軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

188話 悪役令嬢はダメンズがお好き

スカーレット嬢、パン!と両手をたたいた。

「さて、趣向としては面白かったですわ。残念ですけど、 私(わたくし) を陥れるには足りませんでしたわね。まだ続けますの? それでもよろしいですけど、プリムローズ様、ジーニアス様、お覚悟なさって? これ以上は公爵令嬢として、 私(わたくし) も戦わせていただきますわ。……それと、エリアス王子」

甘ったれ泣き虫王子がすっごい嫌そうな顔をした。

「…………なんだ」

「確かに、インドラ様の言う通りですわ。 私(わたくし) が婚約者としてご不満でしたら、王子、貴男が王子を降りて平民に成り下がるしか手はございませんわよ? 平民になったら、 私(わたくし) の家の下男でもなさります?」

「なんだと!? その前に、お前が婚約者を降りれば良いだろう! プリムローズに譲れ!」

……えー。

スカーレット嬢、なんでこんなんが良いワケー?

もっとマシな男はいっぱいいると思うけどー?

「スカーレット嬢は、駄目男好きだな。私は無理だぞ、こんな駄目男。この、打たれ弱い自惚れ男の心身共にコテンパンにして、私の顔を見た途端に地面にめり込む勢いでお辞儀をさせるまでに調教してやりたい」

「それは、インドラ様がドSだからですわよ? 調教なんて言葉、普通使いません」

こちらを向いて、ニッコリ笑顔で言われた。そうなのか。じゃあ、ソードと二人でドS冒険者パーティだな!

スカーレット嬢は再度王子に向き直った。

「 私(わたくし) 、自分より劣る人間に何かを『譲る』など考えられませんの。それに、まずその前に現王とその側近の方、そして我が父に了承を得てからおっしゃってくださいな? でなければ、本当に『元』王子になりますわよ?」

「その前に、お前が……」

「うるさい」

王子のすねを蹴っ飛ばしてやったら、ゴロゴロ転がってうめいてる。軽く蹴っただけなのに大げさな。

「私の嫌いなタイプだ。自惚れが強く、自尊心の塊で、現実が見えず、チヤホヤされることを当たり前と思う反面、チヤホヤする人間を軽蔑する。厳しいことを言われ慣れておらず、言われると逆恨みする。与えられるのが当たり前の生き方だったので、他者への配慮に欠ける。

婚約者にしてもそうだ。『与えられたもの』だから自分の所有物のように思っているが、気に入らないと捨てようとする。それが、人間であり公爵令嬢であったとしても。『婚約者』ではなく、『与えられたもの』だから」

私は転がり呻く王子を見下ろし、スカーレット嬢に言う。

「気に入らないなら、王座と共に全てを投げ出しプリムローズの手を取り逃避行して極貧のうちに死に至ればいいのに、玉座も地位も貴女もあくまでも自分の所有物として自分の好きなように思うがままに動かしたい。

――まとめると、躾のなってない甘ったれの駄々っ子だ。私も不本意ながら、ゴロゴロ転がってるこの男の言葉に従い、サクッと婚約を破棄し別の男性に乗り換えることをお薦めしたい。……よりにもよって、コレはないだろう。ひどすぎだぞ? 貴女はもしや、駄目男好きで高名だったんじゃないか?」

スカーレット嬢、ため息をついた。

「……確かに、現実を見ないようにしてますけど。だって、バラプリではあんなにかっこよかったんですもの」

ソレ、ゲームじゃん。

私だって別人になってたらしいし、なんなら自分だって別人になってるじゃん。

「別人だ。コレが魅力的っていうなら、貴女は真性の駄目男好きだ」

スカーレット嬢が首を横に振った。

「別人かもしれませんが、バラプリの王子への思いが、今まで 私(わたくし) を支えてきたのです。…… 私(わたくし) は公爵令嬢で、エリアス王子の婚約者に指名された者。エリアス王子がどのような方であろうとも、 私(わたくし) に選択権などございません」

スカーレット嬢が暗い声を出す。

うむむ。そう言われると……貴族の女子は当主の政治の駒扱いだったな。

駄目男と有無を言わさず婚約させられて、バラプリとやらのゲームでかっこよかったキャラに外見くらいは似てるなら、投影して心の慰めにする気持ちも、わからなくはな……くはない。

「……貴女がコレの婚約者に指名された、ということは、この駄目男を調教してなんとか王座に座らせられるくらいに躾し直せってことだぞ? 少なくとも私は、こんなやつが王に就くなら王宮を爆破してやるな」

「わかりましたー。なんとかしますから、爆破しないでください」

まぁ……どちらかといえば、コイツは廃嫡してプリムローズと逃避行して欲しいなぁ。

せっかくのおいしい紅茶の仕入れ先に、コイツがつながってると思うと嫌だ。

だけどひとまず、そのことは置いておく。

私は張り切って宣言した。

「これでスカーレット嬢のえん罪は晴れただろう。――さて、これからが待ちに待ったお仕置きタイムだ! えん罪に陥れようとした罪を、コイツらにどう落とし前をつけてもらうか考えよう!」

悪役令嬢としては活躍できなかったが、お仕置きダベ~をやっちゃうぞー。

「全員裸にむいて土下座させたところに、貴族連中が使ってた焼きごてでも押してやろうか? んー、それならいっそ『今後二度と公爵令嬢に逆らいません』っていう文言を回復薬でも治らないように刻み込んでやるか? 他にはスカーレット嬢を見たら思わず土下座するほどに激痛が走るようにするか。その両方にしようかなー」

ウキウキワクワク。

「……スカーレット公爵令嬢! 僕は、絶対にもう、二度とプリムローズに近寄りません! ですので、僕は助けて下さい!」

怯え泣きながら必死にすがってきたのはお漏らし音楽少年。

「 私(わたくし) 、別に貴男が彼女に近寄っても構わなくてよ? それよりも、 私(わたくし) に近寄らないで下さる?」

さりげなく三歩ほど下がるスカーレット嬢。

お漏らししてるもんね。