作品タイトル不明
248話 教会に寄付に行ったよ
そんなワケで、屋台要員確保です。
屋台経営は彼らに任せます。
レジスターも一発で覚えたし、値段の相場もわかっているし、あっちこっちで雇われていた経験値が高くて安心して任せられるのだ。
……むしろ、これだけ経験値が高いのに、なにゆえに定職に就けなかったのだ?
「……私から見た君たちは、かなり経験値が高い。正直なところ、定職に就いてないほうがおかしいのだ。もしかして、私に隠している欠点がないか?」
彼女たちを見据えて聞いたら、彼女たちは驚いて固まった後、顔を見合わせた。
「……え? そーなの?」
「そんなこと言われたことないけど……」
「日雇いしかしたことねーからなぁ。リモンが『やばっ! ココ、やばくなってきたからそろそろ潮時』って言ったら辞めて別のとこに移ってるし」
リーダーが自分を親指で指し示した。
「つーか、俺ら冒険者なんスよ。コイツら全員忘れてるけど! なんつーか、冒険者としては致命的に、魔物と戦えるスキルが全員ないだけで、冒険者なんスよ!」
それは致命的すぎるだろ。
まぁ、低ランクの冒険者は日雇い労働者みたいなものだけれどな!
私は深刻そうな顔でうなずいた。
「そうか。……なかなか複雑な事情があったらしいな」
「「「「「いや、ないです」」」」」
あったことにするの!
「うむ! ならば、屋台要員だ! とりあえず、私たちと一緒に冒険についてきてくれ。いつか拠点に戻ったときにまた別の仕事をあっ旋するが、まだ帰らないのでな。しばらく内海をぐるりと巡った後、次の行き先を決め、食材が尽きそうになったら帰る予定だ。私も基本は冒険者で、今回は屋台経営のために魔物討伐に行かなかったが、できればワクワクした冒険を繰り広げたいのだ!」
黙って聞いていたソードが私の頭をグリグリなでた。
「でもよ、お前がついてくると、狩る対象の魔物に遭わなくなっちまうんだけど?」
…………。
「うぅ~……」
やだやだぃ!
私だって冒険者っぽいことをしたい!
翌日。
昨日知り合った冒険者たちがやってきたので、孤児院に寄付する用&自分たちが着る服を適当に見繕って一人五枚ずつほど買ってきてもらうことにした。
そういうの得意そうだから買ってきて、と言ったら喜んで行ってくれた。
その、戦えない冒険者パーティは【笑顔でお気楽】ってすごいパーティ名だった。
いや、いいよ?
そんなふうに生きているのだね! って納得するパーティ名だもんね。
でも、聞いただけで任せるのが不安になるよな。
リモンという十七歳の子が仕事運出会い運スキルの持ち主。
儲かりそうとか当たり! とかいう仕事を嗅ぎ分けられるらしいが、雇ってもらえるかはまた別だそうで。
リーダーは、ハッサという十八歳の子で、リモンの兄と紹介された。
というか、お気楽メンバーは全員、歳近い親戚だそうだ。
だから全員が似た雰囲気なのか。
男三女二の組み合わせ、しかもお年頃の年齢なので、やはりそういった(男女関係の)もめ事はあるの? って聞いたら全員が手を横に振った。
「まず、いとこと兄妹で構成されてるんで」
ふーん、血が濃くなるとまずいっていうのはこの世界でもあるのか。
ハッサが冒険者になった理由を教えてくれた。
「そもそも、地元にいると相手が見つからないっつーんで俺たちパーティ組んで出てきたんですよ」
あぁ、嫁探し婿探しの一環だったのか。
「冒険者登録しといた方がいろいろ便利だから登録してるんですけど、日雇いをこなしながら結婚相手探してる感じです。冒険者になって失敗したなーって思うのは、日雇いしか仕事がないんですよねー」
ふーん……。
そういうものなのか。
というか、コヤツ等、パーティ名が体を表す見本で、正にのん気な連中だ。
そのうち釣れるわーと餌もつけずに釣り糸を垂らすかのように、ボーッと嫁さん婿さんを待っている。
白馬の王子も眠れる姫も、現れるのを待っていないで自分から奪いに行かないと駄目ですよ!
って説教したけれど、
「ふーん……。そんなモンかなー」
全員が、ボーッとした答え。
……うん、まぁ、いいや。
ガツガツしていない方がいいよ。
婚期を逃しても、働いてくれればいいから。
衣食住は保証するから。
ソードがいったん帰ってきたので、リモンたちに買ってきてもらった服を持って、一緒に寄付に行った。
教会の裏手に孤児院があるそうなので、そこに行く。
「あ! 昨日のお兄ちゃん!」
私を見た小さい子が叫んだので、
「私のことはお姉ちゃんと言え」
間髪をいれず指導した。
「服を買ってきてやった。これに着替えなさい。着てたものは、洗いなさい!」
なぜかまた薄汚れているし!
どこでどうやったらそうなるのだ!?
昨日の今日だぞ!
「「「「「はーい」」」」」
キャーキャーワイワイ言いながら服を選んでいる。
下着も買ったので、当分は保つだろう。
……と、神官らしき人が来た。
深々と頭を下げられる。
「子供たちから話を聞きました。子供たちを洗ってくれただけではとどまらず、たくさん食べさせてくれたようで……」
「屋台を経営しているのだ、食い物はたくさんあるのだから気にするな。……にしても、なぜそうも汚れているのだ? 洗ったのは、私は不潔は怖いのだ。何がどうなったらそうなるのだ?」
神官も汚れているし!
なんで!?
こんな汚れている神官初めて見たぞ!
ソードにすがってプルプル震えた。
不潔、コワイ。
「……その、実は今、新しい場所に引っ越ししまして。そこが随分と汚れていまして……」
「わかった」
私は重々しくうなずいた。
ソードは予期したようにため息。
「まず、そこに洗い場を作るから、全員、身体を洗え! その汚い場所は私が掃除してやる!」
服選び、いったん中断!
食料と、洗ってほしくないモノを運び出してもらい……うん、全然ないぽいね、ソードは洗い場作成、で、子供たちも神官も身体を洗うように指示した。
私は怖くて中を見たくないので、建物ごと殺菌洗浄!
ガタガタ音がしているので神官さんがびっくりしているが、
「や、大丈夫。アイツはアレでも、ものすごい潔癖症の大魔術師だから。新居を借りてまず始めにやるのがアレだから、大丈夫」
と、ソードがなだめた。
洗い終わって出た汚れが、ヘドロの塊みたいだったので、穴を掘って埋めた。
うぅ~、よくこんな汚い場所に住めたな。
開けるのも怖いぞ。
泣きそうになったら、ソードがヨシヨシしてくれた。
「うん、頑張ったなー。よく泣くのを堪えて掃除したな。俺、下手すると泣きながら建物を破壊して埋めるかと思った」
うん、そうしたかったよ……。