軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

137話 <閑話>勇者アマトの冒険 参

で! 今、英雄さんの拠点に向かってる最中なんだ。

途中までは馬車があったけど、イースに行くには山を越えなきゃならなくて、山越えの馬車は出てないらしい。

ロブさんと悩んだけど、迂回すると半年とかかかるらしいから、山越えすることになった。

急いではいないけど……いや、急いでるかな? 問題児のもう一人が何かしでかして、俺の似顔絵と【WANTED‼】とかいう貼り紙が出回らないうちに英雄さんの拠点に着きたい。

屋敷に逃げ込めば、ほぼ治外法権だって言ってたからな。あの思考戦車が何台もいて、屋敷を守ってるらしいよ?

インドラ様、すげー。

その山越えで、出会した。

熊! 狩りゲーの熊の、もっと凶暴でデカくしたみたいな! 熊! に。

……俺、怖くて竦んで何も出来なかった。

ロブさんの「逃げて下さい!」の声にも反応出来ず、ただ立ってた。漏らしそうになりながら。

ロブさんは、俺を庇って、肩を抉られながらも、戦ってる。でも、ロブさん、かなりの出血で、フラフラしてる。殺されそうになってる。

――俺のことなんか、庇ったってしょうがないのに。

俺は勇者じゃないし、ロブさんには俺を助ける義理なんてないのに。

「ロブさん‼」

ようやく、ようやく震える手で、銃を構えて、熊に撃った。

熊、倒れた。

……インドラ様の水鉄砲みたいな銃は、すごい効き目だった。俺は、なんとかロブさんを引きずるようにしながら、逃げた。

「ゴメン、ロブさん。俺、怖くて……。何も出来なくて……」

「……結局、助けられたのは私の方ですが」

「そんなことない! 俺、殺されてた。ロブさんが庇ってくれて、それで……」

ロブさんの顔が青いを通り越して、白い。慌てて応急キットを取り出した。

……あ、ちゃんと手当の方法が書いてある。しかもご丁寧に向こうの文字で。

「まず、痛み止めと、化膿止めを飲むこと。その後、精製水で、傷口を洗う。殺菌したい場合はアルコールがあるので、それで洗う」

書いてある通りにする。けど……コレ、ヤバくないか? 肉がごっそりと……。

吐きそうになるのを堪えながら洗った。

「もしも、深手を負った場合、手術の必要なほどひどい傷ならば、潔く回復薬を飲むこと。骨が残っていれば再生する、が、リハビリが必要。か……。ロブさん、この傷、ダメだ。これ飲んで」

「え!? でも、これは、貴方がインドラ様にもらったものでしょう?」

「そんなの関係ないよ。ロブさんが怪我してるんだから、ロブさんが飲まなきゃ。俺、怪我してないもん」

「今後どうするんです⁉」

「次に現れたら、もう、怖がって立ち竦まない。ロブさんに怪我させちゃうから。ちゃんと、トウガラシ爆弾投げつけるし、銃も撃つ。効くってわかったから」

そう。俺には覚悟が無かった。

逃げ切れたらいいな、魔物出なかったら良いな、そう願うだけだった。

これからは、ちゃんと、出たらどうするか、そのビジョンを持って、前に進む。

無関係なロブさんを、これ以上傷つけたくないから。

……きっとこの人は、こんな目に遭ってもまた、俺を庇うと思うから。

半ば無理矢理ロブさんに飲ませると。

「おわ! ……さすがインドラ様!」

あっという間に傷が治った。

「これは……特級回復薬だ……! こんなすごいものを、よく簡単に渡したものだな、あの方は……!」

え? 特級回復薬なの? つーか、回復薬に特級とかあるんだ?

傷が治ったとはいえ、ロブさんはちょっとフラフラしていた。

増血剤ってのもあったのでそれも渡し、

「……なぁ、ロブさん。なんで俺を庇ったの?」

って、ちょっと訊いてみた。

「ロブさん、俺に義理も何もないし、そもそも、半ば無理矢理な感じでお供の人になったんでしょ? 特に俺、勇者辞めるし、ロブさんが庇う必要も無いような……」

って言ったら、ロブさん、ポカンとした後、空を見た。

「……言われてみればそうですが……。なんでしょうね、貴方が【迅雷白牙】様に招かれて、食事をされて、懐かしいと涙を見せたとき私は、貴方がこの世界に落ち着くまでは側に居ようと思ったんです」

あの時? いや、確かに懐かしくて思わずホロリしちゃったけど……。

「私も貴方も、無理矢理に魔王討伐に向かわされた。でも、貴方の方がより被害者だ。違う世界から強制的に招かれ、帰る術もない、さらには死にに行けと言うのと同義の扱いをされている。それでもこの世界に馴染もうとしていて、そんな貴方が故郷の味だと涙されたのに心を打たれた。もう帰れない故郷を懐かしんだ貴方に同情しました」

顔をこちらに向け、ニコリと笑う。

「だから、私も、貴方と一緒に生きようと決意しました。私には、懐かしむ故郷などないので、これから作ろうかと思います」

…………。

「じゃあ……これからよろしく?」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

手を差し出すと、固く握られた。

……別世界に来ても女性には縁が無いけど、友達は出来たみたい。