作品タイトル不明
226話 月下で恋愛談義しようよ
そのまま寝ずに、明鏡止水を愛でつつ、ソードは酒を飲み、私はリュートを奏でた。
ソルの【月光】。
クラシックギターの定番だよね。
その後は【アランブラの思い出】。
これは、正直、今の私でなければ綺麗に弾けなかったと思う。
ソードは目を閉じ、酒を飲みながら演奏を聴いていた。
うん、目を閉じてたら折角の景観が見られないじゃないか、景観と一緒に楽しんで欲しいんだけどなー! ……とは思ったけど、たぶんに目を閉じてるのはかつて別れた恋人を思い出してるのだろうと察したので、何も言わずに演奏した。
……かなり感傷的になってるので、ソードはかなり好きだったんだろうし、別れ方も悲惨だったんだろう。
理由が聞きたい、って言ったってことは、ソードは別れる気はなかったのに、唐突に別れを告げられ抜き差しならない状況で一方的に去られたんだろう。
黙っていなくなったならソードは探すだろうし、ソードの力量で見つけられないわけがない。
……ふーむ、だから女性不信でふにゃんなのか。
今の私は恋をしたことがないし、別世界の私と違って気軽に人を好きになることもないので交尾したいほどに異性を好きという気持ち自体がわからないのだが、ソードの拘りようと感傷的になっている様を見ると、ますます遠慮したくなるな。
ソードと私が恋愛関係でなくて良かった。
私は…………たぶん、無性なんじゃないかと思う。
確認をしたことはないのだが、どっちもない気がする。いや、男じゃないのは一目瞭然だけどさ。
なので一応【女】と言うことにしているが、初潮もまだで、胸の隆起も無し、『コチッ☆』とした手触りだ。
さすがにこの年齢ではおかしいと思ったこともあったのだが、気にしてないので今に至る。
――まぁ、女性だろうが男性だろうが無性だろうがどうでもいいのだ!
私は誰とも交尾する気も無ければ番になる気もないからな。
男に間違われるしソードもからかってくるので自虐ネタとして女性を言い張っているが、間違われて困ることなど一つもない。
何せ私は誰もが見惚れるほどの美脚を持つからな!
ソードは余生に私と一緒に暮らすと言っているが、誰かいい女性がいたらその人に託し、私はリョークや他ゴーレムを侍らせてどこかドラゴンのいない浮島で暮らしたい。
そして二度と転生しないように、魂を永眠させる魔術でも探すか。
演奏しながらそんなことを考えていたら、いつの間にかソードが目を開けてこちらを見ていた。
「……いつか冒険し尽くして、お前がもう引退していい、ってなったら、俺と暮らすんだよな?」
…………。
なぜに考えが読めるのだ。
「……お前の情緒を揺さぶるような女性に出会わなければな。出会ったなら、遠慮なくそちらを採れ」
「なんだよソレ」
抱きついてきたよ、酔っ払いが。
「……お前は、前世の男がいたらどーするよ?」
また聞いてきたし。
「どの前世の男がいたとしても、それは別世界の私と付き合った男だろう? 今の私は、未開通だ! 誰とも付き合ったことがない、乙女だぞ!」
「…………うん、そうね。…………うん、乙女、ね」
キーーーー!
「その溜めはなんなんだ!?」
揺さぶってやったら、降参した。
「わかった。そうだった。乙女ですよね。うん。俺と違って、未使用だ」
「開通してないぞ! 疑うなら確認して見ろ!」
「や、ごめん。遠慮する。見たくないし」
なんだとぅ!?
乙女の秘密の花園を見たくないだとぅ!?
むしろ見せつけてやりたくなったがヨシヨシと宥められた。
「うん、お前は乙女だ。で、俺はちょっと使っちゃったけど、まぁ、ほぼ新品だから」
「使用早々に壊れて使用不可の……いたいいたい」
ぐりぐりされた。
「だから、俺といたら安全だろ? お前の貞操を襲う心配もない。……ま、お前を襲う男もいねーだろうし、たとえいても返り討ちだろうけど……。俺なら、お前の操も守ってやれるしな」
……まぁ、男に間違われる現状、むしろお尻の心配をした方がいいのだろうが、どっちみち私を襲えるような力量の男はいないか。
「ふむん。……でもソード、お前はちょっと女難の相があるのだろうが、すぐに諦めるのもどうなんだろう? 女性を愛したことがあるのなら、もう少し女性に対して気楽で寛容な気持ちになればいいのではなかろうか?」
「……そこまでしてまで付き合いたいって思わないから無理なのよ」
うぅ~、なるほどな。
それは壊れているな、さすが機能不全。