軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第15話

「え? あ、愛理沙……?」

仄かに薔薇色に染まった愛理沙の白い肌を見て、由弦は心臓が激しく鼓動するのを感じた。

愛理沙の肌を隠すのは、赤いリボンだけだ。

下着のようなものは身に着けていない。

もちろん大切な場所はしっかりと隠れている。

リボンは幅が太く、愛理沙の体にしっかりと巻きついているため、いつぞやのビキニと比較すると露出する肌の面積は意外と多い。

しかしそれでも本来なら服ですらない物を身に纏っていることと、丁寧にリボンで手首まで縛ったその様子は、由弦に対して強い背徳感を覚えさせた。

「えっと、その、手に持っているのが、チョコは……どこかな?」

由弦は理性を総動員しながら、そう尋ねた。

というのも、愛理沙はバレンタインチョコと思しき物を何も持っていなかったからだ。

この状況と文脈を考えると、愛理沙≒バレンタインチョコということになってしまう。

愛理沙を召し上がれと、そういう意味になる。

「え? あっ……す、すみません。失念してました!」

愛理沙はそう言うと踵を返し、脱衣所へと走り去っていく。

リボンが食い込んだお尻を由弦は思わず目で追った。

「も、持ってきました……えへへ」

愛理沙は照れ笑いをしながら、小さな箱を持ってきた。

特に包装紙やリボンのような飾りのない、普通の箱だ。

愛理沙はそれを床に置いた。

「す、少し待ってくださいね」

愛理沙は縛られた手首で箱の蓋を開けた。

中にはハート形のチョコレートが入っていた。

愛理沙はそれを一つ、手に取った。

「あ、あらためまして……バ、バレンタインチョコです!」

愛理沙はそう言うと、チョコレートを口に咥え込んだ。

そして由弦に向かって顔を突き出す。

「え、えっと……こ、これは一体……」

「……んっ」

困惑する由弦に対し、愛理沙は小さな声を上げながら由弦に目で訴えかけた。

ここまでされて、気付かないほど由弦も馬鹿ではない。

由弦はそっと愛理沙の背中へと手を回し、彼女を抱き寄せた。

「じゃあ、遠慮なく……いただきます」

由弦は愛理沙の唇へ、自分の唇を近づける。

そしてチョコレートを唇で挟み込む。

すると愛理沙は器用にチョコレートを舌で由弦の口の中に入れた。

甘くて、ほんのりと苦いチョコレートの味がした。

「ど、どうですか?」

「美味しい。……もっと食べてもいいかな?」

由弦がそう尋ねると愛理沙は小さく頷いた。

それから床に置いた箱へと視線を向ける。

「じゃあ、準備しますから……」

「いや、大丈夫だ」

由弦はそう言うとチョコレートを指で摘み、愛理沙の口元へと持って行った。

愛理沙はそれを唇で咥える。

「……じゃあ、あらためて。いただきます」

もう一度、由弦は愛理沙の唇と共にチョコレートを食べた。

先ほどと同じ、甘い味が口の中に広がる。

もう一つ食べようと、由弦は箱からチョコレートを取り出した。

そして少し考えてから、愛理沙に尋ねる。

「せっかくだし、愛理沙も食べてくれないか?」

「え?」

由弦は愛理沙の返答も待たず、自分の唇でチョコレートを挟んだ。

そしてゆっくりと愛理沙の唇へと近づける。

最初は驚いた様子で目を見開いた愛理沙だが、すぐにすんなりと唇を開いた。

由弦はそんな愛理沙の唇にチョコレートを押し当てた。

そして舌と一緒にチョコレートを愛理沙の口の中に押し込んだ。

「どう?」

「お、美味しいです。……もっともらってもいいですか?」

「もちろん」

二人は口移しでチョコレートを食べさせ合う。

しかし元々、たくさんの量があったわけではないこともあり、チョコレートはすぐに無くなってしまった。

「これで全部、か」

「いえ、まだ少しだけ……ありますよ?」

「え? ……どこに?」

「……ここです」

愛理沙はそう言うと、由弦に向かって唇を突き出した。

愛理沙の意図を汲んだ由弦は、自分の唇を愛理沙の唇に合わせた。

チョコレートの味がする、新鮮なキスだった。

「……では、あらためて御夕飯にしましょう」

居直ってから愛理沙はそう言った。

そして由弦の方へと、手首を差し出した。

「少し押さえてもらえますか?」

「分かった」

由弦は言われるままに愛理沙の手首のリボンを軽く掴んだ。

すると愛理沙はリボンの輪から自分の手首を引き抜いた。

拘束されているように見えて、実はリボンに手を通していただけのようだった。

「では、準備をしましょう」

「……その恰好で?」

「調理の時はエプロン、付けますよ?」

具材を切るだけですけど。

と、愛理沙はそう付け加えた。

「いや、その恰好で食事をするのはいろいろと……危ないんじゃないかなと」

「危ない、ですか? チョコレートは油みたいに跳ねませんし、火傷をするような温度にはしませんが……」

「いや、そっちじゃなくて……」

由弦は思わず頬を掻いた。

先ほどまでは抱き合っていたので、愛理沙の体を見る機会はなかったが……いろいろと際どいため、直視し辛い。

「リボンが解けたら、大変だなと」

「あぁ、なるほど」

由弦の言葉に愛理沙は苦笑した。

そして胸元のリボンを軽く指で引っ張ってみせた。

由弦は慌てて視線を逸らした。

「な、何をするんだ!」

「大丈夫ですよ、ほら」

由弦は恐る恐る、愛理沙の胸元へと視線を向けた。

愛理沙はリボンを何度も引っ張っていたが、リボンは解ける様子はない。

「これ、こういう服なんですよ。リボンも一本に繋がってるわけじゃなくて、固定されてるんです。水着みたいなものですね」

「そ、そうなんだ……」

由弦は少しだけ騙された気分になった。