作品タイトル不明
第27話
由弦と愛理沙はそれぞれ、ハンドタオルで申し訳ない程度に体を隠しながら浴室に入った。
ここまで来たら恥ずかしいも何もないはずだが……
どうしても照れくさい気持ちになってしまい、二人は顔を見合わせて笑った。
「えっと……じゃあ、お互いに洗いっこをする感じで……よろしいですか?」
「そうだね。じゃあ、その、俺から……頼んで良いかな?」
「分かりました」
由弦が風呂椅子に座ると、愛理沙はその後ろにしゃがみ込み、シャワーヘッドを手に取った。
「まずは髪の毛の方を濡らしますね」
そう言うと愛理沙は優しい手つきで由弦の髪を濡らした。
それから由弦に尋ねる。
「由弦さんは普段、頭から洗いますか? それとも体から?」
「体からかな」
「分かりました」
愛理沙はスポンジを手に取ると、石鹸で軽く泡立てた。
そして由弦の背中を擦り始める。
「どうですか? 気持ちいですか?」
「うん、気持ちいよ」
強すぎず、弱すぎない力加減で愛理沙は由弦の背中を洗ってくれた。
おおよそ全体を洗い終えたタイミングで愛理沙は口を開いた。
「じゃあ、その……前を、洗いますね」
愛理沙はそう言って腕を由弦の前に回した。
結果的に背後から由弦を抱きしめるような形になる。
柔らかい膨らみが背中に当たるのを由弦は感じた。
「どうですか?」
愛理沙が手を動かすたびに、背中に当たる柔らかい物が動く。
狙ってやっているのではないかと由弦は思ったが、鏡に映る愛理沙の顔は真剣そのものだ。
「いい感じ、かな?」
「それは良かったです」
そう言って愛理沙の手が止まる。
「……愛理沙?」
「その、下は……ご自分でお願いします」
どうやら、頭以外の上半身は洗い終えたらしい。
由弦は愛理沙からスポンジを受け取った。
「あぁ、もちろん!」
由弦は普段よりも丁寧に下半身を洗った。
「……頭を洗いますね」
次に愛理沙は両手でシャンプーを泡立てると、由弦の髪の毛に付けた。
丁寧に頭皮を擦りながら、洗い始める。
「痒いところはありますか?」
「特にないかな。」「なら、良かったです。……よし」
愛理沙はシャワーで由弦の頭を流した。
「じゃあ、次はリンスを……」
「いや、そのシャンプーはリンス配合だから、大丈夫だ」
「あら、そうなんですか。ちゃんとリンスはリンスで使用した方が良いとは思いますが……」
愛理沙はそう言いながらも蛇口を捻り、シャワーを止めた。
由弦は立ち上がり、愛理沙の方を向いた。
「じゃあ、交代……」
「っきゃ!」
愛理沙は顔を両手で覆った。
「きゅ、急に立たないでください!」
「ご、ごめん……」
「……もう!」
愛理沙は顔を真っ赤にしながら、椅子に座った。
由弦はシャワーヘッドを手に取り、愛理沙に尋ねる。
「どういう感じで洗ってる?」
「まずはシャンプーをして、それからリンスをして、最後に体を洗います」
「なるほど。これが愛理沙が持ってきたやつだよね?」
由弦は愛理沙が自宅から持ってきたであろう、シャンプーとリンス、ボディソープを指さした。
愛理沙は頷いた。
「はい。では、お願いします」
由弦は頷くと、まず愛理沙の髪をシャワーで濡らした。
それからシャンプーを泡立てる。
「おぉ……愛理沙の匂いがする」
「まあ、いつも使ってますから」
恥ずかしそうにする愛理沙の髪に、由弦は泡を付けて、洗い始めた。
まずは頭皮を擦り、それから丁寧に髪を洗っていく。
「どうかな? こんなに長い髪を洗ったことはないから、勝手が分からないのだが……」
「悪くない感じです。そのまま……お願いします」
特に問題が無いようだったので、由弦はそのまま愛理沙の髪を洗い続けた。
最後にシャワーで泡を流してから、今度はリンスを手に取る。
「リンスは……どんな感じに使えばいい?」
「毛先から髪全体に馴染ませる感じで。……頭皮には付けないでください」
「分かった」
由弦は愛理沙の髪を一本一本梳くイメージで、リンスを付けていく。
美術品のように美しい髪を扱うのは、どうしても緊張してしまう。
「少し頭皮に付いちゃったんだけど……不味い?」
「少しなら大丈夫ですよ。別に私も、いつもそこまで神経質にやっているわけではありませんから」
由弦は都度、愛理沙に具合を聞きながら、髪にリンスを丁寧に付けた。
そして最後にシャワーでしっかりと洗い流す。
「髪はこれでいいかな?」
「はい。じゃあ、その……体、お願いします」
「分かった」
スポンジを手に取り、由弦は頷いた。