーのか」
私は詰まった。
「…………この世界ではな。別世界ではお手上げだ」
ソードは聞いてるのか聞いてないのか、もう一度つぶやいた。
「そっか、やっぱお前の方がスゲーのか」
…………繰り返すな!
聞いていないソードが繰り返す言葉を私は聞かないフリをして、気を落ち着ける。
それでは、王都に向かおう。
アマト氏は「送迎してくれるなら行く」らしい。
スカーレット嬢は休学してでも参加したい! らしい。
王都なのでスカーレット嬢は休日にピックアップして参加してもらおう。
――というわけで、今後の予定が出来たのでとっととこの町を出ることに決定。
まだ受け取っていない買い取りのお金をもらいに、ギルドに寄る。
……受付で受け取っていると、ざわめきと何やら寒気のする声がしてきた。
ソードと顔を見合わせた後、声のする方を向いたら、向かってきたのが落ちぶれBランク冒険者クンとギルドマスター。
「ほう。あれだけ飛ばされてすぐに動けるとは、落ちぶれBランク冒険者クンはそれなりに出来るのだな」
感心したところにソードが投げやりに答えた。
「回復薬飲んだんだろ」
あ、そういうことね。
この世界、回復薬ですぐ治るってのがどうにもなー。
なんかイマイチ気に入らないぞ。
「早速報復にやってきたのか。なかなか見所があるな」
腕を組みつぶやくと、ソードが笑った。
「お前にとっちゃそうだろうな。待ち構えてるのに、だーれもやってこないもんな。見逃した甲斐があったってか?」
私は思いきりうなずいた。
じゃなきゃつまらないじゃないか!
今まで見逃してきたやつら、まとめてかかってこい!