軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第20話

結婚式から一週間後。

由弦と愛理沙は京都にある、千春の実家に訪れていた。

「本日はよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

由弦と愛理沙は揃って頭を下げた。

そんな二人に対し、着物を着た女性は上品な笑みを浮かべた。

「まあまあ、そう固くならず。今日はあくまで……娘のご友人の結婚式、ということですから」

彼女こそ、上西家の現当主であり、千春の母親だ。

年齢の割にはとても若く見える。

「しかしもし次の機会があれば……その時こそは、祖母として参加したいですわ」

千春の母はおほほと笑った。

由弦と愛理沙はその言葉に否定も肯定もせず、笑みだけ返した。

もし「そうですね」とでも返したら、後で面倒になることが分かり切っているからだ。

「では、儀式の説明は千春から。私は退出いたしますわ」

千春の母はそう言ってその場から出た。

そして今まで黙っていた千春は少しだけ、前に進み出た。

「では、あらためて。お二人とも、ご結婚、おめでとうございます。まあ、前も言いましたけどね」

千春は苦笑しながらそう言った。

千春の言葉に由弦と愛理沙も苦笑する。

今日、由弦と愛理沙が千春の実家を訪れたのは、神前式の結婚式を挙げるためだ。

要するに二回目の結婚式だ。

普通、結婚式は二回も挙げたりしないから、少しだけ可笑しさがある。

「今回は個人として、お二人だけですから……儀式の一部は省略します。よろしいですね?」

千春の言葉に由弦と愛理沙は揃って頷いた。

今回の結婚式は前回と違い、ゲストを一人も呼んでいない。

両親も含めてだ。

何度も結婚式に呼び出すのは相手に申し訳ない……という理由が一つ。

もう一つはこの結婚式を公のモノにしないためである。

高瀬川家と上西家の関係は良くなってきているが、まだ微妙だ。

親類を招くと家同士という要素が強くなってしまい、周囲の反発も大きくなる。

実際、由弦の祖父は良い顔をしなかった。

あくまで由弦と愛理沙が個人として行うという体だからこそ、ダメとは言えなかっただけだ。

……というよりはそもそも、由弦の祖父は上西家の鳥居など、死んでも跨ぎたくないと言うだろう。

“招いたけど来ない”よりは、“最初から招かない”方がマシだ。

「儀式は主に私が執り行い、母が補佐をするという形になります」

千春はそう言ってから、儀式の進行と役割について簡単に語った。

尚、千春の祖母である上西家の先代当主の役割については言及がなかった。

理由は言うまでもない話だ。

「と、まあ、そんな感じですね。どうせ、私たちだけですし。緩くやりましょう」

前回と違ってね?

と、千春はウィンクをした。

千春の仕草に由弦と愛理沙も笑みを浮かべた。

「ああ、よろしく、千春ちゃん」

「よろしくお願いします。千春さん」

「ええ、任されました。大船に乗ったつもりでいてください」

千春は胸を叩いた。

説明が終わると、由弦と愛理沙はそれぞれ控室に通された。

事前に準備していた衣裳に袖を通す。

先に着替えを終えた由弦は写真の撮影場所で愛理沙を待つ。

五分後、千春に連れられた愛理沙がやってきた。

「おぉ……! 似合ってるね、愛理沙。凄く綺麗だ」

白無垢を着た愛理沙に由弦は歓声を上げた。

愛理沙はその容姿から洋の雰囲気を感じるが、しかし白無垢はそれをふんわりと包み込んでいた。

白と紅、亜麻色の髪のコントラストがとても美しい。

まさに和洋折衷という雰囲気だった。

これだけでも挙げる甲斐があると由弦は感じた。

「ありがとうございます。由弦さんも素敵ですよ。洋装も素敵ですけれど……やっぱり、和装の方がお似合いですね」

「成人式とそんなに変わらないけどね」

白無垢の愛理沙に対し、由弦は黒の紋付袴だ。

愛理沙の服装と比較すると物珍しさはないが、しかし普段から着ているだけあって様になっていた。

「いやぁ、愛理沙さん、可愛いですね! 私のお嫁さんになりません」

千春は心底嬉しそうに言った。

口調は冗談染みているが、目は本気に見えた。

「新郎の前で新婦を誘うな」

「あははは……」

そんなやり取りをしながら、二人は記念撮影に臨んだ。

上西家お抱えのカメラマンが写真を撮ってくれた。

記念撮影を終えた後は儀式に移る。

今回はゲストがいないが……代わりに観光客がいたので、決して寂しい結婚式にはならなかった。

見知らぬ人であっても、結婚を祝ってもらえるのは由弦も愛理沙も気分が良かった。

「さて、本日の儀式はこれで終わりです。お疲れさまでした」

千春の言葉に由弦と愛理沙はホッと息をついた。

ゲストがいないので以前ほど緊張はしなかったが、それでも気を張ってしまっていた。

「今日はありがとう、千春ちゃん。思い出に残ったよ」

「興味深い経験でした。ありがとうございます」

由弦と愛理沙は千春に礼を述べた。

こうして神前式の結婚式を挙げられたのは、千春が快諾してくれたからだ。

「お気になさらず。料金ももらっていますしね。でも、そうですね……」

千春はニヤリと笑みを浮かべた。

「次回は主催者ではなく、母として参加したいですね」

千春の言葉に由弦と愛理沙は否定も肯定もせず、苦笑いをした。