軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

102話 氷雪地帯はシックスセンスで!

階段を下りて、次は…………うん、わかってた。

氷雪地帯。

すぐさま保温魔術をかける。

「助かる。……つーか、雪飛礫すら防げるのかよ、全く……」

お礼言われたと思ったら、ブツブツ文句言われてる。

「ついでに新たな玩具だ」

「はい、いただきます」

両手差し出された。

「お前だけ可視光線しか見えないのも不利だろう。長年の経験があるにしろ、可視光線以外も見えた方が良い場合もあるかもと思って、作った」

ポンと渡した。

「アイグラスだ。可視光線以外の情報も合わせて見えるようになる。慣れないとちょっとクラクラする、かもしれない。コッチは、そのゴーグルバージョンだ。視界がもっと広くなるし、水中ならこちらの方が見やすいだろう。どちらも可視光線が強烈に強い場合はライトカットもする。一応、オンオフ可能になっている。右のグラス縁を触れば点けたり消えたり出来るぞ」

早速眼鏡をかけた。

眼鏡男子になった。

「へー! お前の視界は、こんな感じなのか。……つーか、丸見えじゃねーかよ! なんだコレ⁉ 俺、ハンデもいいとこじゃねーか!」

「だから、ガンシューティングでお前がトップだったのが解せぬのだ」

今でも不可解。

リョーク、ポイント計算間違えたんじゃないのかにゃ?

ソードは眼鏡をいろいろ弄った後、外した。

「コレで慣れると、いざとなったときヤバい」

らしい。

「むしろいざというときに慣れてほしいので渡したのだが……」

この吹雪じゃ、絶対に視界が利かないぞ?

風の音もうるさいし、視覚聴覚が使えなくなると、かなり不利じゃ無かろうか?

この階でそうなら、下の階になればなるほどもっとひどくなると思うけど……。

それともソードって、俗に言う〝第六感〟で敵を見つけるのかな?

「ヤバくなったらつけるから。リストバンドもあるし、なんとかなるだろ」

…………ソードって、すごいやつだな。

さて。

氷雪地帯と言えば……。

イエティ!

雪男!

スノーマン!

ドド○ランゴ!

どれも同じ……あ、最後のは違うか。

……まぁそんな感じの、毛むくじゃらの大猿がウジャウジャいる。

さらに、オオカミみたいなのもいる。

「……なぜ、猿と犬が一緒にいるのだ?」

「え? 一緒にいないものなの?」

だって、犬猿の仲って言うじゃんか!

この世界の常識はおかしいぞ!

――ソードはやっぱりすごい。

可視光線しか見えなくて、視界不良で、吹雪で、音もよく聞こえないのに、なぜ敵が分かる⁈

何?

索敵魔術とかあるのか?

それにしたってすごくね?

バリバリ敵をやっつけて、安全地帯らしい洞窟で一旦休憩。

「ソード、お前を尊敬する」

ソードがすっごい胡散臭そうな目で見たぞ?

「……なんの冗談だよ?」

「冗談じゃ無い! ……なんで敵が分かる⁈ 私もリョークも『見えている』。音だって、拾おうと思えば、吹雪音を消して他の物音を拾うことだって出来るのだぞ? だから分かるのに、お前は視覚聴覚が奪われた状態で敵が分かり、戦ってるじゃないか! それがどれだけすごいことか、解らないか⁉」

「ふーん……」

褒められて気を良くしたのか、急に機嫌が良くなった。

「そういや、敵が分かるな。なんつーか、感覚だ」

「出た! 〝第六感〟!」

「なんだそりゃ?」

「人間には五つの感覚装置がある。視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚だ。だが、お前はこれを使わず敵を発見して殲滅しているだろう? その五感以外で情報を感じていることを〝六番目の感覚〟という」

「へぇ。そりゃスゲェ」

お前のことだよ!

ジロン、とにらんだらソードが笑った。

「まーな、それなりに戦闘経験は豊富だ。ずっとソロで、いつだって危険な目に遭ってきた。こんな吹雪の中で、それこそオオカミの群れと戦闘になったこともあるぜ? 寒くないだけそんときよりゃマシだな」

わー、ハードモードだー。

ソードが感心したようにつぶやいた。

「そっか。お前は、いろいろ出来る分、逆に縛られるのか」

「出来ない方が縛られるはずだろうが。私よりもお前の方がおかしいぞ?」

私は周りからは超人に思われているようだが、これでも知識に基づいて魔素を操作している、だけ! の、いたって普通のことをしているのだ。

そもそもソードの言ってる戦闘経験と、普通の戦闘経験は違うと思うけどな?

普通は、敵の攻撃パターンや倒し方のセオリーがわかってくるとかだよね?

ソードは、戦ってるうちに超感覚が身についた、って言ってるよね?

ソレ、なんてマンガデスカ?

ソードがまた笑った。

「そっか。お前から見たら、俺はスゲェやつなのか」

「誰から見たってすごいと思うが。というか、この世界の人間には普通のことなのか?」

さすがファンタジー世界。

超感覚が当たり前だとは……。

私もそのうち身につくんだろうか。

あ、でも、痛々しくなりそう。

それこそ「右目が疼く」とか言い出しそう。

とか思ったらジロッとにらまれたぞ?

「……なんか失礼なこと考えてねーか?」

ブルブルブルブル。

激しく首を振った。

「誰もが出来るようになるかは、わかんねーな。俺はずっとソロだったから。……でも、お前にも出来ないことがあるのか」

「当たり前だ」

というか、出来ないことの方が多いけど……。

キョトンとしてると、ソードが優しく笑う。

そして頭をなでた。

「お前にいろいろ作ってもらって用意してもらってると、お前が万能の神に思えてくるんだよ。ベンの台詞じゃねーが、天から氷を降らせたり、雷を落としたり、それは神の御業だってこの世界の人間なら思うさ。お前は小難しい説明したがってるけど、聞かせなくていいんだ!」

説明してやろうと口を開けたら制された。

ぱくぱく。

「わかってる、万能の神じゃねぇ、理屈があるってお前が言うならそうなんだ。だけど、俺たちは、理屈がわからねーし、わかってもたぶんできねぇ。だからこそ、お前こそがオールラウンダーの名に相応しい。……って思ってたけど、お前にも出来ねーことがあって、それは、俺が出来る。たぶん、俺だけが出来る。……ってのがわかってよ、ちょっと、うれしかった」

…………。

ソードを見上げた。

「歌を教えたら、音程を外さず、知らない言葉でも間違えず歌える。ブロンコも、シャールも、すぐ乗りこなした。ガンの使い方を教えたら、私よりも高得点だ。……あ、思い出したらムカついた」

ムカ~。

すぐさまガシガシ頭をなでられた。

「……そんなお前でも、自分は出来ないことがあるって落ち込むことがあったのか」

「まぁな。今までは、ちょっと天狗になってたからな。俺よりも……いや、俺と同じくらいですら出来るやつはいない、って思ってた。俺と同じ景色を見るやつはいない、俺と同じ感覚を味わうやつはいない。だから、ずっと一人だと思ってた」

同じ感覚はいなさそう。

私、第六感ないもん。

ソードだけじゃね?

あ、でも、擬似的に私が、非可視光線やらの波動を駆使して〝同じ感覚を持つ者〟になってるのか。

「で、お前が俺の横に並び立った。俺としては、俺の横、もしくはちょっと後ろくらいだと思ってた。だけど、お前を知るにつれ、お前がいろいろ吸収するにつれ、俺をあっと言う間に追い抜かしてった。成長度が俺よか早い。このままいったら、俺は置いてかれるな、そう思って焦ってた」

…………はい?

「いや、私はもうこれ以上成長しないぞ?」

「は?」

ソードがポカンとする。

「私は女だ。言っておくけど、女だぞ! 女の成長期は男よりも早い、もう頭打ちだ。せいぜい十五歳までだぞ? もっと早ければ、今の年齢で止まる」

「…………」

ソードが曖昧な顔になってきた。

私が女だと、忘れてたのか?

……忘れてたのか!

ビシ! と指を顔面に突きつけた。

「いいか! 私は女だぞ! もう、成長は止まる! これ以上は成長しない!」

最後に声を大きく言った。

「――胸以外は!」

更に大声で!

「胸以外は‼」

大事なことなので二度言った。

ソードが呆れた顔してるんですけど。

「…………胸こそ止まってねーか?」

なにおう⁈

「止まってないっ! 胸は、胸はなぁ、生涯成長するものなんだ! 別世界ではそうだった!」

半泣きになったら抱っこされてヨシヨシされた。

「そーだそーだ。……そういや、お前は女だったな。胸は……そうだな、そのうち大きくなる……といいな」

なんだそのつっかえつっかえの言葉は!

「……男は女と違って、十五歳過ぎてからが本番だろう。二十歳くらいまでが成長期で、以降緩やかに落ちていくだろうが、女はもっと早くに落ちる。性別や年齢は関係ない、鍛えれば鍛えるだけ成長する、というのであれば、それは私だけでなくお前にも当てはまる。溝は埋まらないはずだ」

「なるほどな。そりゃそうだな」

感心したと思ったら、脇に手を入れられて持ち上げられた。

……私は猫か?

「お前って、賢いな」

「……なんだその、ペットに話し掛けるような扱いと言い草は」

「〝飼育生物〟? テイムされた魔物のことをそういうのか?」

違うけど、この世界には小動物を愛玩生物として飼う習慣なんてないからわからないかな。

「十三歳になった美少女の脇を持ち上げて話し掛けるな。幼女じゃないんだぞ、私は」

ソードが笑い出した。

「悪い。……どうもなー、出会ったときのちびっ子の気持ちが抜けないな」

だからお父さんみたいなのか。おっさんか。

って、言ってないのにまたたたき落とされた。