軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

123話 おうちがなくなってたよ!

…………。

さすがの私も驚いて立ち尽くした。

しばらしてようやく復帰し、ソードに尋ねる。

「被害はない……これを弁償しろと言われない限りはないが、どうする?」

ソードが頭をかいた。

「とりあえず、役人に報告だな。誰がやったかによって、対応が変わる」

遠くから声が聞こえてそちらを見ると、呼ぶまでもなく役人が走ってきた。

「戻られましたか」

というか、捜していたらしい。

ソードが破壊された家を親指でさして聞いた。

「コレ、誰がやった?」

「…………それが…………」

役人の歯切れが悪い。

「お前より、上の連中か?」

ソードが聞くと、役人が慌てて答えた。

「いえ、そうではなく。…………勇者殿です」

ほう。まだ現れないと言ってた勇者が現れて、建物を壊した、と。

「ん? なんで勇者が建物を壊す? ここに魔王でも現れたのか?」

じゃないと建物壊す理由にならないよね?

「……どうやら、【迅雷白牙】様の噂を聞きつけて、やってきたようで……。……呼んでも応じなかったので、実力行使に出たようです」

そりゃ、いないなら出られないよね。

「王城に参上した、と聞いて、今度は王城に向かったようですが。……犯人が犯人なので、不問になるかと」

そうなのか。すごい優遇されてるな、勇者って。そして何でもアリだな、勇者って。

「俺たちはいいけど、この建物の所有者は納得するのか?」

「するしかないでしょう。天災が起きた、と思うしかありませんよ、まったく……。毎回、勇者が現れるとこんな騒ぎで、王城は、何を考えて勇者を選抜してるんだか」

あ、役人が愚痴った。

「まぁまぁ。売れ残りのエールと肴をやるから、そう愚痴るな。仕事が終わったら、仲間と飲むがいい」

「ありがとうございます!!」

途端に上機嫌になった。

なんだろ、この世界の人間って、お酒好きだよね。売ってるの、あんなすごいのなのに。

「じゃあ、私たちはシャールに泊まろう。折良く、いつでも出て行けるよう、荷物は全部シャールに積んでしまったんだ。最悪、王城を殲滅してすぐ旅立つ予定だったからな」

「そりゃ、タイミングがいい。俺も『勇者が現れたらしいからとっとと出ようぜ』って言うつもりだったんだ」

上機嫌の役人から、自分たちの宿舎の近くの空き地にどうぞ、と言われたので一緒に向かう。向かいながら話を聞いた。

ヤッシという名の役人さんは、王都の役人になって長いそうだ。まだ独身だけど、恋人はいるらしい。

「役人という仕事に誇りを持ってるんです、けど、彼女は商店の一人娘でして」

商店を継いで二人で切り盛りしてほしい、と願う両親との折り合いがつかないらしい。

「うむ、いい話だ!」

「え? むしろかわいそうな話じゃない?」

ちょっとソードったら、別れる前提で話を進めないでくださいよ。

「別に夫婦で切り盛りしなくてもいいだろう。その女性は継ぐのは嫌ではないなら、店で働けばいい。役人さんは、役人を続ける。収入は、役人さんが外で働く分、増えるだろう? 手が回らないなら、その増えた分で人を雇えば良いのだ。彼女が妊娠して働けなくなっても、そのときは皆で頑張ればいい。役人さんも産まれてくる子のためなら、役人も頑張り、彼女の実家も手伝い、一時的に大変だろうが、幸せな大変さだ。乗り越えたなら、絆は強くなるだろう」

役人さんもソードも、びっくりした! みたいな顔をしている。

「なんだ? よくあることだろう? 使用人たちだって、例えばメイド嬢が結婚し、妊娠しても一時的に休みを取るが、その後また復帰するぞ?」

この世界って、小さい子でも働くじゃん。学校行くわけでもないし、子供に手をかけない風習だ。

特に、店なんて傾いたら一家全員が無収入になるんだし、なら、役人さんは外で確実に稼いだ方がいいと思うの。

「……そうですね! 俺、そう言って求婚してみます!」

復活した。

それにしても、役人さんはいくつなのかな? 美容製品使う前のソードよりも老けて見えるけど、もう子供が大きいって年齢かと思ったけど。

宿舎に着き、空き地にシャールを駐車させてもらう。

お礼に宿舎に差し入れ。中にどうぞ、とは言われたけど、さすがに疲れたので辞退した。

「子供はもう寝る時間だ」

「俺がいると緊張するだろ。 明日もあるんだから、宴会にするなよ」

二人でそう言って手を振った。