作品タイトル不明
160話 ありきたりの展開を楽しみたいだけなの
うーん、動きがないので困る。
まめに休憩時間に学園中を練り歩いているのだが、ふんわりさんが密集している場所もないし……。もっと言うなら、私が一番密集させてるし……。
そして、とってもとってもか弱そうにしてるのに、アレ以来誰からもインネンつけられないし……。
貴族の学園なんてすごい上下関係厳しいはずなのに、平民なのになぜ誰からも何も言われないのだろう?
セオリーなら、「卑しい平民がなぜ廊下の中央を歩いてるんだ?」とか何とか言いがかりをつけてくるはずなんだけど。
別パターンで、『誰かがぶつかってくる』〉〉『相手、わざとらしく倒れる』〉〉『大仰に騒ぎ立てられ 濡(ぬ) れ 衣(ぎぬ) を着せられる』がセオリーなんだけどなー。
むしろ廊下を歩く貴族から避けられてる気がするんだよなー。
教室に戻ってくると、同室の子、スワン・バリー君が寄ってきた。
彼は同室のよしみで平民の私とも仲良くしようとしてくれる、らしい。でも、私、長くはここにいないから気を遣ってもらわなくても良いんだけど……。
「どこに行ってたの?」
「……普通、私のような平民が廊下を歩いてたら、三歩歩けば貴族に絡まれる、みたいな事態を期待してたんだが、誰も何も言いがかりをつけてこないのだ。不思議に思って、あちこち歩いてみた」
スワン君、口を開けた。
「やはり、誰も言いがかりをつけてこない。なぜだろうか? スワン君は、なぜだと思う?」
「…………わからないけど、でも、そう思って歩くと、意外とそういう事態が逃げてくのかもしれないね」
ソードみたいなことを言った。
「でも、どうして絡まれたいの?」
恐る恐るスワン君が聞いてくる。
「ん? その方が面白いからだ!」
言い切ると「本気かコイツ?」みたいな顔をされたよ。
「……面白いの?」
「そういう、いかにもありきたりの展開が無いと、面白くないと思わないか? か弱そうな美少女……じゃなかった、美少年が、いかにも三下貴族! といった鼻持ちならない不細工な連中に『お前の存在がただただ不快なんだよ』とか何とか絡まれる! ありきたりだがよくある話とは思わないか?」
「…………う、うん。僕にはよくわからないけど…………」
スワン君は、あまり小説を読まない方かな?
「まぁ、いいんだ。私はありきたりだと思うんだ。で、せっかく学園に入学したんだから、ありきたりのよくある話を堪能したいんだ!」
「…………インドラ君って、変わってるね」
って、締めくくられた。
「つまり、インドラ、君はわざと事件を起こすような 真似(まね) をしているということか?」
って声がし、振り返ると、やたらキラキラしい男が二人立っていた。
「心外だな。私は、自分から事件を起こそうなんて思っていない。ただ……そうだな、学園最強の座を目指している。だから、手っ取り早く、挑む者を募集するために歩くわけだ」
一人があきれ、一人が目を細めた。
「学園最強の座? ならば、実技の模擬試合で勝負を挑めばいいだろう?」
「あぁ、それはダメだ。つまらないし、そもそも私は試合を禁じられている。相手を殺してしまうし相手の攻撃は何をせずとも防げてしまうし。試合にならないらしい」
問いただしてきた少年も、とうとうあきれた。
「……大言壮語にしても、立派だな。君は、現在の学園最強の者を知らないのか?」
「知っている。ソード……教官だろう? だが、教官だからなぁ。出来れば学生で絞りたいのだ」
全員があきれた。
ざわついてる。スワン君なんか、真っ青になってるし。
「どうかしたか? 当たり前すぎた答えだったから、つまらなかったか?」
「……学園最強の座は、こちらのエリアス王子に決まっているだろう⁉」
王子だったのか。
道理でキラキラしい。
「ふぅん。アレだな、接待試合というヤツか。周りも大変だ。……違うんだ、私はそういうのを望んでない。もっと、心躍る感じの展開に引かれているのだ」
スワン君、ワッと泣き出した。
え?
泣くほど感動するようなトコ、あった?
「……接待試合とはよく言った。お前は平民ながら見所があるな。よし、次の剣術と魔術の時間、お前に勝負を挑んでやる」
私は肩をすくめた。
「教官が許してくれるならいいぞ。私の一存では決められないのだ。だからこそ、野良試合を求めて歩き回っているわけだしな」
「決闘を申し込む!」みたいな展開も悪くはないけど、それってソードが許してくれなさそう。
「 卑怯(ひきょう) な手を使うなよ? 私が教官に必ず許可を取ってやるから、首を洗って待っていろ」
と言われたので
「まぁ、頑張れ。お前は 卑怯(ひきょう) な手を使っていいぞ? その方が面白いからな!」
と答えた。
激怒された。
なぜだろう?