軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第5話

「さて、そろそろ昼時だけど……どうする?」

腕時計を見ながら由弦は愛理沙に問いかけた。

由弦の問いに愛理沙は自分のお腹を摩った。

「う、うーん……微妙なところですね。残しちゃうかもしれません」

「だよね」

由弦もあまりお腹は空いていなかった。

まだ朝に食べた物が少し残っているような感じがしている。

レストランでしっかり食事をするような気にはなれなかった。

「時間をズラすか……もしくは、ポップコーンとかを摘まむとかかな?」

由弦は丁度、数十メートル先にある店舗を指さしながらそう言った。

美味しそうな匂いが漂っている。

「それならポップコーンにしましょう。並びながら食べられますし」

二人は立ち上がり、店舗の前まで移動した。

メニュー表を見ながら愛理沙は由弦に問いかけた。

「由弦さんは何味にしますか? 私はキャラメルにしますが……」

「そうだなぁ……」

同じ味を選ぶよりは、それぞれ違う味を選んで、半分ずつ食べたい。

それは愛理沙も同じはずだ。

「……チョコレート味なんてのもあるんですね」

愛理沙はチラっと由弦の顔を見ながらそう言った。

どうやら愛理沙はチョコレート味も気になるらしい。

「甘い物と甘い物はなぁ……しょっぱい物の方がいいかな」

少し口がくどくなりそうだと由弦は思った。

愛理沙も今は食べたがってはいるが、後から辛くなるかもしれない。

「……そうですか。そうですよね。あ、カレー味なんてのもあるんですね」

再び愛理沙は由弦の顔をチラ見してそう言った。

チョコレート味がダメなら、カレー味がいい。

と、言ってはいないものの、表情に出ている。

「じゃあ、カレー味にするよ」

由弦が苦笑しながらそう言うと、愛理沙は嬉しそうに目を輝かせた。

そして店員に対して注文をする。

「チョコレートとカレー、一つずつで」

キャラメル味にするんじゃなかったのか?

と、思わず由弦は愛理沙の顔を見た。

すると愛理沙は恥ずかしそうに頬を掻いた。

「……やっぱり気になって。ダメでしたか?」

「いや、別に構わないよ」

これでカレー味と塩味など、しょっぱい物としょっぱい物の組み合わせを選ばれたら由弦も何か言いたくなるが……

甘い物としょっぱい物の組み合わせのままであれば、文句はなかった。

「俺も気になってた」

キャラメル味は映画館などで食べたことがあるが、チョコレート味は食べたことがない。

由弦も気になっていたことを伝えると、愛理沙は嬉しそうに笑みを浮かべた。

「それは良かったです」

ポップコーンはそれを持ったままアトラクションに乗ることを考慮してか、首から下げられるようなケースに入っていた。

ケースそのものも、遊園地のキャラクターをモチーフにした可愛らしいデザインの物だ。

二人は元居たベンチに座り、ポップコーンを食べ始める。

「カレー味は……思ったよりも辛くはないですね」

「チョコレート味は……まあ、チョコレートって感じだな」

二人は互いのポップコーンをシェアしながら、食べ比べをする。

しょっぱい味と甘い味を交互に楽しみ、少し味がくどくなったらお茶を飲む。

三分の一ほど食べ終えたところで、二人は立ち上がった。

「残りは並びながら食べようか」

「そうですね」

近場にあるアトラクションまで二人は移動する。

しかし目的地のすぐ近くまで来たところで、愛理沙は唐突に足を止めた。

「どうした?」

「……チュロス、食べたくないですか?」

「いや、特には……」

愛理沙の唐突な言葉に由弦は思わず首を傾げた。

そして愛理沙の視線の先を追うと、そこにはチュロスを販売している店舗があった。

どうやら見たら食べたくなってしまったらしい。

「買って来たらいいんじゃないか? 並んでいる時に食べればいいだろう?」

チュロス一本を食べるのに何十分も時間は必要ない。

並んでいる最中に十分食べ切れるため、アトラクションを楽しむ際に邪魔になるとは思えなかった。

「いや、ポップコーンもありますし……食べ切れるかなって」

「なるほど」

ポップコーンは意外とお腹に溜まる。

それほどお腹が空いているわけではない現状、ポップコーンに加えてチュロスまで入り切るか分からない。

そこを不安視しているようだった。

「だからその……由弦さんも、半分、どうですか?」

「いいよ、分かった」

由弦はそれほどチュロスを食べたいわけではないが、しかし食べたくないわけでもない。

あれば、もらえるならば食べるし、半分程度ならばポップコーンと合わせても食べ切れる自信があった。

「味は……」

「君が選んでいいよ」

由弦の言葉に愛理沙は嬉しそうに微笑むと、すぐにチュロスを買ってきた。

ほんのりと甘い香りがする。

「何味にしたんだ?」

「キャラメルです」

ポップコーンではキャラメルを断念した愛理沙だったが、やはり未練があったようだ。

「美味しいです」

目的地であるアトラクションの列に並ぶと、愛理沙は早速、チュロスを齧った。

幸せそうな表情を浮かべる。

「愛理沙……」

「はい」

俺にくれるんじゃなかったか?

と、由弦が言い切る前に愛理沙は由弦の口元にチュロスを差し出した。

由弦は口を開き、チュロスを齧る。

「どうですか?」

「うん、甘い」

「それは良かったです」

愛理沙は満面の笑みを浮かべた。