軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

169話 寝言だと思いました……

私がソードに教えた別世界情報もひどい有様だったが、スカーレット嬢はもっとひどかった。

「 私(わたくし) 、転生前に[ 薔薇(ばら) 色☆プリンセス]っていう乙女ゲーをやってまして、それがこの世界に酷似してるんです」

だよ?

私、一瞬耳の穴をほじくってしまったよ。

「……うん? なんだろう、翻訳を間違えたかな?」

「ごまかさないで聞いてください!」

なぜか叱られた。すみません。

「プリムローズって名前の子が主人公で、平民だったけど、実は父が伯爵で、伯爵家を牛耳っていた伯爵の妻が死に、ようやく引き取られたんです。そうしてそこで暮らすんですけど、引き取ってくれた伯爵以外、誰からも冷たくされて、特に姉のインドラにはひどい仕打ちをされて……。姉が、父親が自分を構ってくれないのはプリムローズのせいだ! って、当たるんです」

「「…………」」

うーわ。

思わずソードが無表情になってカップを置いたぞ。

そして、うちの拠点にいるメイド嬢と使用人には聞かせられない話だな。

スカーレット嬢、ソードの仕草に驚いている。

侍女も警戒しだした。

二人を手で制した。

「ソード教官のことは気にするな。それは、別世界のゲームの話だ。私は面白く聞いているから、続けてくれ」

スカーレット嬢、ソードを気にしつつうなずいた。

「え、えぇ。……そして、王都の学園に入学します。腹違いの姉も一緒にです。姉は、父親の前ではしおらしかったので、父親は姉の本性には気付いていませんでした。ですから『妹の面倒を見てやってくれ』と言って笑顔で返事をした姉と共に送り出しました。……と、イントロダクションがそんな感じで、学園に入学するところから始まります。攻略対象は、王子、その側近、騎士団長の息子、あと、王子の弟、音楽家の男子と、教師もいましたわ。ここでは教官と呼ばれていますわね」

ここまではふんふんと聞き流していたが次の言葉に驚いた。

「さらに裏ルートで、悪魔に取りつかれた、実は魔族の男子という設定がありましたわ」

思わず身を乗り出し、ソードも驚いたようで身じろぎした。

「プリムローズは光魔術と聖魔術を使えるので、それで取りついた悪魔……実は恨みを持っていた霊を除霊し、魔族の男子に永遠の愛と忠誠を告白される、という流れでしたの」

「それ、裏ルートしか面白くないんじゃないか? 永遠の愛と忠誠はいらんが」

除霊はすごいな。

私は出来ないぞ。

プリムローズに今度聞いてみよう。

とか考えてたら、スカーレット嬢に憤られた。しかも変な言葉で。

「……乙女ゲームをやらない男子には分かりませんけど、 私(わたくし) は王子推しでしたの! でも裏ルートのカイン君も素敵でしたけど……」

男じゃないです。乙女ゲームはやりませんでしたけど。

「……ソイツは見つけたか?」

ソード教官が真顔で聞いてきた。

スカーレット嬢は首を振る。

「多少の 齟齬(そご) があるのです。そもそもインドラ様が、平民の、しかも男になって特別クラスに編入してきたなんてかなりの 齟齬(そご) なんです。攻略対象に当たる教官もいませんでしたわ」

スカーレット嬢、ここで何かに気付いたようで、首をかしげた。

「…………あら? そういえばその教官、なんでも元平民で学園に来る前は有名な冒険者だったとかいう設定だったような…………」

「お前だな」

ソード教官に言い放った。

「え、俺、無理。つーかプリムローズとやらに会ったら殺しちゃいそう」

「え?」

スカーレット嬢が目をパチクリさせた。

「……多少の 齟齬(そご) どころじゃないんだよ。もしかしたら『プリムローズとやらが見た事実』はそう認識してるのかもな。でもよ、実際は違うどころじゃねーよ」

ソードが吐き捨てるように言った。