軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第24話

ふと、眩しさを感じた由弦は目を醒ました。

僅かに首だけを動かすと、カーテンの隙間から朝日が覗いている。

時計を確認すると、今の時刻は八時。

「んっ……」

隣を見ると、そこには由弦の腕を枕に眠る新妻の姿があった。

黒い水着だけを身に纏っている。

そんな愛理沙の姿を見て、由弦は昨晩の情事を思い出した。

水着を着てするなんておかしい。

そう主張する愛理沙に頼みこみ、もう一度着てもらったのだ。

お風呂でイチャイチャし、ベッドの上でもイチャイチャした。

愛理沙も何だかんだで楽しんでいた。

「可愛いな……」

由弦は愛理沙の頬をツンツンと突く。

愛おしくて仕方がない。

彼女が自分の妻であることは、自分の人生で最大の幸福だと由弦は感じた。

(ちょっと悪戯を……いや、やめておこう)

悪戯心が芽生えた由弦だが、海で怒られたばかりだったことを思い出し、やめる。

代りに愛理沙の肩を掴み、軽く揺すった。

「愛理沙、起きて」

「うんっ……あと、五分……」

愛理沙は顔をしかめると、モゾモゾと布団の中に潜ってしまった。

普段はシャキッとしている愛理沙が、このような姿を見せるのは珍しい。

(……えっちな悪戯じゃなきゃ、いいか)

そう考えた由弦は、少しだけ愛理沙を揶揄うことにした。

「愛理沙、もう八時だよ」

「んっ……」

「学校、遅刻するよ」

「……んぁ? 学校……!?」

由弦の言葉に愛理沙はガバっと上体を起こした。

そして辺りをキョロキョロと見渡す。

「ち、遅刻!! ……あれ?」

「おはよう、愛理沙」

由弦は笑いながら愛理沙に朝の挨拶をした。

愛理沙は唖然とした表情を浮かべていたが、すぐに騙されたことに気付いたのか、顔を赤くさせた。

「……バカ!」

そう言って愛理沙は布団も潜ってしまった。

不貞寝をする愛理沙が起きるのは、それから十五分後のことだった。

「今日の予定なんだけどさ」

「はい」

「行きたいところがあるんだけど、いいかな?」

朝食の席にて。

由弦は愛理沙にそう切り出した。

「別に構いませんが……どこですか?」

ハワイではゆっくり過ごそうと決めていたこともあり、特に予定はない。

しかしどこに行くかは気になる。

そう思って尋ねた愛理沙に、由弦は悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「秘密」

「は、はぁ……構いませんが」

何かしらのサプライズだろう。

そう理解した愛理沙は由弦の提案に大人しく頷いた。

早速、朝食を食べ終えると由弦と愛理沙は共にタクシーに乗り込んだ。

由弦は運転手に住所だけを伝え、出発する。

タクシーはどんどん山の方に向かって進んでいく。

「えーっと、ここは……」

辿り着いた山頂。

そこには小さな教会があった。

理解が追いつかない愛理沙の手を引きながら、由弦は愛理沙を教会へと連れて行く。

「じゃあ、愛理沙。また後で」

「は、はい?」

よく分からないまま、愛理沙は係員と思しき人物に奥へと通された。

通された場所は、大きな衣裳部屋だった。

様々なデザインのウェディングドレスが並んでいる。

ここに来てようやく、愛理沙は由弦の意図に気が付いた。

サプライズ結婚式だ。

自然と愛理沙の口角が上がる。

「お好きな物をお選びください」

「えぇ!」

係員に促されるまま、愛理沙は好きなデザインのウェディングドレスを選んだ。

その後、更衣室に通される。

ウェディングドレスを着て、化粧を施される。

更衣室を出ると、そこには由弦が立っていた。

グレーの花婿衣装を着ている。

「びっくりしました。こんなこと、考えていたんですね」

愛理沙が笑いながら言うと、由弦はにんまりと笑みを浮かべた。

「びっくりするのは、これからだよ」

そう言って由弦は愛理沙の腕に自分の腕を絡ませた。

そして愛理沙を会場まで、エスコートしていく。

結婚式の会場。

その大きな扉が開き、由弦と愛理沙は二人でそこをくぐると……

パン!!

クラッカーの音がした。

思わず足を止め、驚く愛理沙とニヤニヤする由弦に対し……

「「「結婚、おめでとう!!!」」」

亜夜香、千春、天香、宗一郎、聖は満面の笑みでそう言った。

「え、えぇ!? み、皆さん、どうして……」

「それは……」

驚く愛理沙に由弦が答えようとした時。

「ほら、前の結婚式、愛理沙ちゃん、ちょっと辛そうにしてたでしょ?」

満面の笑みで亜夜香がネタバラシをした。

由弦から相談を受けたこと。

それならサプライズ結婚式をしようと逆に提案をしたこと。

友人たちと一緒に計画を練ったこと。

「そう、ですか。ありがとうございます……でも、別に辛かったわけではないですよ? 前の結婚式も素敵でしたし」

確かに後半は疲れた。

あまり関わりのない人たちとの挨拶回りは、決して楽しいとは言えない。

しかしそれでも由弦との盛大な結婚式だ。

良い思い出だ。

「……俺の自己満足だよ。君に楽しい思いをして欲しいなと思って」

由弦には少しだけ、負い目があった。

二人の結婚式だというのに、家の都合を優先してしまったこと。

愛理沙の好意に甘えてしまったこと。

もちろん、愛理沙が嫌なことを我慢しているわけではないことは由弦も分かってはいたが……

それでも由弦は結婚式をやり直したい気持ちがあった。

「一緒に挙げ直してくれ。今度は二人だけの、結婚式を」

由弦の言葉に愛理沙は大きく目を見開いた。

そして満面の笑みを浮かべた。

「「はい」」

ブルーに輝く空と海を背景に二人はもう一度式を挙げた。