軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

204話 羽目を外そうよ

運転手希望者を募ったら、公爵家使用人から多数の挙手が!

メイドまで!

もちろん公爵も!

「あと、気になってるのが、アレなのですが」

……と、アンの指さした先にあるものは。

「あぁ、ブロンコか。アレは馬の代わりだな。乗りたいなら、ソード……でなくても執事や使用人が教えてくれるぞ。但し、防具が必要なので、そろえてくれ」

ブロンコは人気だなー。

スカーレット嬢は、

「さすがにバイクは無理ですわ」

と辞退したが使用人たちは、シャール・ノンバイオレンス、スペシャルエディション……長いわ! シャールの妹分としてシャノンにしてやる! ……のシャノンと同じくらい乗り手に手を挙げた。

だが、言い出しっぺのアンが尻込みしてる。

「お嬢様が乗らないのでしたら……」

たぶん、常に斜め後ろに控えてないと駄目だと思ってるのだろう。

確かにそれはメイドの 矜持(きょうじ) らしいが……。

ため息をついて、説得。

「なぁ、アンよ。せっかくバケーションに来たんだ、お前も息抜きしろ。休暇だ、休暇を取れ。うちの屋敷の住人はこれでも貴族の使用人だった者たちで、古株は先代や私の母親から付き添っている者もいる。ベテランぞろいなんだ」

「ですが、そういうわけには……」

「気持ちは分かる。メイドの 矜持(きょうじ) なのだろう? 主人が許そうが、自分が許せない。だが、逆にな、お前がそう厳しく自分を律していると、主人も休めないのだ」

霹靂(へきれき) を受けたような顔をした。

「メイドがメイドたれ、というのは、暗に、主人に主人たれ、と強要してるのだ。スカーレット嬢だって、バケーションに来たんだ、そして、選ばれたのは私なのだ。つまりは、貴族のマナーを少しばかり放り出して、羽目を外したい気持ちはあるのだ」

ちらり、とスカーレット嬢を見やった。

「だが、お前がメイドとして常に付き従っていたら、スカーレット嬢は羽目を外せないだろう? 学友の私に見せる素顔もあるのだ。息抜きしたいときもあるだろう、それを察してお前も休め。――お前には、私の言ってることが分かるだろう?」

アンが目を見開いて私を見つめている。

そして、しばらく見つめた後、メイドの最敬礼をした。

「……助言、ありがとうございます。わかりました、お嬢様をお願いいたします」

「あぁ、請け負った。……というわけでな、スカーレット嬢、しばらく私と共に羽を伸ばせ。なに、ここは平民の集まる屋敷だ。おまけにここの仕組みは貴女の方がメイドよりも数段詳しく慣れているはず。私が、別世界で平民が食べていた料理でも振る舞ってやろう。まさか、〝箸〟が使えないとは言うまい?」

「えっ? ……ってことは?」

「〝うどん〟、〝ラーメン〟、〝焼きそば〟。――〝米〟を運んでいるベンジャミンという商人が帰ってこないのは痛いが、〝麺〟は私の得意料理だ。〝パスタ〟は料理人が振る舞うが、もっと庶民的なものを作ってやろう。他にも、〝お好み焼き〟に〝ピザ〟もあるか。〝米〟料理以外のリクエストがあれば受け付けるぞ? 私は別世界でもかなり料理が得意な方だったからな」

「わーいわーい」

万歳小躍り。

うん、この時点で既に羽目を外している気がしなくもないが、メイドたちは黙殺している。

……すると、後ろからガシッと肩をつかまれた。

振り返ったらショートガーデ公爵が目をキラキラさせながら私を見ている。

「私も羽目を外して良いかな? その、庶民の食べ物とやらに、非常に興味があるのだが」

…………うん。私はいいけどね?

娘に嫌われないように、ホドホドにした方がいいよ?

結局。

ブロンコも作って貸し出すこととなった。

但し!

それじゃ単なる玩具になるので、バイク便をお願いした。

「サイドカーを付ける。二人組で、ブロンコで紅茶を運んで欲しい。馬車で五日の行程なら、ブロンコなら三日で着けるはずだ。ただ、運転テクニックは必要になるので、それなりの人選で挑んで欲しい。サイドカーは交代要員なので、サイドカーに乗っている者はきちんと身体を休めろよ?」

サイドカーはシャールの追随機能を用い、風魔術と重力魔術で、タイヤなしで浮遊するようにするか。

もちろん危険防止で急停車無し、走行中は魔素障壁を展開だな。

「全てに無線が付いている。私とソード、あとは護衛のリョークにつながるので、何かあったら無線で連絡してくれ。Sランク冒険者の名に賭けて、たとえこの星の反対側にいようとも、瞬時に駆けつけよう!」

「おぉ! さすがはソードのパートナー! 速さも匹敵するか!」

公爵が 讃(たた) えてくれたので気分良く答える。

「うむ! ソードには少し負けるかもしれないが、私もなかなかだぞ!」

それを見ていたスカーレット嬢が、我関せずを貫いていたソードに、

「……ねぇ、あの二人って、近しいものを感じませんこと?」

って聞き、

「言わないで。俺も薄々感じてたから。でも、現実を直視したくないの」

って答えてた。

シャノンの運転は、スカーレット嬢はもちろん一発合格。

S字、クランク、停車、幅寄せ、完璧だった。

スカーレット嬢いわく、

「カメラが付いている分、かなり楽でしたわ」

だそうだ。

他の候補者には執事が講習をしていた。

ブロンコの講習はブロンコ大好きな使用人とメイドが請け負った。

女性にはメイドが、男性には使用人が教えている。

公爵もブロンコに乗りたがったが、止めた。

「馬から落ちれば大ケガを負うが、ブロンコから落下して大ケガで済めば幸いだ。そして、シャノンよりもブロンコの方が死亡率が高い。乗り方は教えても良いが、乗り回すのは、公爵家当主ならばやめておいた方がいい。練習にとどめておかないと本当に危険だ。スカーレット嬢はそれがわかっているから乗らないのだ」

「むむ! ……そういうことなら、諦めましょう」

お、意外と往生際が良かった。

公爵はすんなりと引き下がった。