軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

211話 ベン君の頼み

ある程度の 目処(めど) が立ったので、何度も中断した冒険を再開する。

ベン君たちも、もう少し休んだらまた仕入れと販売をするらしい。

酒はまたオークションにかけ、スパイスと米を仕入れて戻るということだ。

ソードと出立の準備をしているとベン君がやってきて、姿勢を正して言った。

「俺、大分稼がせてもらったんで、もう少ししたら王都に店を構えます」

ソードと私は手を止めてベン君を見る。

ほぅ。

やっぱり商人は店を構えるのが夢なのか。

「そうか。……そうなると、仕入れは別の者に託すのか?」

「や、逆に店を知り合いに託します。商人は仕入れてナンボだし、そこが腕の見せ所だって思ってるんで。……で、頼みがあるんスけど、酒をうちで独占販売させてほしいんです」

ベン君は真剣な表情で頼んできたが、私は気楽に答えた。

「それは構わないぞ。ベン君には、私が一番ほしかったものを手に入れてもらった恩義がある。余程のことでない限り、君の望みはかなえよう」

「そう言っていただけるとありがたいッス。……それじゃ、もう一つお願いしていいッスか?」

ベン君のお願いは、店が出来たら防犯システムを構築してほしいということだった。

何しろオークションで金貨が飛び交う商品を置く店だ。敷地は一等地を買うつもりだし警備もつけるが、下手をすると貴族が盗賊団を雇って襲わせるかもしれないということだ。

「うむ! それならば、リョークも貸し出そう。但し、かわいがってくれ」

「そりゃもちろん! うわー、助かるッス。リョークがいれば大体何とかなりそうッスね」

「……なり過ぎな気がするけど、ま、しょーがねーな。俺も、酒が盗み出されるのは絶対許せねーからな!」

ソードが力いっぱい言ってる。

「まぁ、俺のバックにソードさんがいるって分かってて襲うのって、一部の貴族くらいだと思うんスけどね……」

ベン君がつぶやく。

そうなのか。

……皆そう言うけど、本当なのかな?

この屋敷もいまだ襲撃を受けているらしいんだけど。

どうせならいるときに攻撃してくれれば良いのに、いなくなったら襲ってくるんだもんなー。

「まぁ、何かあったら無線連絡しろ。はせ参じるぞ! 捕らえた盗賊を店の前に逆さづりにして、どこまで生きていられるか試してやろう!」

「や、ソレやられると客の入りががた落ちになるんで、ホント勘弁ッス」

ベン君が私を拝みつつお断りしてきた。

むぅ。

見せしめにした方がいいんだけどなー。

まぁ、まだ先の話だそうなので、決まったら連絡くれと伝えた。

私とソードは旅に出る。

出立時に全員に見送られたが、ふと振り返った。

「……お前たち、もしも貴族の使用人に戻りたいのなら、私がスカーレット嬢に口利きしてやるぞ? 私は、貴族のフリをしている偽物だ。こうやって、冒険者として長く屋敷を空ける。お前たちの 矜持(きょうじ) を満足させるには、本物の貴族に仕えた方が良くないか?」

私の言葉に、なぜか全員が凍りついた。

ソードは私を見た後、使用人たちを見て、苦笑した。

「お前らを 想(おも) っての、インドラの言葉だよ。俺たちは、俺とインドラは、冒険者を辞めない。冒険をし続ける。……貴族サマと違ってな。公爵家のメイドを見て、ちゃんとした貴族に仕えてないお前らをコイツは 不憫(ふびん) に思ってるんだ。だから、インドラにちゃんと伝えてくれ」

全員が視線を交わし合い、メイド長と執事がうなずき合図し、メイドたちが進み出てきた。

「……インドラ様。私たちも、インドラ様が私たちを思いやって下さっているのは重々承知しております。私たちの 想(おも) いをかなえるため、あえて、貴族の振る舞いを、この屋敷でなさっていることを。――ですが、私たちは、インドラ様が貴族であろうとなかろうと、どうでもいいのです。インドラ様にお仕えしたいのです。……インドラ様が重荷でなければ、私たちはずっと、インドラ様ご自身にお仕えしたく願っております」

「私たちの態度に不満がおありでしたら、むしろ、気遣いされるより、お伝え下さい。私たちは、何にも縛られておりません。自分たちの意思で、ここにおります。インドラ様にお仕えしております」

「――二人の言ったことが、全員の総意です。そもそも、貴族の使用人で満足していたならこの屋敷におりません。私たちは、インドラ様に仕えたいと思い、ここまでやってきたのですから」

…………。

「…………そうか。余計な気を回したな。それなら良いのだ。好きにしてくれ。何をしようとも、とがめる者はいないし、私に仕えたいならば仕えてくれ。私も好きなように生きている。お前たちも好きなように生きてくれ」

「「「はい」」」

…………そっか。

それなら、良かった。

満足してるかはわからないけど、後悔していないなら、それでいい。

「では、行ってくる」

ソードも片手をあげて挨拶する。

「インドラのことは任せろ。コイツが満足するような冒険を繰り広げてくるからよ」

その言葉に私は満足してうなずいた。

「うむ! ようやくソードもその気になったか! お前は英雄様とか、ププ、言っちゃいながら小市民だから困っていたのだ!」

皆がドッと笑う。

「俺が言ったワケじゃねーだろが」

「ぎゃー!」

目をつり上げたソードにアイアンクローされた。