作品タイトル不明
143話 美形エルフから依頼を受けたよ
翌日。
気乗りしないが、一応全部を見ることにする。
「……私が剣や防具の収集家……まではいかなくとも、普通の冒険者であるなら、この町への興味ももう少しあった筈なんだが。生憎、木刀でなんとかなってしまう悲しさよ」
ソードに愚痴ったら、ソードも愚痴った。
「俺もなぁ……。だって、お前にもらったレーザー剣を知っちゃうとさぁ、アレでよくね? って思うワケよ。突きは出来ないっつーけど、だったらガンでいけちゃうし、なんつーか、虚しいから今まで集めた剣で戦ってるけどさぁ」
虚しいらしい。
「私はもっと虚しいぞ。自分で作った玩具の使いどころが見つからないんだからな」
折角のマゼンダカラーのレーザー剣、一度もお披露目してないですしー。
「まぁ、レーザーには弱点がある。教えないがな。アマト氏辺りは知っているかもしれないが、この世界の者にはわからないだろう」
「え⁉ そうなの⁉」
ソード、吃驚してる。
「だから、なんでもアレでいけると過信するなよ。それこそ奥の手で使わないと、そこを突破されると打つ手が無くなるかもしれん」
「了解! 自重する」
らしい。
端まで見て、気になった店に入って、ソードしか相手にされなくて、ソードが怒って引っ張り出されて……ってのを繰り返し、疲れたなーと思い、広場っぽい道に出た。
そこは、露店……いやもっとすごいな、地面に布を広げて売ってる。青空骨董市みたいな状態だ。
むしろ、こっちの方が面白そう。
価格もかなり安めだし、正直ヤバ目のもいっぱいある。素人の私が見てもなまくらなのとかね。
通りを歩くと客引きが凄いが、ソードにも私にも遮音の魔術を掛けて聞こえないようにした。
ブラブラと冷やかしで歩いてると。奥に、ぽつんといるのは、昨日すれ違ったエルフだ。
「「「あ」」」
向こうも、私達を覚えていたらしい。思わず声が漏れた。
美形エルフさん(性別不詳、年齢は私と同じくらい)は、この町の人だったのか。
そして何を売ってるか…………うん? 首を傾げた。
「これは、なんだ?」
「あ、あの、その、えっと。か、風魔導具と、紙を、切って、紙を、風で、舞い上がらせてる、って、だけなんですけど……」
金属板の上を、紙がヒラヒラと舞っている。
それは蝶々のようでもあり、木の葉のようでもあり、桜吹雪のようでもあった。
「……惜しいな」
「え?」
「どうせなら、単に切り刻んだ紙を舞い踊らせるだけじゃなく、紙に形を持たせれば、もっと華やかなものになる。たとえば、蝶々……えーとここでは、なんという魔物だ?」
ソードを振り返った。
「え? ポイズンバタフライのこと言ってるの?」
「それだ! の形に切って舞わせたり」
「うん、ソレ、お前以外買わなそうだな」
うるさい!
「じゃあ、花びらだ! 花びらの形に切り、下の金属にも、紙で作っても布で作っても木で作っても構わないが、花や花咲く木をオブジェとして添える。そうしたら、とても奇麗だろう」
ポカンとした美形エルフが、じわじわと笑顔になってきた。
「……そう! そんな景色を再現したかったんだ!」
「ならば、もっと凝れ。これじゃ、なにがしたいのか分からんぞ」
美形が明るく頷いた。なかなかの破壊力。
だが、すぐに萎れた。
「あ……でも、今はこれ以上、資金が……」
…………ふむ。
「……それで、麗しの君。貴方には性別はあるのか?」
「え? ボク? えっと、ボクは、一応、女、なんだけど……」
フェードアウト。
なるほど、ボクっ娘ね。胸も私と対等なほどにぺったんこだ。
だから性別を聞いたんだけど。
「それでは、美少女エルフさん。私はインドラと申します。実は、ここにはスカウトでやって参りました。貴女は、私と隣にいるソードの拠点で働いてみませんか? 私のビジョンを作り出す人物を探していて、貴女はそれに合致すると見受けられました」
ソード、ポカン。
美少女エルフ、ポカン。
「え? えっと? ボク? ボクのこと言ってるの?」
「もちろん。私も美少女ではあるが、エルフではないからな」
「え?」
なんか聞き返されましたけど? どこら辺を聞き返したのかなー?
「えっと、ボクの名前は、プラナヴァーユって言うの。プラナって呼んでほしい」
「よろしく、プラナ」
「えっと、あの……。……その話、本当ですか?」
「勿論だ。冗談も嘘も言うが、今言っても仕方が無いだろう」
「うん、そこはフツー、嘘も冗談も言わないって言い切るべきところだよな」
ツッコミが激しいぞ!
「えと、じゃあ……じゃあ! あの! 冒険者さんでしたよね⁉ あの、ギルドで会いましたよね⁉」
「そうだ」
「じゃあ、お願いします! ボク、貴方方についてきます!
どうされても構いません! ですから、ボクの友達を助けに行って下さい!」
って、頭を下げてきた。
ソードと顔を見合わせる。
「ボクの友達が、もう三日、山から戻ってこないんです。ボクにはその子しか友達がいないし、その子はボクのことをずっと助けてくれてたんです。だから、今度がボクが助ける番、って思ったんですけど……。……依頼料が高くて、払えなくて。だから、これを売って、少しでも、お金を稼ごうとして……」
なんと健気な。
この世界でこんな真っ当な人間がいたとは……あ、人間じゃないやこの子、妖精だったわ。
「ならば、依頼料をいただかないとな」
暗く俯いた彼女の目の前で、ひょい、と紙吹雪の舞う玩具を取り上げた。
「これを私に売ってくれ。お前のプライドをぶち壊すかもしれないが、これをカスタマイズして、私好みに仕上げたい。それが、依頼料だ。……どうする?」
プラナは呆気にとられた顔をした後、破顔した。
「……はい! お願いします!」
よーし、許可は取ったぞー。
これ、何気に凄いんだよね。吹雪が飛び散らないような設計になってて。
いわば、電動スノードーム? しかもアレはドームに入ってるけど、これ、なんにも入ってないから。
こういった玩具は超好きだ。カスタマイズしちゃうぞー!
って考えてたら、ソードが笑った。
「ようやく、こんな端の端まで鍛冶の町を歩き回って、気に入ったものが見つかったのか。良かったな」
そう言って頭を撫でた。