軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第21話 “婚約者”の悪戯

「……由弦さん?」

マッサージをしている最中。

ふと、由弦が沈黙していることに気付いた愛理沙は由弦に声を掛けた。

しかし由弦から声は返って来ない。

それはつまり……

「寝てしまいましたか?」

愛理沙は試しに尋ねてみるが、返って来ない。

つまり本当に寝てしまったということだ。

「由弦さーん!」

もう一度呼びかけてみるが、しかし反応がない。

そこで愛理沙は由弦の顔を覗き込んでみた。

「……」

リラックスして、無防備を晒して眠りこけている由弦の顔がそこにはあった。

まさか、愛理沙に何かされることはないだろう、愛理沙なんて別に脅威でも何でもない……そんな顔がそこにあった。

愛理沙は由弦の頬をつんつんしてみる。

起きる気配はない。

「……もう」

眠って良いと言ったが、本当に眠るなんて。

仕方がない人だ。

そう思いながら愛理沙は由弦の頭に手を伸ばす。

髪を優しく撫でてあげる。

しかしそれでも由弦は目を覚ます気配はない。

「由弦さんが、悪いんですよ……」

愛理沙は少しドキドキしながら、由弦の胸に手を伸ばす。

薄いシャツ越しに厚い胸板があるのがはっきりと分かった。

愛理沙の婚約者様は意外と筋肉質なのだ。

「……」

愛理沙はそっと、鼻を由弦の胸元に近づける。

すんすん、と香りを嗅ぐ。

石鹸の香り。

そしてほんの僅かだが、汗の臭いがした。

「……」

愛理沙は由弦のすぐ隣で、横になった。

目の前には由弦の顔がある。

もう少し過激な悪戯を――キスを――してしまおうかとそんなことが脳裏を一瞬だけ過ったが、しかし恥ずかしくてできなかった。

愛理沙は由弦のシャツに手を伸ばし、ギュッと握りしめる。

そして目を閉じた。

それから……

「……?」

ふと、愛理沙は頭に不思議な感覚を感じた。

誰かが優しく、頭を撫でてくれるような……そんな感覚だ。

とても心が温かくなるのを感じた。

その感覚に身を任せていると……手が離れた。

少しだけ愛理沙は残念に思った。

それとほぼ同時に思考がはっきりとしてくる。

自分が由弦の隣で寝てしまったことを思い出し、そして同時に自分の頭を撫でているのが由弦であることに気付いた。

「……!」

慌てて、起きようとした。

だが起きられなかった。

なぜなら。

由弦の指が自分の頬に触れてきたからだ。

ぷにぷにと。

由弦の指が自分の頬に沈むのを愛理沙は感じた。

「……」(今、起きたら……由弦さんはびっくりしてしまいますよね)

由弦は愛理沙が寝ていると思っているから、こんなことをしているのだ。

今、このタイミングで愛理沙が目を覚ましたら由弦は驚いてしまうだろう。

それは可哀想だ。

……そんな言い訳をしながら、愛理沙は由弦にされるままになる。

しばらくして、由弦は愛理沙の頬に触れるのをやめた。

もう目を覚まして良いだろうか。

そう思った、その時。

[……!?!?!?!?!?]

愛理沙は思わず声を出しそうになった。

由弦が唐突に。

愛理沙の胸に触れてきたからだ。

一瞬、偶然かと思った。

しかし偶然ではない。

少しずつ大胆に、はっきりと、愛理沙の胸を由弦はしっかりと触ってきた。

シャツ越しとはいえ、偶然ではなく、意図的に胸を触られている。

その事実だけで愛理沙は頭が真っ白になってしまった。

(由弦さん……やっぱり……)

男の子なんだ。

愛理沙は今更ながら、自分の愛しい人が男性であることを強く意識した。

自分の愛しい人ははっきりと、性欲を持っていて。

自分の肢体に対し、強い興味を持っていて、隙あらば蹂躙しようと思っているのだ。

ドクドクと。

愛理沙の心臓が強い鼓動を鳴らす。

それに比例するように由弦の手つきも少し大胆になっていく。

最初は一本だった指が数本になり、愛理沙の胸に対してむにゅむにゅと食い込んでいく。

ついに揉まれてしまうのか。

それとも頂点を……

そんな恐怖と期待と興奮に愛理沙が息を荒くし、体温を熱くしていると……

「あっ……」

突然、内股をなぞられた。

ゾクゾクとした感覚が全身に走り、鳥肌が立つのを愛理沙は感じた。

思わず声が漏れてしまう。

(……だ、ダメぇ)

気付かれてはいけない。

もし気付かれていたら……彼の悪戯を甘んじて受けていたことが、彼にバレてしまう。

彼には自分のことを、清楚で奥手な女性だと認識して欲しいと愛理沙は今更ながら思っていた。

彼の悪戯に対し、期待に胸を昂らせていたことを知られたくはなかった。

「……」

幸いにも。

由弦は愛理沙が起きているとは、思わなかったようだ。

その証拠に非常に大胆な手つきで愛理沙の脚をさわさわと撫でてきた。

(由弦さん、あ、脚、好きなの……かな?)

大胆な手つきで。

両掌で由弦は愛理沙の脚を撫でるように触ってきた。

その手つきは少し、ネチネチとしているような感じがした。

それはとても心地よく、同時に擽ったかった。

特に内股をなぞられた時は、思わず声を漏らしそうになるほどだった。

そして……

「……っ」

唐突に。

臀部を鷲掴みにされた。

むにゅむにゅと、手のひらではっきりと確かめるように由弦は愛理沙のお尻を揉んできた。

(そ、そんなところ……す、好き、なんですか?)

男性の中には女性のお尻を好む人がいるのは、愛理沙も知識として知っていた。

しかし自分の婚約者が、自分の想い人が自分の臀部に対して、それほど強い情欲を持っていたとは思いも寄らなかった。

優しく。

顔に掛かった髪を払われる。

そして。

唇に何かが触れた。

それは由弦の指だった。

優しく、なぞるように。

形を確かめるように。

由弦の指が愛理沙の唇に触れた。

それはとても優しい仕草だったが……

同時に愛理沙は由弦の強い攻撃性と情欲を感じ取った。

これから、この唇に対して自分の唇を押し当ててやる。

蹂躙してやる。

唇を奪ってやる。

そんな宣言をされてるような心地がした。

(だ、ダメぇ……)

心臓が激しく高鳴る。

下腹部が強烈に切なくなる。

息が自然と荒くなる。

ゆっくりと。

彼の唇が、吐息が近づいてくるのを感じた。

そして……

「……さすがに不味いな」

彼はそう呟いた。

近づいていた吐息が離れる。

愛理沙は気絶した。