軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

240話 いい感じの筋道たった

翌日。

出発しようとしたらイワナさんがやってきた。

「ソードさん! 一つだけ聞かせて! ……今でもお姉ちゃんのこと、愛してる?」

それが聞きたかったのか。

ソード、そう来ると思わなかったらしく目を瞬いた後、困った顔をした。

「…………ごめん、愛してない。ルーナは、俺の心に刺さった棘みたいなモンだった。裏切られて、もしまだ生きていて、その理由が俺を思ってのことだったら許したかもしれない。でも、彼女は俺を裏切った後理由を言わないまま死んだ。俺はロマンチックに、彼女が許せないけど理由を聞いたら許せるかもと思っていた……ダンジョンに潜るまでは。だけど潜ったら、どうでもよくなった。俺は、裏切って死んだやつより決して裏切らないで生きてる仲間のことを考えて大切にしたい。だから、もう忘れたよ」

そのセリフは思ってもみなかったようで、イワナさんはしばし固まった。

「……お姉ちゃんの、どこが好きだった?」

おおっと、質問が増えた。

忘れたって言っちゃったからかな。

「俺を気に掛けてくれた、初めての子だった。……当時は金もないし実力も隠してた。さえない盾役だった俺を、彼女は気に掛けてくれたんだ。彼女に声をかけられて初めて俺は、人をまともに見た気がした。……ま、作戦だったのかな、今思えば」

どんな作戦だ。

それは単に人当たりが良い人って表現するべきだろう。

イワナさんはソードを見つめていたけど、急に破顔した。

「…………そっか。なら、安心した」

え?

何が?

と、思ったが、イワナさんはすぐに理由を言った。

「じゃあ、私がお姉ちゃんの見た目になっても、どうでもいいんだよね?」

「あぁ。思い出して腹が立つことも、心惹かれることもない。俺には、まったくの別人に映ってる」

イワナさんはうなずいた。

「それなら良かった。じゃあ、ソードさん、インドラちゃん、気をつけて。昨日の夜は、本当にごめんなさい」

ソードは軽く肩をすくめ、私はおう揚にうなずいた。

「気にするな。あんな程度で怒るソードの、男としての度量がスプーンですくえるほど小さいだけだ」

イワナさんは笑い、ソードは細目でにらんできたが、ハァ、とため息をつく。

「その通り。疲れてピリピリしてたんだ。でも、いくら焦ってても薬を盛るのは今後もやめようね?」

って言ったらイワナさん、神妙にうなずいた。

「……お姉ちゃんより私を選んでほしかったのと、ソードさんがお金持ちだってわかって、欲が出てしまったんです。でも、そういうのはやめます。お姉ちゃんの二の舞は御免だし」

最後の言葉で思い出した。

「私もひとつ質問していいか? 当時、ルーナさんとやらは金を貯めていたようだった。しかも、かなり焦っているようだったな。なぜか分かるか?」

恋人を罠に掛けてまで、っていうのが引っかかったのだ。

普通の精神じゃやらない。

脅されたにしろたくらんだにしろ、ダンジョンの宝を倍増させるため恋人を罠にかけるというのは、そうとう追い詰められていたとしか考えられない。

イワナさんがハッとして私を見た。

「…………。当時の私は小さかったので、あまり詳しくはわかりません。でも……。お姉ちゃんは、ちゃんとした神官になりたかった。見習い神官と神官は全然待遇が違うんです。ちゃんとした神官になるには、推薦と寄付が必要です。ただ、マナ量や魔術力が飛び抜けているみたいな特別な人じゃない神官だと、空き枠が出たら推薦してもらうしか手がないんです。当時、空き枠がでました。お姉ちゃん、絶対に推薦してもらうって言ってました」

ふむ。

その、寄付と推薦に使う金が大至急必要だったのか。

でも、それでも理由には今ひとつ弱いけどな。

ソードを駒にする必要性がわからないんだよなぁ。

「……女性が神官になったら、結婚出来ません。神に捧げる身ですから、異性に捧げてはいけないそうです。お姉ちゃん、ソードさんと付き合ったばかりなのに、どうするんだろうって思ってたんですけど……」

「「え」」

ソードと顔を見合わせた。

ソード、やっちゃったよね?

うん。やっちゃった。

って会話を思念でした。

「……なんとなく理由が分かってきた。金を大至急かき集めたかった理由と、その生贄にソードが選ばれた理由も」

「…………うん、俺もわかった気がする」

ソードの背中をポンポンたたいた。

当時、教会の神官(魔力いらない)の空き枠が出た。

その空き枠は、そうは出ないんだろう。

瓢箪から駒の出来事で、そこになんとしてでも滑り込みたかった。

だけど、彼女は恋人がいた。

最近出来た恋人だ。

交尾までしちゃってた。

……女性が神官になるには未開通の乙女でなくてはならない、ぽい。

恋人の口封じをしなくてはならない、そして大至急金をかき集めたい。

彼女がダンジョンの仕組みを知っていたかどうかはわからない。

だが、仲間か彼女かが持ちかけて、双方同意したのだ。

「うん、私の中では筋道が良い感じで立ったな」

「俺もなんとなくわかったから、聞かせないでね?」

一応まだロマンチックな理由を当てはめていたいらしい。

ソードの憂いが晴れたところで、また旅を続けます。

マップを見ながら相談した。

「ここは内海かな? 面白そうだから行ってみないか?」

「内海? 海ってこと? 湖とかじゃなくて?」

うなずく。

「海水が入り込んでるのが内海だ。ちょっと距離があるので湖かも知れない。確かめてみたい」

ソードが乗ってきた。

「いいぜ。ここは俺も行ったことねーしな。……まだまだたくさんあるな。俺を知らない連中もいるんだろうな」

それは無理! その町にギルドがある限り知られてると思う。